研究課題/領域番号 |
21K05094
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
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研究機関 | 関西学院大学 (2022) 北海道大学 (2021) |
研究代表者 |
吉田 将己 関西学院大学, 生命環境学部, 講師 (20712293)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 錯体化学 / 発光材料 / 刺激応答性材料 / ナノ粒子 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、次世代の省エネルギー型光デバイスへの応用を見据え、発光性有機金属錯体と無機ナノ材料との複合化に基づく超高効率発光材料の設計指針を確立することを目標とする。具体的には、結晶状態では明るく光るものの溶液中では発光が低下する白金(II)錯体を層状ナノ粒子と複合化させることで溶液中でも高い発光性を保持させ、幅広い応用性を兼ね備えた材料群へと昇華させる。これにより、安価かつ非常に簡便な方法で既存のあらゆる白金(II)錯体を強発光化する方法論を確立し、高効率発光材料開発に変革を起こしたい。
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研究実績の概要 |
本課題では、次世代の省エネルギー型光デバイスやセンサー材料等への応用を見据え、発光性有機金属錯体と無機ナノ材料との複合化に基づく光機能材料の開発を目標としている。具体的には、固体状態では優れた発光性を示すものの溶液中で発光性が低下する白金(II)錯体を層状複水酸化物(LDH)ナノ粒子と複合化することで強発光性や新奇な光機能性を開拓する。 前年度までに、まず当初の大目標の一つであった「LDHナノ粒子への担持による発光増強」を達成するのみならず、水蒸気によるLDHナノ粒子上での白金(II)錯体の集積制御にも成功していた。そこで本年度は、これについてより詳細な検討を行った。 まず、発光スペクトルおよび発光減衰曲線について温度可変測定を行うとともに、その結果を示差走査熱量(DSC)測定の結果と照らし合わせることで、LDHナノ粒子上において白金(II)錯体がおかれた周辺環境を解明することに成功した。また、湿度可変発光スペクトルおよび水蒸気吸着組成等温線測定により、水蒸気の吸着挙動と発光性との相関についても解明した。これらの結果から、乾燥状態においては白金(II)錯体が静電的に強固にナノ粒子上に固定されているのに対し、水蒸気が間隙に吸着することで白金(II)錯体の移動度が向上し、それによって錯体どうしがπスタックなどにより集積することで発光性が変化していることが判明した。これは、特殊な置換基を必要とせずに外部刺激応答性を容易に導入できるストラテジーを与える非常に興味深い成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度までに、発光性白金(II)錯体の担持方法を確立するのみならず(申請書内・研究A)、外部刺激による錯体間相互作用の変調(申請書内・研究B)に成功するとともに、種々の測定からその詳細なメカニズムを解明することに成功している。これは、非常に簡便に作製が可能であり生体毒性が低いLDHナノ粒子を用いた強発光材料やセンシング材料開発の指針を与える非常に重要な結果である。以上のように、本研究は目的とするLDHナノ粒子が可能とする光機能性の発現に向けて順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
前項までに述べたように、これまでおおむね予定通り白金(II)錯体の強発光化および刺激応答性の付与に成功し、そのメカニズム解析を行ってきた。そこで2023年度はこれに加え、LDHナノ粒子への異種金属のドープによる機能化も試みたい。具体的には、まずは光機能性の金属イオンとして知られるユウロピウム(III)などのドープを検討したい。また、2023年度は最終年度となるため、これらの成果をまとめて原著論文を作成する。本成果を世界に向けて発表することで、LDHナノ粒子を舞台とした新奇な光機能材料の設計・物性制御の指針を発信したい。
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