研究課題/領域番号 |
21K05021
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
戸部 義人 大阪大学, 産業科学研究所, 招へい教授 (60127264)
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研究分担者 |
家 裕隆 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (80362622)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 反芳香族性 / 有機電子材料 / s-インダセン / 電子状態 / 分子構造 / 反芳香族化合物 / 芳香族性 / 有機半導体 / 光物性 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、光電子機能の観点から多環芳香族化合物に関する研究が精力的に行われている。一方で、反芳香族化合物は一般に不安定であるため機能材料への応用への試みは殆どなされていない。しかし、反芳香族化合物は小さなバンドギャップを有すること、高励起状態からの発光が起こりうること、さらに一重項分裂の可能性が予想されていることから、未開拓の光電子機能材料として大きな可能性をもっている。本研究では、基本的な反芳香族骨格であるにも関わらず機能面からの研究例が皆無であったs-インダセンをとりあげ、新たな合成法に基づいて多くの安定な誘導体を合成し、物性を解明することにより、反芳香族化合物の機能材料としての端緒を開く。
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研究実績の概要 |
本課題では新たな合成法に基づいて電子供与性あるいは電子求引性置換基をもつヘキサアリール置換s-インダセン誘導体を合成し、分子構造や電子状態を調査し、機能性物質としての利用の可能性を調べることを目的としている。 2022年度は、前年度に引き続き特定の位置に電子供与性あるいは電子求引性置換基をもつヘキサアリール置換誘導体の合成を行った。すなわち、電子求引性の4-(トリフルオロメチル)フェニル基あるいは電子供与性の4-メトキシフェニル基が2つ置換し、その他の位置にはフェニル基あるいはキシリル基が置換したC2h-、C2v-、D2-対称形のヘキサアリール-s-インダセン誘導体を合成した。量子化学計算に基づく電子状態予測と分光学的および電気化学的計測を行い、置換基の電子的性質と置換パターンによる分子軌道のエネルギー準位の変化のみならず、s-インダセンに特有の電子配置に起因する分子軌道の摂動が起こることの確証を得た。さらに、量子化学計算から予想された置換基による分子構造のゆがみを検証すべく、前年度分とあわせて計4種類の化合物に関してX線構造解析を行い、理論の検証を行った。また、反芳香族性に関する指標が最高被占軌道とその下位の被占軌道のエネルギー準位の差に依存することを立証した。有機半導体としての機能に関する予備的研究として、ヘキサキシリル誘導体のスピンコート薄膜の電界効果トランジスター特性を測定したところ、0.01 cm2 v-1 s-1という比較的良好なホール移動度を示すことがわかった。これらの結果を論文発表した。 置換基によるより強い摂動を受けたs-インダセン誘導体の合成に着手した。すなわち、4つの4-(トリフルオロメチル)フェニル基あるいは4-メトキシフェニル基が置換し著しく電子豊富あるいは電子不足な誘導体や、それぞれがドナー・アクセプター型に置換した誘導体の合成と構造確認を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画には含まれていなかったが、量子化学計算に基づきs-インダセンに特有の電子配置に起因する分子軌道の摂動とそれに基づく諸物性を見出し、その原因を考察した。合成面では4つの電子供与基あるいは電子求引基が置換したs-インダセン誘導体の合成を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
置換パターンの異なるヘキサアリール-s-インダセンを合成したので、その置換基効果による構造、電子状態、反芳香族性などこれまでほとんど研究例のない現象に関して理論と実験に基づく検証を行う。 溶解度と有機トランジスター用半導体への応用を考慮して長鎖アルキル基の導入を行う。これらの結果をまとめて2つめの論文に発表する。
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