研究課題/領域番号 |
21K05037
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 日本大学 (2022-2023) 信州大学 (2021) |
研究代表者 |
庄子 卓 日本大学, 工学部, 准教授 (60581014)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | アズレン / 縮環アズレン / 多環式芳香族化合物 / 発光性色素 / 有機電子材料 / エレクトロクロミズム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、これまで類例が限られていた多環式芳香環をアズレン誘導体に縮環した新たな多環式芳香族化合物を創製し、その分光学的・電気化学的性質を解明することで、『電気化学的な酸化還元に対して高い耐久性を有し、且つ大きな色調変化を示すエレクトロクロミズム分子の構築』と『π共役系の拡張に基づく近赤外領域での吸収・発光を示す機能性材料の開発』を行い、有機エレクトロニクス材料や機能性色素への応用展開を成し遂げる。
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研究実績の概要 |
医薬品化学において有望な化合物であるキノロンおよびキノリン環にアズレンが縮環した化合物ならびにフルオロアルキル基を有するピリミドンおよびピリミジン縮環アズレン類の合成法の開発を行った。2-クロロアズレン類とアリールアミン類との芳香族求核置換反応によって2-アリールアミノアズレン誘導体を合成し、これらをブレンステッド酸によって処理すると分子内環化反応が進行し、アズレノ[2,1-b]キノロン類が高収率で得られた(Molecules 2023, 28, 5785)。また、アズレン縮環ピリミドン類は1-シアノ-2-フルオロアルキルアセトアミドアズレン類をブレンステッド酸によって処理することで得ることができた(Adv. Synth. Catal. 2023, 365, 3648)。さらに、アズレン縮環キノロン類とピリミドン類は、塩化ホスホリルとのハロゲン化芳香族化反応によって高収率でアズレン縮環キノリンおよびピリミジン類に変換することができた。これらの誘導体は芳香族求核置換反応により更なる官能基化が可能であることも明らかになった。 ブレンステッド酸をもちいた2-アズレニルアルキン類の分子内環化による2-アリールアズレノ[1,2-c]ピラン-1-オン類の合成法の開発も行った(J. Org. Chem. 2023, 88, 15739)。2-アリールアズレノ[1,2-c]ピラン-1-オン類の光学的特性をUV/visおよび蛍光分光法を用いて評価した結果、酸性条件下でα-ピロン環のカルボニル基がプロトン化されてピリリウムイオン部分構造を形成し、顕著なスペクトル変化と蛍光を示すことが明らかとなった。特に、α-ピロン環上のアリール基上の置換基が電子供与性の場合、吸収波長および発光波長が長波長シフトを示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、『アズレンが縮環した多環式芳香族化合物、特に複素環が縮環した誘導体の合成法の開発と光学特性の解明』を実施した。2-アリールアミノアズレン誘導体をポリリン酸によって処理すると、アズレノ[2,1-b]キノロン類が高収率で得られた(Molecules 2023, 28, 5785)。また、アズレン縮環ピリミドン類は1-シアノ-2-フルオロアルキルアセトアミドアズレン類をポリリン酸またはメタンスルホン酸中で加熱することで高収率で得ることができた(Adv. Synth. Catal. 2023, 365, 3648)。さらに、アズレン縮環キノロン類とピリミドン類は、塩化ホスホリル中で加熱するとアズレン縮環キノリンおよびピリミジン類に変換され、これらは芳香族求核置換反応やクロスカップリング反応により更なる官能基化が可能であった。アズレン縮環ピリミドン類は溶液中で弱い蛍光を示したが、この溶液に水を添加すると蛍光波長と蛍光強度が変化したことから、凝集誘起発光の寄与が示唆された。 2-クロロアズレン類とリールアセチレン類との薗頭-萩原反応により調製した2-アズレニルアルキン類をメタンスルホン酸中で反応させることで、2-アリールアズレノ[1,2-c]ピラン-1-オン類を得た。2-アリールアズレノ[1,2-c]ピラン-1-オン誘導体は酸性溶液中で顕著に色調が変化するハロクロミズム挙動を示し、中性溶液中と比較して顕著なスペクトルの変化を示した。また、α-ピロン環上のアリール基上の置換基が発光波長に影響を及ぼすことが明らかとなり、電子供与基の場合は発光波長が長波長シフト、一方で電子求引基の場合は短波長シフトを示すことが明らかとなった (J. Org. Chem. 2023, 88, 15739)。これらの結果は今後、縮環アズレン類の分子設計ならびに合成を進める上で、重要な知見である。以上の理由から、本研究課題は『おおむね順調に進展している』と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は『アズレン縮環型多環式芳香族化合物の合成法の開発と物性解明』を重点的に継続し、本年度に合成法を確立したアズレン縮環型多環式芳香族化合物に対して鈴木-宮浦カップリングや薗頭-萩原反応等のクロスカップリング反応により種々のアリール基やアリールエチニル基を導入し、高度に共役系が拡張した多環式芳香族化合物の合成を進める計画である。さらに各種スペクトル測定、量子化学計算さらに電気化学測定による物性解明も継続して研究を進める計画である。また令和6年度は、本研究課題の最終年度であるため、論文誌への発表等を通して研究の総括を行う計画である。
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