研究課題/領域番号 |
21K05116
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34020:分析化学関連
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
東海林 敦 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (90459850)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | エクソソーム / 光ファイバー SPR センサー / 脱分極刺激 / 光ファイバーSPR / 神経細胞 / 脱分極 |
研究開始時の研究の概要 |
nm レベルで膜厚コントロールを可能にする革新的な無電解めっき技術を確立しており、この技術を利用して光ファイバー表面プラズモン共鳴(SPR)センサーを作製することができる。この基盤技術を基に、神経細胞から分泌されるエクソソームの個数を計測するための光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーを構築し、脱分極刺激のタイミングで、どれだけのエクソソームが分泌されるのかを明らかにする。それにより、近年、提唱されている“エクソソームが神経活動を調節している”といった新しい概念を理解する一助となるツールを提案する。
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研究実績の概要 |
細胞から分泌されるエクソソームを計測する際には、細胞を化学的あるいは電気的に刺激し、一定時間、培養した後の培養液上清を試料として、エクソソームをイムノアッセイにより計測する。これでは、刺激からどのようなタイミングで細胞からエクソソームが分泌されているのか明らかにできない。細胞からどのようなタイミングで、どの程度のエクソソームが分泌されるか把握するためには、リアルタイムかつノンラベルの計測技術が求められる。また、細胞から分泌されるエクソソームが拡散希釈されないように、細胞の近傍で計測できるような微小センサーの設計が必要になる。細胞近傍で計測することで、時間分解能も向上する。我々は、光ファイバー表面プラズモン共鳴に着目している。これまでに、ナノメーターレベルで膜厚コントロールを可能にする革新的な無電解めっき技術を確立しており、この技術を利用して光ファイバー表面プラズモン共鳴(SPR)センサーを作製することができる。しかしながら、光ファイバーの直径はと細胞と比較して、サイズが大きすぎる。そこで、先端径 を微小化したキャピラリーに光ファイバー SPR センサーを挿入した計測技術を確立する。このセンサーをマニピュレーターでマイクロメーターレベルで操作することで、細胞近傍にセンサーを設置できるようになり、単一細胞から分泌されるエクソソームを計測できるようになる。本申請課題のセンサーでは、脱分極刺激から、どのくらいのタイミングでどれだけのエクソソームを分泌されるか計測する。それにより、近年、提唱されている“エクソソームが神経活動を調節している”といった新しい概念を理解する一助となるツールを提案する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの界面にエクソソームのバイオマーカーである CD63 の抗体を固定化することとした。抗体固定化の際に汎用される手法として、物理的な吸着の他に、スクシンイミジル基とチオール基が両末端に結合しているアルキル鎖やポリエチレングリコールを介して、センサー界面(金ナノ薄膜)と抗体を化学的に結合する手法が用いられている。これらの方法を一通り検討したものの、抗体を介することなく、非特異的にエクソソームがセンサー界面に吸着することが明らかであった。非特異的な吸着に起因するセンサー応答がバックグラウンドになってしまうことが問題となる。この非特異的なを抑制するための界面設計に取り組んだ。重要なのは、センサー界面の抗体にエクソソームが接近しやすいように、親水性で群れ性が高く界面であることに加えて、非特異的な吸着も抑制しなければいけない。そこで、負電荷を有する高分子を界面に導入することにした。しかしながら、十分に非特異的な吸着を抑制することができなかった。無電解メッキ技術で作製したセンサー表面は、蒸着により作製した被膜よりも粗く、密に高分子をセンサー界面に導入できず、金が一部、露出しているものと示唆された。そこで、アミノ基をセンサー界面に導入した後、負電荷の高分子を静電的に吸着させた状態で、エポキシ基を有する架橋剤で架橋した。その結果、大幅に非特異的な吸着を抑制することに成功した。さらに、高分子鎖が多数導入されていることから、抗体を3次元的に化学修飾ができるため、従来法よりも多量の抗体をセンサー界面に導入できるものと示唆された。この界面設計に多くの時間を要したものの、現在、この課題を克服できている。
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今後の研究の推進方策 |
非特異的な吸着を抑制する界面に抗体を化学的に固定化し、エクソソームをアナライトとして、センサーがエクソソームに対して応答することまでは確認できている。我々が提案するセンサーでは、エクソソームが拡散によりキャピラリー内に流入し、センサー界面の抗体と結合することで、センサーが応答する。そのため、キャピラリーに光ファイバー SPR を挿入することで、計測感度が多少、低下することも想定される。このことから、できるだけ、高感度なエクソソームセンサーを作製したいと考えているため、抗体導入量の最適化が必要である。抗体導入量に対して、センサー応答がどのように変化するのか検討する。また、エクソソームの個数依存性を調べ、検量線から検出限界を求めることで、キャピラリーへの挿入前後で、計測感度がどの程度低下するか調べる。その後、キャピラリーセンサーを顕微鏡下に設置して、細胞近傍にセンサーを接近できるためのシステムを作製する。このシステムを用いて、脱分極刺激に伴い、神経細胞から分泌されるエクソソームを計測する。
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