研究課題/領域番号 |
21K05018
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤野 智子 東京大学, 物性研究所, 助教 (70463768)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | オリゴマー / 水素結合 / 電荷移動塩 / バンドフィリング変調 / クーロン反発 / 有機伝導体 / 鎖伸長効果 / バンド構造 / チオフェン |
研究開始時の研究の概要 |
有機エレクトロニクスデバイスの主流となっているポリマー材料は,混合物性ゆえに構造が不明瞭であり,良導化・高機能化の指針が確立されていない.そこでポリマーの基礎骨格を維持した単分子性オリゴマー材料が,詳細な構造情報が入手可能で,かつ単分子性ゆえにπ積層境界面の平滑化による高伝導化を可能としうることから注目されている.応募者らは最近,エチレンジオキシチオフェン(EDOT)2量体を開発し密接なπ積層構造を実現したものの,π積層間の相互作用が得られず伝導性は乏しかった.本研究では,EDOTオリゴマー末端にπ積層間相互作用を誘発する水素結合性基を導入し,伝導次元性拡張による良導性材料の実現を目指す.
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研究実績の概要 |
本研究では、オリゴマー型有機伝導体による良導性材料の開発を目的とし、特に水素結合形成による伝導次元性拡張法の開発を目指すものである。有機エレクトロニクスデバイスの主流となっているポリマー材料は、その混合物性ゆえに構造が不明瞭であり、良導化・高機能化のための指針が確立されていない。そこでポリマーの基礎骨格を維持した単分子性オリゴマー材料が注目されている。中分子領域のオリゴマーは結晶構造解析により詳細な構造情報を入手可能であり、かつ単分子性ゆえにπ積層境界面の平滑化・膜均質化による高伝導化を可能としうるが、その難溶性・中間構造の不安定性などの合成的制約により未だ良導性オリゴマーの実現例はない。これまでに、エチレンジオキシチオフェン(EDOT)2量体の電荷移動塩の単結晶を合成し、その1次元積層カラム内で、金属・超伝導体に匹敵する強い分子間相互作用が見つかった。しかし、その伝導性は0.003 S/cm以下と高くなく分子間相互作用を凌駕する強いクーロン反発Uの存在するモット絶縁体状態の形成が示唆されていた。昨年度は、Uを減らす戦略として共役長を拡張した3量体の電荷移動塩を合成し、実際に伝導度が20倍向上することを見出し、論文報告した。研究二年度となる本年度は、Uを減らすもう一つの戦略として、バンドフィリングの変調効果を検討した。ハーフフィルドの電子状態から逸脱させることで、伝導度の向上を狙ったものである。これにより、室温伝導度を0.3 S cm-1と100倍向上させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
分子性導体におけるバンドフィリング変調は、ドナーに対するアニオンとして、異種の価数をもつアニオンを混在させる手法の報告例がある。しかしこうした手法では、構造的乱れに基づいたランダムな構造的乱れが生じやすく実現例はごく限られている。今回、こうした乱れを抑制する手法として、酸解離平衡を示すHSO4アニオンに注目し、これを対アニオンとした電荷移動塩単結晶において、水素結合性の無限鎖の形成を見出した。分子積層方向に平行な偏光照射による単結晶の反射スペクトル解析により、バンドフィフィングがハーフフィルドから明らかに逸脱していることがわかった。無限鎖のなかで、プロトン欠損もしくは過剰が生じてドナーの価数が+1からずれたものと考えられる。これにより、伝導度が格段に上昇し、0.3 S cm-1のオリゴマー型電荷移動塩単結晶における最高の室温伝導度を記録した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、共役系拡張と、バンドフィリング変調の二つの手法によりUを低減し、伝導度を向上させてきた。最終年度では、共役系拡張とバンドフィリング変調の両者の効果を併せることで、格段の伝導度の向上を目指す。こうしたドナーの設計による体系的なUの変化による伝導度の検討例はなく、新しい分子性導体の研究領域の萌芽が見込まれる。
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