研究課題/領域番号 |
21K05041
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
谷 文都 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (80281195)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | アズレン / ヘリセン / ラジカル / 不斉 / キラリティ / 電子スピン / フタロシアニン / 酸化還元 / 酸化 / スピン |
研究開始時の研究の概要 |
光学活性ヘリセンは、らせん不斉と拡張パイ電子系に由来する様々な特長を持つ機能性化合物として盛んに研究されている。とりわけ、ヘリセンのラジカル種は不斉と不対電子スピン(常磁性)の両方を有するという特異性から、非常に興味深い化合物である。既に1,1‘―ビアズレン骨格からなるヘリセンが安定なカチオンラジカルを与えることを報告しているが、本研究では、この知見を活用して、1,1‘―ビアズレン骨格に基づく新しいヘリセンを種々合成し、安定ラジカル種を得ることを目的とする。また、合成されたヘリセンのラジカルの物性(光物性、磁性、電子物性)を詳細に解析する。
|
研究実績の概要 |
ナフタレンの構造異性体であるアズレンは分極したπ電子系に由来する特徴的な性質を持ち、特に1,1'-ビアズレンは比較的安定なカチオンラジカルを生成する という性質が知られている。以前に,我々は、1,1’-ビアズレン誘導体のカチオンラジカルが共鳴構造の寄与により比較的安定である点に着目し、1,1’-ビアズ レンとイソベンゾチオフェンから構成されるヘリセンのカチオンラジカルを室温、空気下で安定な固体として単離することに成功した。 本年度の研究では、1,1’-ビアズレンで構成されるヘリセンと縮環させる分子としてフタロシアニンを選択し、そのニッケル錯体を合成した。キラルHPCLにより、純粋な光学異性体が得られた。電気化学測定では、可逆な4段階の酸化波、可逆な2段階の還元波が確認され、7段階の酸化状態を取れることが分かった。さらに、酸化剤によって酸化したのちに測定したESRスペクトルにより、カチオンラジカルの生成を確認した。酸化剤の量によって段階的にカチオン、ジカチオン、トリカチオンが生成していることも確認された。 また、嵩高いメシチル基でアルファ位が立体的に保護されたピロール誘導体と1,1’-ビアズレンで構成されるヘリセンが縮環した分子も合成した。この新規化合物は我々が合成した一連のヘリセン化合物の中で最も酸化電位が低いことがわかった。合成の最終段階の酸化反応で、中性ヘリセン化合物と対応するカチオンラジカルが共に生成するが、ミクロチューブ内で迅速かつ選択的に酸化剤を作用させること、および速やかにカチオンラジカルを還元することによって、目的の中性ヘリセン化合物を高収率(約90%)で得ることに成功した。また、このヘリセン化合物の光学分割にも成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1,1’-ビアズレン骨格に基づいたヘリセン化合物を複数種類合成することに成功しており、こららの化合物が優れた酸化還元特性を示し、比較的安定なカチオンラジカルやアニオンラジカルを与えることも確認できている。また、それぞれのエナンチオマーへの光学分割が可能であることも確認できた。
|
今後の研究の推進方策 |
新しい1,1’-ビアズレン骨格に基づいたヘリセン化合物から得られるカチオンラジカルや中性ラジカルの単離、構造解析、光物性、磁気物性について、検討を進める。
|