研究課題/領域番号 |
21K05043
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
長谷川 真士 北里大学, 理学部, 講師 (20438120)
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研究分担者 |
伊與田 正彦 東京都立大学, 理学研究科, 客員教授 (50115995)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 円偏光発光 / キラル分子 / ヘリセン / ビナフチル / CDスペクトル / π共役系化合物 / キラル化合物 / ねじれ化合物 / 円二色性スペクトル / 円偏光発光スペクトル / 蛍光材料 / らせん |
研究開始時の研究の概要 |
キラルな分子から生じる円偏光発光(Circularly Polarized Luminescence: CPL)は、偏光を発する光源として三次元表示ディスプレイや情報通信技術に期待されている。しかしながら、どのような分子設計で、どのように発色団を配置すれば高輝度な円偏光源が得られるのか?については不明瞭なままである。本研究では、近接したパイ共役系発色団を対称的に配置し、非局在化した励起状態を導く分子設計により、傑出した円偏光度(gCPL)を持つ材料を創出することを目指す。
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研究実績の概要 |
軸不斉ユニットを持つπ共役系化合物は共役系の特徴に応じたキラル光学特性を示す。本研究では軸不斉によって分子内にねじれを誘起した環状π共役系キラル分子を新たに合成し、その構造とキラル光学特性(特に円偏光発光(CPL)特性)の相関について調査することを目的としている。CPLは発光に際し、左右円偏光の強度に差が出る現象で、偏光やスピンが関与する光学材料につながるが、その詳細については未解明なままである。 本年度は、軸不斉である架橋型1,1'-ビナフチルによって拡張された環状オリゴフェニレン分子について合成し調査を行った。前年度までの研究からビナフチルを架橋することで、環状化合物の剛直性が増す。 架橋型1,1'-ビナフチルおよびビフェニルから構成されるユニットで作る環状二量体、環状三量体および環状四量体を合成した。これらの環状化合物は単結晶X線結晶構造解析や分子軌道計算によりその構造を明らかにした。いずれもフェニレン部分が大きくねじれていた。合成した化合物はオリゴフェニレンユニットが剛直な架橋型1,1'-ビナフチル構造に組み込まれており、いずれも高い量子収率(0.60-0.79)を示した。また、円二色性スペクトルでは強いコットン効果が観測された。CPLスペクトルを測定すると、蛍光スペクトルに一致した波長領域でコットン効果が観測され、比較的高いg値(どちらも0.0039-0.0052)(g値:円偏光発光における非対称性因子)を示した。それぞれを掛け合わせたCPL輝度、Bcpl は二量体で131、三量体で107、四量体で161と高い値を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
架橋ビナフチルとπ拡張の組み合わせにより、g値と量子収率の双方に優れた材料を開発することができた。g値に関しては、理論計算よりも小さい値であったため、その理由と対策について検討する余地があり、次年度以降につなげたい。
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今後の研究の推進方策 |
合成したキラル発光分子は、通常の有機化合物では到達が難しい高いCPL輝度(BCPL)を持つことがわかったが、g値に関しては改善の余地がある。励起状態の対称性を考慮するとともに、振動構造が与える影響に関しても調査する予定である。
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