研究課題/領域番号 |
21K04999
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
|
研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
脇坂 暢 富山県立大学, 工学部, 教授 (40377601)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 電解水素化 / 多環芳香族炭化水素 / マイクロエマルション / 微分電気化学質量分析 / 多電子移動 |
研究開始時の研究の概要 |
反応場の役割と電極表面上における触媒反応過程を解析することで、多環芳香族の1段階多電子移動水素化機構の理解を目的とする。マイクロエマルションの構造とプロトンおよび基質の物質輸送特性は、小角X線散乱、粘度測定およびNMRによる自己拡散係数の測定により解析する。微分電気化学質量分析法を用いて電極表面上における水素付加反応過程を明らかにし、電気化学-光電子分光法による合金触媒の電子状態解析から、反応活性と選択性の支配因子を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的はマイクロエマルションを反応場とした多環芳香族の1段階電解水素化反応の制御および機構解明である。この目的のため、昨年度に引き続きナフタレンを基質とし、様々な組成および支持電解質pHのマイクロエマルションを調製し、Pt-Ruスパッタ合金電極触媒を用いた精密な電気化学測定とガスクロマトグラフによる生成物分析から、反応性制御因子の解明を行った【サブテーマA】。この結果、基質ナフタレンを多く含むマイクロエマルション(D相)では、水素化のファラデー効率は77%@1.5 mAcm^-2と高かったものの、4電子反応によるテトラリンの生成が優勢であった。一方、基質ナフタレンが少ないマイクロエマルションはO/W相を形成し、D相に比べファラデー効率が51%@1.5 mAcm^-2と低くなったものの、10電子反応によるデカリンの生成が優勢であった。生成デカリンは殆どcis体であったため、Langmuir-Hinshelwood機構による反応が推察される。基質濃度によりナフタレンの電極表面上への吸着状態が変化したため、反応選択性が異なったと考えられる。 より詳細な反応機構の解析のため、昨年度に引き続き、微分電気化学質量分析装置の作製を行った【サブテーマC】。本年度は安定した測定ができるよう、電解セルの設計を一新し、真空取り込み口の透過膜の選定を改めて行った。この結果、幅広い温度域において、水溶液中に含まれる芳香族炭化水素の分析が可能となった。しかし、触媒上で微量に生成される水素化物の検出には至らなかった。これは真空取り込み口の透過膜まで溶解度の低い水素化物が到達できないためと考えられる。次年度はさらなる装置の改良を試みる。 研究の成果の一部は学術会議にて発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、サブテーマBとして小角X線散乱によるマイクロエマルションの構造解析を計画していた。しかし本年度は小角X線散乱の利用ができず、サブテーマBの実施ができなかった。サブテーマCの微分電気化学質量分析器による機構解析も、装置自体は完成しているものの、生成する微量の水素化物の検出には至らなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
計画していたサブテーマBは小角X線散乱の利用が困難であるため実施が難しい。また、サブテーマAにおいてマイクロエマルションの構造ではなく、みかけ基質濃度が反応活性および反応選択性に大きく影響を与えることが示唆された。そこで最終年度の次年度では、サブテーマBの実施を行わず、サブテーマCの微分電気化学質量分析器による反応その場解析に注力する。質量分析器の真空取り込み口の改良を行う。これまでテフロン透過膜に網状の試験極を押し付けて生成物の検出を試みた。次年度はテフロン透過膜に直接試験極をスパッタさせ、電極と透過膜を一体化させることで水素化物の検出を試みる。 サブテーマAの電気化学測定において、電位掃引時に二段階で還元電流が流れることが見いだされ、電極電位によって反応機構が異なることが示唆されている。改良した質量分析装置にて、電極電位の関数として生成物の分析を行い、より詳細な反応機構の解析を試みる。 余力があれば、本研究で開発された1段階電解水素化技術を脱塩素水素化へと水平展開することを試みる。
|