研究課題/領域番号 |
21K05005
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32020:機能物性化学関連
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
清水 正毅 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 教授 (10272709)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | りん光 / 蛍光 / 二重発光 / 光誘起りん光 / 励起三重項 / ケイ素 |
研究開始時の研究の概要 |
レアメタルを含む燐光材料や燐光-蛍光二重発光材料が、バイオプローブ、温度や酸素のセンシング材料、残光現象を利用する情報暗号化材料、有機EL素子用発光材料などとして活発に研究されている。しかし、レアメタルの使用には資源の希少性や細胞毒性など課題が多い。本研究では、励起三重項状態を分子内のケイ素置換基によるシグマ共役、分子内ハロゲン結合やルイス酸-塩基相互作用で安定化する分子設計を提案し、この指針に基づいてレアメタルを含まない燐光材料および燐光-蛍光二重発光材料を開発する。
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研究実績の概要 |
市販の2,5-ジブロモパラキシレンを過マンガン酸カリウムで酸化してジブロモテレフタル酸を調製し、これに塩化チオニルを作用させて対応する酸塩化物に導いたのち、メトキシメチルアミン塩酸塩を反応させてワインレブアミドへと変換し、これにPhMgBrを作用させて対応するジベンゾイルジブロモベンゼンを合成した。続いて、このジブロモベンゼンに対してFinkelstein反応を行なって対応するジヨードベンゼンにしたのち、銅触媒を用いてオルトブロモフェノールをカップリングさせた。得たビス(オルトブロモフェニル)体を再度Finkelstein反応を用いてヨード体に変換し、最後にパラジウム触媒を用いてジアリールシリル化を行い、対応する2,5-ビス(2-シリルフェノキシ)-1,4-ジベンゾイルベンゼンを合成した。得たジベンゾイルベンゼンは、結晶状態において室温真空下、緑色(発光極大波長492-514ナノメートル)のりん光を良好な量子収率(Φ=0.36-0.52)、ミリ秒オーダーの寿命(45-55 ms)で発することを明らかにした。また、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)薄膜に分散した状態においても、このジベンゾイルベンゼンは室温真空下、同様に緑色りん光を発することを見出した。なお、量子収率は0.02-0.03、発光寿命は33-64ミリ秒であり、結晶状態と比較して量子収率が大幅に低下した。PMMAに分散したことで分子振動が結晶状態よりも大きくなり、励起三重項状態が熱失活したためと考えている。シリル基が臭素やヨウ素に代わった類縁体は室温でりん光を示さなかったので、フェノキシ基の2位に置換するシリル基の存在が室温りん光の発現に必須であることがわかる。エーテル酸素上に生成するオキシラジカルが近接するシリル基の炭素-ケイ素σ結合との超共役により安定化を受けているためと考察している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ベンゾイル基のオルト位のホウ素化が、当初計画していた手法では円滑に進行しないことがわかったため、他の合成ルートを立案してその改善に臨んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況に記したように、オルト位へのホウ素の導入を当初のルートとは別の合成法(参考文献:Org. Lett. 2023, 25, 5875-5879)で検討することにより、標的分子の合成を果たし、その物性解明を進めていく予定である。
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