研究課題/領域番号 |
21K05020
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
高橋 雅樹 静岡大学, 工学部, 教授 (30313935)
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研究分担者 |
藤本 圭佑 静岡大学, 工学部, 助教 (10824542)
平本 昌宏 分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 教授 (20208854)
伊澤 誠一郎 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (60779809)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ペリレンジイミド / フレキシブル構造 / アクセプタ材料 / 湾曲構造 / n型半導体 / 有機薄膜太陽電池 / 渡環クロスカップリング / 酸化的渡環反応 / ナノグラフェンリボン / 有機太陽電池 / 共役連結 |
研究開始時の研究の概要 |
グラフェンナノリボン(GNR)は、従来の有機半導体を凌駕する優れたキャリア輸送性から、有機太陽電池デバイスの飛躍的性能向上に資するn型半導体としての実用性を期待される。しかしながら既存のGNRは、構造の剛直性に由来する低い溶解性により薄膜状態におけるモルフォロジー制御が難しく、その有用性が十分に実証されていない。そこで、本研究で開発する「フレキシブルGNR」が有機太陽電池において高い発電性能をもたらす優れたn型半導特性を実現可能であることを実証することにより、構造柔軟性を備えたπ共役系の分子設計が材料開発におけるイノベーションを促進するプラットフォームを提供し得ることを明示する。
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研究実績の概要 |
初年度の研究成果を踏まえ、当該年度は、「渡環クロスカップリング」による「α型二量体」の合成を進めるとともに、「β型二量体」構築法の確立に向け、「酸化的渡環反応」を活用した「β型単量体」の合成検討を行った。前年度より検討を継続していた「α型二量体」の合成に関しては、反応条件の検討により作業を完了することができた。当該分子については、X線結晶構造解析および温度可変核磁気共鳴分析での評価を行い、それらの結果、「α型二量体」が「α型単量体」と類似の構造特性を示すことが明らかとなった。PTB7-Thドナーを用いた有機薄膜太陽電池デバイスの性能評価を行った結果、「α型二量体」は「α型単量体」と同等程度の発電性能を実現したものの、二量体構造としたことによる機能面での利得は認められなかった。また、「酸化的渡環反応」による「β型単量体」の合成については計画通り作業を完了できた。「β型単量体」のX線結晶構造解析および温度可変核磁気共鳴分析によると、当該化合物は「α型単量体」と比較して分子構造の柔軟性が乏しく、むしろ剛直性の高さから強い凝集性を有することが示唆された。この性質により、PTB7-Thドナーとの相溶性が低下し、有機薄膜太陽電池デバイスの性能評価において、低い発電性能を与えることが示された。この結果から、「β型単量体」から「β型二量体」への構造拡張はさらなる凝集性の増強をもたらし、薄膜材料として利用するには不向きであることが予見されたことから、当初計画した「β型二量体」への構造拡張については断念することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度における研究計画では、「α型二量体」への合成法の確立と「酸化的渡環反応」を適用した「β型二量体」の構築法の確立を主たる目標とした。「α型二量体」の合成検討については、想定通りに目標を達成したものの、「β型二量体」の構築については、「β型単量体」における凝集性の強さが示され、構造拡張への意義を見出すことができないことから、その後の開発を断念した。「α型二量体」のn型半導体性能に関する評価からは、「α型単量体」と同等程度以上の発電性能は期待できないことから、2つのペリレン核を繋ぐ「動的部位」は発電性能の低下をもたらす構造因子であると判断した。このため、「動的部位」をペリレン核間に多数配置する「フレキシブルGNR」の基本設計は、n型半導体の性能向上を期待するうえで不適切と推測され、「動的部位」に代わる平面性の高い構造部位の利用を検討する必要があるとの理解に至った。このように、当初の想定とは異なる研究的知見が得られたものの、化合物合成と物性調査においてはほぼ計画どおり作業を遂行できたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
「α型単量体」から「α型二量体」への移行に伴い、構造拡張に伴う機能的な相乗効果がn型半導体性能において認められなかった。このため、今後検討を進める「フレキシブルGNR」の開発では、「動的部位」にてペリレン核を連結する基本設計を修正する必要があると判断した。そこで、最終年度では、平面的かつ剛直な「π拡張構造」にてペリレン核を連結した「α型二量体」を新たに開発し、「動的部位」にて連結した化合物との機能性の差異について調査する。これにより、分子構造内に「動的部位」をどのように導入することが適切であるかを明らかにし、「フレキシブルGNR」のn型半導体性能向上に向けた分子設計指針を確立する。
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