研究課題/領域番号 |
21K05070
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
星本 陽一 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (30710074)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
|
キーワード | カルベン / 二酸化炭素 / ホスフィンイミド / 複核錯体 / 異種二核錯体 / ルイス酸 / ニッケル / N-ヘテロ環状カルベン / 多核錯体 / 結合形成 / 構造変化 |
研究開始時の研究の概要 |
PoxImにおけるカルベンとホスフィンオキシドの反応性の差を活かし、多様なPoxIm-M1/M2錯体の選択的合成法を開発する。錯体の設計指針として、カルベン炭素周辺の反応場がtBu基の立体障害のため著しく制限されている点にも着目する。以上を踏まえて、ソフトかつ低配位構造をとることが可能な M1 (M1 = Cu, Ag, Au) をカルベン部位との錯形成に、親酸素性が高い典型金属 M2 (M2 = B, Al, Ga, In) をホスフィノイル部位との錯形成に用いる。合成した錯体は分光学測定、単結晶X線構造解析、そして理論化学計算を駆使して、構造決定および反応性評価を進める。
|
研究実績の概要 |
本研究は、多官能化カルベン配位子のダイナミックな構造変化を活かし、二つの金属中心の離隔および接近を制御可能な異種二核金属カルベン錯体の創成に取り組んできた。これにより、本研究は、剛直な構造の多官能化カルベンを用いて、二つの金属を離隔させるのみに留まってきた従来研究と、一線を画する錯体創成手法の確立を目指す。最終的には、本研究により、異種二核金属カルベン錯体の革新的な設計戦略および利用法を実証し、有機合成化学・有機金属化学の新展開を開拓することを目的としている。 令和4年度においては、令和3年度に引き続きNi-PoxIm錯体(PoxIm = N-phosphine oxide-substituted imidazolylidenes)とルイス酸 ER3 (E = B, Al)の反応を検討した。特にE= Alの場合に注力し、得られた錯体の構造解析と反応性調査を行ったところ、PoxImにおけるカルベン上にNi、ホスフィノイル基上にAlが結合した異種Ni/Al錯体から、酸化還元課程を経てNi(II)ジアリール錯体が形成することを見出した。しかし、その生成機構は未解明な点が多く、引き続き反応機構研究が必要である。 また、ホスフィンオキシドの代わりにホスフィンイミドを有するPimImから派生させたN-ボラン置換型環状ホスフィンイミド(BCPI)を開発した。BCPIは二酸化炭素と反応し、λ5-オキセタン骨格を含む化学種を与えることを単結晶X線構造解析およびNMRから解明した。これは長年、可能性が提唱されていたものの実験的に証明されたことがなかった現象を、確実に捉えた成果であり、二酸化炭素の化学変換手法に一石を投じるものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
異種二核金属錯体の構造的多様性は確実に増えている。さらに、異種二核金属錯体であるからこそ生じる、他に報告例のない分子変換反応が見つかっている。 また、ホスフィンオキシドからホスフィンイミドへの展開も順調に進められており、N-ボラン置換型環状ホスフィンイミド(BCPI)の開発および反応性の調査から、推定のみに留まってきた化学種を世界で初めて実験的に証明するに至っている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、令和4年度に見出したNi/Al異種二核金属錯体からの酸化還元プロセスの詳細を徹底的に解明することを目標とする。NMRを用いて反応変化をリアルタイムに追跡し、反応中間体に関する情報を集める。さらに、錯体化学的手法を駆使して、中間体の単離を試みると共に、理論化学計算を用いたアプローチも用いる。 N-ボラン置換型環状ホスフィンイミド(BCPI)に関しては、典型金属として有機ホウ素化学種との反応性を調査し、そこから発生すると期待されるカチオン性ボロン種の触媒的応用まで進めたい。
|