研究課題/領域番号 |
21K05000
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
小田切 丈 上智大学, 理工学部, 教授 (80282820)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 多価分子イオン / 光多重電離 / 同時計数 / 放射光 / オージェ過程 |
研究開始時の研究の概要 |
2価以上の電荷をもつ多価分子イオンは、崩壊時に多大なエネルギーを放出するため燃料電池に代わる推進剤として注目されるだけでなく、純粋科学的にもそのダイナミックス解明は物理化学のフロンティアとして興味深い。しかしながら、準安定状態であるため、実験的にその分光的知見を得ることは通常の方法では極めて困難である。本研究では、多価分子イオンが分子の内殻電子の励起・電離から始まる光多重電離により生成することに着目する。新たに「多電子-イオン同時計数法」を開発し、生成イオンと放出されたすべての電子をエネルギー分析して検出することにより、多価分子イオンを探索し、さらにその電子状態の知見を明らかにする。
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研究実績の概要 |
多価分子イオンは多くの電荷移行状態と結合しているためそのエネルギーおよび準安定状態としてのその性質を理論的に予測することは物理化学におけるフロンティアである.本研究では,分子の軟X線吸収からの多段のオージェ遷移により,終状態として多価分子イオンが生成することに着目する.オージェ終状態である多価分子イオンと,そこに至るまでに放出されたすべての電子を同時計数することにより,多価分子イオンの探索,分光およびその生成ダイナミックスの解明を行うことが可能である.本研究では,そのような「多電子-イオン同時計数法」のための装置を開発し,多価分子イオンの分光実験を実現する. 本研究では,従来の多電子同時計数実験装置にイオン検出器システムを組み込み,多電子-イオン同時計数実験装置として立ち上げる.装置は,2021年度に設計を行い,部品製作および組み上げを行った.2021年度に設計した電極系・計数系では,イオンを位置敏感検出器により検出することで,生成するフラグメントイオンの初期運動量まで調べることができる.ただしそのためには,電極系がうまく動作すること,装置のアライメントが良く,入射光,ガスビーム,永久磁石,電極系の中心が一致していること,得られるリストモードデータの処理が適切であることなどが必要である.2022年度はこれらの調整を2021年度に引き続き行った. また,既存の装置調整の目的で,窒素を対象とし,高励起内殻ホール状態からのオージェ崩壊過程に関する実験研究も行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は多電子-イオン同時計数実験のための実験装置を開発し,準安定な多価分子イオンを見出し,その分光を行うことを目的とする.当初計画していた装置開発とは設計が異なるものの,組み上げは終了し予備実験はすでに成功している.「研究実績の概要」で述べたように,現在はより精度の高いデータを得るための調整を継続しているところであり,開発はおおむね計画通りのスケジュールで進んでいるといえる.
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今後の研究の推進方策 |
昨年まで問題であったイオンの収束は電極系の改良により解決した.現状では,ガス導入の方法に改善の余地があると分析している.また,磁石,放射光,電極系の中心の一致を容易にするため,電極系の取付方法を改善した.これらの改善のための部品製作はすでに手配済みである,次回の実験でこれまでの問題は解決される見込みである.
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