研究課題/領域番号 |
21K05056
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
浦 康之 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (40335196)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | パラジウム / ルテニウム / 第二級ホスフィンオキシド / ホスホリル配位子 / 亜ホスフィン酸配位子 / 酸素 / 酸化 / 水素化 / 遷移金属 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,ホスホリル配位子(P=O二重結合をもつアニオン性のリン配位子)が後周期遷移金属に配位した錯体を新規に設計・合成する。その錯体を触媒として,炭化水素類の分子状酸素による選択的な酸素化反応,および,末端アルケンへの酸素求核剤および窒素求核剤の逆マルコフニコフ型付加反応などの高難度環境調和型反応の開発を目指す。この錯体では,遷移金属原子の近傍に位置するホスホリル配位子の酸素原子がプロトン授受部位として働き,遷移金属原子との協同作用によって,特徴的な反応が進行するユニークな反応場として機能することが期待される。
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研究実績の概要 |
ビピリジン部位と第二級ホスフィンオキシド(SPO)部位を含む新規NNP型三座配位子を用いて合成した単核NNP-ベンジルパラジウム錯体のベンジル配位子が,常温,周辺光照射の条件下で常圧の酸素と速やか(20分以内)に反応し,炭素-パラジウム結合間に酸素分子が挿入したベンジルペルオキソパラジウム錯体が高収率で生成することを見出した。本反応は暗所下でも徐々に進行するが,周辺光によって顕著に促進された。種々の反応条件下での検討の結果,本反応は光励起によって炭素-パラジウム結合が均等開裂しベンジルラジカルが生成して進行するのではなく,光励起されたベンジル錯体が酸素と反応して進行することが示唆された。穏和な条件下での酸素による炭化水素配位子の酸素官能基化は,遷移金属触媒を用いた環境調和型酸化反応の開発のための土台となることから重要である。この反応性を応用して,今後,NNP-パラジウム錯体を触媒として用い,酸素を利用した炭化水素原料への酸素官能基導入反応の開発を行いたい。 NNP型三座配位子から合成したルテニウム錯体を触媒として用いたベンズアルデヒドの水素化反応では,DMA溶媒中,水素30気圧,150 ℃,6時間の条件下でTON(触媒回転数)35,000が得られた。本反応はルテニウムと配位子の亜ホスフィン酸部位が協同的に機能して進行したために高活性となったと考えられる。また,ピリジン部位とSPO部位を含むNPN型三座配位子から合成したパラジウム錯体を触媒として用いたベンジルアルコールのベンズアルデヒドへの酸素酸化反応では,NMP溶媒中,酸素1気圧,100 ℃,6時間の条件下でTON 128が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NNPまたはNPN型三座配位子から合成した新規遷移金属錯体については,パラジウム錯体,白金錯体,ルテニウム錯体など,現時点で合計20種類以上が得られている。 単核NNP-ベンジルパラジウム錯体と酸素との反応では,炭素-パラジウム結合への酸素分子の挿入が速やかに進行することを見出した。この反応性を利用した新規触媒反応の開発を現在進めており,引き続き反応条件の検討を行う。触媒反応としては,NNP-ルテニウム錯体触媒を用いたアルデヒド類の水素化,および,NPN-パラジウム錯体触媒を用いたベンジルアルコール類の酸素酸化が良好に進行することを見出した。特に前者では高いTONが得られており,ルテニウムと配位子の亜ホスフィン酸部位との協同効果によるものと考えられる。 これらの進捗状況を総合すると,本研究は現段階ではおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
単核NNP-ベンジルパラジウム錯体と酸素との反応については,不安定なベンジルペルオキソパラジウム錯体の単離・精製,およびX線結晶構造解析による構造決定を検討する。また,錯体の反応性に関して得られた知見を応用して,NNP-パラジウム錯体を触媒とする,酸素雰囲気下でのアルケンの二官能基化反応(求核剤による官能基化および酸素による酸素官能基化)など,酸素を用いた炭化水素部位の酸素官能基化反応の開発を進める。アルケンの二官能基化反応では,分子内に求核部位をもつアルケンの場合に進行しやすいと考えられるため,それらの基質を中心に触媒反応を検討する。 NNP-ルテニウム錯体を用いたアルデヒド類の触媒的水素化反応については高触媒活性が得られていることから,今後は基質適用範囲を調べて研究成果をまとめる。NPN-パラジウム錯体を用いたベンジルアルコールのベンズアルデヒドへの触媒的酸素酸化反応では,さらに高い触媒活性が得られるように反応条件の最適化を引き続き行い,その後に基質適用範囲について検討する。 また,これまでに合成したNNPおよびNPN型三座配位子を用いて,新規鉄錯体の合成を行う。得られた錯体およびその反応性に関する知見を元に,酸素を用いた酸化反応を中心に鉄触媒反応の開発を検討する。
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