研究課題/領域番号 |
21K05036
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
石井 昭彦 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90193242)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 光物性 / ジベンゾバレレン / ヘキサトリエン / ヒドロゲナーゼミミック / オレフィン重合触媒 |
研究開始時の研究の概要 |
ジベンゾバレレン(DBB)とヘキサトリエン(HT)が2つの典型元素リンカー(E2)により融合したDBB(E2)HTの合成と光物性についての基礎的研究を行う。さらに、ヘキサトリエン部の2位および5位に硫黄を導入した誘導体、DBB(S2)HT(S)2を配位子として用いて、[Fe-Fe]ヒドロゲナーゼミミックや4族金属錯体を合成し、DBB(S2)HT(S2)の多機能性を探求する。
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研究実績の概要 |
ジベンゾバレレン(DBB)とヘキサトリエン(HT)が一つの二重結合を共有し、さらに典型元素EによりDBBの二つの橋頭位とHTの両末端が結ばれている化合物(DBB(E2)HT)の合成、光物性、及び反応性について、E依存性やHTの両末端1,6-位アリール基の置換基効果を研究した。今年度は、Eが炭素、酸素、硫黄、セレン、テルルの化合物について検討を進めた。 (1)橋頭位ヒドロキシメチル基の分子内フェニルエチニル基への環化反応を検討し、反応条件により、6-endo-dig環化と5-exo-dig環化が選択的に起こることを明らかにした。 (2)橋頭位カルバニオンと酸素分子との反応の反応条件を最適化した。HT両末端フェニル基のパラ位に種々の置換基を有するDBB(O2)HT誘導体を合成し光物性を調べた。 (3)すでに合成しているDBB(S2)HTはHT部の2,4位がジスルフィド架橋されている(DBB(S2)HT(S2))。DBB(S2)HT(S2)とFe2(CO)9との反応で得られる鉄二核カルボニル錯体 DBB(S2)HT[S2Fe2(CO)6]の酸化反応を検討したところ、橋頭位硫黄が酸化された。この化合物は[Fe-Fe]ヒドロゲナーゼミミックであり、今後、触媒的水素発生 について検討する。一方、DBB(S2)HT(S2)と銅粉をテトラリン中で加熱することにより、脱硫水素化がおこり、DBB(S2)HTが得られた。 (4)橋頭位にセレンあるいはテルルを導入した場合は、HT部の2,4位が一つのセレンあるいはテルル原子で架橋されたDBB(Se2)HT(Se)及びDBB(Te2)HT(Te)が得られた。DBB(Se2)HT(Se)からは銅粉/テトラリン処理によりDBB(Se2)HTが得られた。テルル誘導体の場合は反応温度を制御することで(DBB(Te2)HTを得ることができた。これらの光物性を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)橋頭位ヒドロキシメチル基の分子内フェニルエチニル基への環化反応では、反応条件(ルイス酸触媒あるいは塩基性条件)により、それぞれ6-endo-dig環化と5-exo-dig環化が選択的に起こることを明らかにした。 (2)橋頭位にヒドロキシ基を導入する反応として、橋頭位カルバニオンと酸素分子との反応を検討し、反応条件を最適化することができた。これにより安定した収率で酸素誘導体を合成できるようになった。HT両末端フェニル基のパラ位に種々の置換基を有するDBB(O2)HT誘導体(非対称置換体を含む4種)の合成に成功し、光物性を調査した。 (3)ヒドロゲナーゼミミックである鉄二核カルボニル錯体 DBB(S2)HT[S2Fe2(CO)6]の酸化反応を検討したところ、橋頭位硫黄が酸化されることを見出した。光安定が向上しており、今後、触媒的水素発生 について検討する。一方で、DBB(S2)HT(S2)と銅粉をテトラリン中で加熱することにより、脱硫水素化がおこり、DBB(S2)HTを得ることに成功した。 (4)目的としていた両橋頭位がセレンのDBB(Se2)HT及び同テルルのDBB(Te2)HTの合成に成功した。 以上により、橋頭位が酸素、硫黄、セレン、テルルの四化合物DBB(Ch2)HTのすべての合成に成功し、系統的に光物性を調査する準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
(1)カルコゲン誘導体DBB(Ch2)HT(Ch = O, S, Se, Te)の光物性を種々の条件下(溶液中、固体中、温度依存性など)で調査し、計算化学を用いて理論的考察を行う。 (2)両末端フェニル基が非対称、特に、ドナー-アクセプター型になっているDBB(O2)HT誘導体を合成し、光物性を調査する。近赤外発光化合物の合成を目指す。 (3)鉄二核カルボニル錯体 DBB(S2)HT[S2Fe2(CO)6]の酸化物を用いる触媒的水素発生について検討する。また、DBB(S2)HT(S2)を出発物として用いて、クラウンチオエーテルの合成を検討する。金属イオンとの錯形成によりどのように光物性が変化するのかを調査し、金属イオンセンサーとしての可能性を探る。
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