研究課題/領域番号 |
21K05078
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
高取 和彦 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (30231393)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | Michael-Michaelアルキル化反応 / Diels-Alder反応 / アンセリジオーゲンAn / ブリアラン / ジテルペン / ラジカル反応 / 環拡大反応 / 転位反応 / テルペン / トリキナン / カウラン / サマリウム / チタン / 転位 |
研究開始時の研究の概要 |
有用な生物活性を示す天然物の中には合成困難で特異な環状構造を持つ微量化合物が多数存在する。これらの複雑な環状化合物を合成する際、一電子還元反応を起点する反応が有用である。我々はSmI2の他、SmBr2やSmCl2とこれらに添加剤を組み合わせた反応剤の誘起する一電子還元を起点とした新規な環拡大1,2-転位反応を開発した。また、Cp2TiXを用いたラジカル反応も検討し、幾つかの反応を開発することができた。本研究課題ではこれらの知見を応用し、興味深い生物活性と構造を有する天然物の合成を検討し、生物活性試験に供して新規医薬品などのリード化合物を見出すことを目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は次の2点について重点的に検討した。 1) 一電子還元を起点とする連続環化反応とラジカル環開裂反応を駆使したアンセリジオーゲンAnの合成研究:アンセリジオーゲンAnのCD環に相当するトリシクロ環の合成は、従来、2-オキソシクロヘキサ-3-エン-1-カルボン酸メチルを塩基でエノール化させ、2-ブロモアクリル酸エステルへMichael-Michaelアルキル化反応させることで合成していたが、再現性がよくなかった。今回、1-ブロモ-2-オキソシクロヘキサ-3-エン-1-カルボン酸メチルと2-ブロモアクリル酸の光学活性オキサゾリジノンアミドによる還元的Michael-Michaelアルキル化反応を開発することができた。これによりジアステレオ選択的にトリシクロ環を合成することに成功し、反応の再現性も改善できた。オキサゾリジノンアミドからチオエステルに変換することで、トリシクロ環の有する3つのカルボニル基の反応性に差をつけつつ、光学活性な合成中間体を得た。本結果は、Michael-Michaelアルキル化反応を用いて光学活性トリシクロ環を合成した初めての例である。 2) 一電子還元を起点とする5員環形成と環開裂反応を駆使したブリアラン類の合成研究:これまで、ジエノフィル部に14位酸素官能基に変換可能な置換基を導入した環化前駆体の遠隔不斉制御分子内Diels-Alder反応は、いずれも立体選択性面、収率面ともに満足の行く結果が得られていなかったが、今回、遷移状態構造を計算化学的に考察し、E配置にホルミル基を導入した基質を合成した。そのマイクロ波加熱による分子内Diels-Alder反応は円滑にかつ立体選択的に進行し、ブリアラン14位酸素官能基へ変換可能な置換基が導入された6-10員環部を合成することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) 一電子還元を起点とする環拡大1,2-転位反応、酸的アリル転位反応の繰返しによる5員環伸長戦略を用いた抗菌活性化合物ヒプノフィリン合成法の開発:11位に相当する炭素原子にジメチル基を導入したエノンへのアレンの光環化付加は十分な立体選択性が発現しなかったため、ジキナンの合成はビスα,β―不飽和エステルの還元的環化―Dieckmann縮合で合成した。3環目の構築はジメチル基がない基質で検討し、すでに環拡大1,2-転位反応により形成できることを確認している。 2) 一電子還元を起点とする環拡大1,2-転位と連続環化反応を駆使したカウラン類の合成研究:15-オキサゾアパトリンの全合成を達成した。 3) 一電子還元を起点とする連続環化反応とラジカル環開裂反応を駆使したアンセリジオーゲンAnの合成研究:Michael-Michaelアルキル化反応の不斉化に成功し、光学活性な合成中間体を得ることに成功した。 4) 一電子還元を起点とする5員環形成と環開裂反応を駆使したブリアラン類の合成研究:遠隔不斉制御分子内Diels-Alder反応による合成ルートでは、14位酸素官能基へ変換可能な置換基が導入された6-10員環部を合成することに成功した。14位酸素官能基は全てのブリアラン類が有するため、14位酸素官能基へ変換可能な置換基を導入できたことは、ブリアラン合成において大きな前進である。
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今後の研究の推進方策 |
1) 一電子還元を起点とする環拡大1,2-転位反応、酸的アリル転位反応の繰返しによる5員環伸長戦略を用いた抗菌活性化合物ヒプノフィリン合成法の開発:ビスα,β―不飽和エステルの還元的環化―Dieckmann縮合で得たジキナンは現在、β―ケトエステルの状態なので、これの活性メチン部位にメチル基を導入後、脱炭酸を経てα,β―不飽和アルデヒドへ導き、アレンの光環化付加、環拡大1,2-転位反応でヒプノフィリンの全合成を目指す。 2) 一電子還元を起点とする連続環化反応とラジカル環開裂反応を駆使したアンセリジオーゲンAnの合成研究:光学活性なトリシクロ環合成中間体を得ることができたので、3つのカルボニル基の反応性の差を利用して、下部側鎖、および上部側鎖の順次導入、トリシクロ環の還元的環開裂と1電子還元連続環化反応による骨格形成の後、官能基を整えて光学活性アンセリジオーゲンAnの全合成を目指す。 3) 一電子還元を起点とする5員環形成と環開裂反応を駆使したブリアラン類の合成研究:遠隔不斉制御分子内Diels-Alder反応による合成ルートでは、14位酸素官能基へ変換可能な置換基として導入したホルミル基に1炭素加えて酸化転位させ、ブリアランが有するアセトキシ基へ変換する。10員環部のアセトニドからラクトンへの変換を行い、抗腫瘍性ブリアラン類であるブリアンテインWの全合成を目指す。二度のDiels-Alder反応による三環性中間体の合成とその環開裂―ラクトン形成による合成では、レトロアルドール反応による環開裂―ラクトン形成が困難であったので、ラクトン部に相当する炭素原子1つを導入した形で三環性中間体を合成し、ラジカル環開裂とラクトン形成でブリアラン類の合成を目指す。
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