研究課題/領域番号 |
21K05101
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
石井 洋一 中央大学, 理工学部, 教授 (40193263)
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研究分担者 |
岩本 貴寛 中央大学, 理工学部, 助教 (50735355)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | β炭素脱離 / ロジウム錯体 / イリジウム錯体 / ビニル錯体 / フッ素置換(2-ピリジル)フェニル錯体 / シクロプロパンの開環 / インデン骨格 / アルキン交換 / ナフチルホスフィン / アルキン / ロジウム / イリジウム |
研究開始時の研究の概要 |
アルキルまたはアルコキシド配位子のβ位の炭素置換基が金属上に転位すると同時にアルケンやケトンを脱離するβ炭素脱離反応は、優れたC-C結合の活性化反応である。一方、歪のないビニル錯体からアルキンを脱離するβ炭素脱離反応は、従来起こりにくいと考えられていた。本研究では、研究代表者らの最近の検討結果に基づき、アルキンのβ炭素脱離反応が温和な条件下でも進行できることを実証し、また理論化学的なアプローチも合わせて反応の特質を解明することを目指す。同時に、この反応の触媒的な応用について、キノリジニウム塩やホスホニウム塩のアルキン部分交換反応を中心に検討する。
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研究実績の概要 |
β炭素脱離反応はC-C結合の活性化手法として近年注目されているが、アルケンやケトンを脱離する反応形式が主であり、アルキンを脱離するものはほとんど知られてない。本研究では、特別な歪のない遷移金属ビニル錯体からのβ炭素脱離によりアルキンを脱離する反応系を開発し、β炭素脱離反応の概念をより一般化することを目的として、昨年度はシクロメタル化したロジウムのナフチルホスフィン錯体にアルキンを挿入させたビニル型錯体に着目し、そこからのβ炭素脱離を開発した。 2022年度の研究では、フッ素置換(2-ピリジル)フェニルロジウム錯体およびイリジウム錯体と(シクロプロピル)(フェニル)アルキンの反応を検討した。その結果、一般的な(シクロプロピル)(フェニル)アルキンの挿入とは逆の挿入方向(シクロプロピルが金属側、1,2-挿入)でアルキン挿入が進行した後にシクロプロパンの開環とインデン骨格形成が進行することが見出された。そこで、反応中間体の単離同定を検討したところ、温和な条件下で反応を行えば通常の2,1-挿入が進行してη3-フェニルビニル型錯体が生成することが判明した。一方で、このη3-フェニルビニル型錯体は加熱条件下ではインデン骨格をもつ錯体へと異性化した。このことは、第一段階であるアルキンの挿入は速度論的にはフェニル基が金属側に位置する方向(2,1-挿入)で進行するものの、生成したη3-フェニルビニル型錯体は熱力学的な最安定生成物ではなく、加熱条件下ではアルキン部分の脱離・再挿入の過程を経てα-シクロプロピルビニル型錯体に異性化し、そこからシクロプロパンの開環とインデン骨格の形成が進行したと結論付けられた。この反応系は、歪みのないロジウムおよびイリジウムビニル型錯体からアルキンのβ脱離が進行する珍しい系であるのみならず、β炭素脱離が反応全体の方向を制御する分岐点になっている点でも興味深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有機遷移金属錯体の関与する変換反応の中でも重要な反応形式であるβ脱離反応に関しては、従来から知られているβ水素脱離に加えて、近年はβ炭素脱離も可能であることが明らかにされ、アルキル錯体やアルコキシド錯体からアルケンやケトンを脱離する場合に関してはC-C結合の活性化手法として利用が始められている。しかし、ビニル型錯体からアルキンを脱離する例は、これまで極めて限られていた。 本研究ではこの点に着目し、歪みのないメタラサイクル型ビニル錯体からのアルキンのβ炭素脱離反応の開発を試みた結果、2021年度には実際に1-ナフチルホスフィンとジフェニルアセチレンから誘導されるロダサイクル錯体に関して、0 ℃~室温という極めて温和な条件下でもβ炭素脱離が進行できることを見出した。2022年度は反応系をホスフィン錯体系からピリジン配位部分をもつ(2-ピリジル)フェニル錯体へと展開した結果、フッ素置換基をもつ場合にはβ炭素脱離が鍵段階となってシクロプロパンの開環・インデン環形成を含む一連の化学変換を行う経路がロジウムおよびイリジウムで開発できた。本反応系では(2-ピリジル)フェニル基へのフッ素置換基の導入が重要であり、フッ素置換基があれば50 ℃程度の温和な条件でもアルキンのβ炭素脱離が進行できるが、フッ素置換基を導入しないと(シクロプロピル)(フェニル)アルキンの単純な2,1-挿入とN-C還元的脱離のみが進行して、β炭素脱離の観測はできなかった。フッ素置換基を持つ反応系の検討により、β炭素脱離を直接観測できる反応系を開発できたことは意義深いと考える。この成果については第130回触媒討論会および44th International Conference on Coordination Chemistryで発表しており、研究の進捗はおおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、当初計画において、1-ナフチルジフェニルホスフィンおよび2-(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ピリジンから誘導されるシクロメタル化錯体を出発物に用いて合成したビニル型錯体からのβ炭素脱離反応の開発を計画し、実際に2021年度はナフチルホスフィンを用いたロジウム系で、2022年度にはフッ素化フェニルピリジンを用いたロジウム・イリジウム系で、それぞれβ炭素脱離の観測に成功した。これらの知見に基づき、2023年度は(1,1'-ビフェニル-2-イル)ジフェニルホスフィンおよび2-(3,5-ジフルオロフェニル)ピラゾールから誘導されるシクロメタル化錯体の利用を検討する。これにより、従来はほとんど開発されてこなかったビニル型錯体からのβ炭素脱離反応が、実際には一般性の高い反応であることを立証したいと考えている。現在までに中心金属をロジウムおよびイリジウムとした場合に関して検討を開始しており、出発物質となるシクロメタル化錯体の合成については完了し、アルキン挿入によるビニル型錯体への誘導へ検討を進めている。これらの系の利用により、どのような場合にアルキンのβ炭素脱離反応が実施可能なのか、本反応の適用範囲を確認したい。また、2022年度に見出されたフッ素置換基の効果については、計算化学的な手法も含めた検討により、置換基効果が発現する理由を解明したい。加えて、本研究で見出したβ炭素脱離反応はロジウム・イリジウム錯体の場合であるが、本研究に至る前段階の研究ではインデニルルテニウム錯体においてもβ炭素脱離と見なせる現象を観測していることから、フェニルピリジンから誘導されるルテニウムのシクロメタル化錯体に関する検討も行うこととしたい。
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