研究課題/領域番号 |
21K05124
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34020:分析化学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
加藤 優 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (70709633)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 膜貫通型金属酵素 / タンパク質フィルム電気化学 / 表面増強赤外吸収分光法 / 一酸化窒素還元酵素 / チトクロムc酸化酵素 / チトクロムc / 脂質二分子層 / 金属酵素 / 人工生体膜 / ヘムタンパク質 / 脂質二分子膜 / 電気化学 / 界面敏感分光計測 / 膜タンパク質 |
研究開始時の研究の概要 |
生体内反応では,複数のタンパク質が相互作用しながら電子や化学物質を受け渡し,効率よくかつ選択的に生体反応を進めている.本研究では,複雑な生体内反応を理解するためのモデル反応場として,生体内環境に近い状態での酵素反応を追跡可能にする人工生体膜を電極表面に構築し,タンパク質同士の相互作用,タンパク質の向きや構造変化が酵素活性へ与える影響の理解を深める.
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研究実績の概要 |
表面増強赤外吸収(SEIRA)活性を示すAu電極表面に電極支持生体膜反応場として脂質二重層(BLM)構築し,膜貫通型金属酵素とリン脂質または水溶性電子伝達タンパク質との相互作用による酵素活性への影響を主に調べた. リン脂質の種類,特にアシル基の鎖長がBLMのパッキング密度に影響を与えることがSEIRA分光計測の結果から明らかとなった.鎖長が長いほど密にパッキングする傾向があり,興味深いことに,電気化学的酵素活性はBLMが密にパッキングしている状態の方がより高くなることが明らかとなった.流動性の高い生体膜環境とは異なるが,膜貫通型金属酵素として用いた緑膿菌P. aeruginosa由来のチトクロムc依存型一酸化窒素還元酵素 (cNOR) および牛心筋由来のチトクロムc酸化酵素 (CcO) のどちらにおいても同様の傾向が観察された.これらの膜貫通型金属酵素はガスを基質とするため,BLMのパッキングと物質拡散が関係している可能性がある. 水溶性電子伝達タンパク質との相互作用を調べるために,膜貫通型金属酵素としてCcOを,水溶性電子伝達タンパク質としてチトクロムc (cyt c) を用いて実験をした結果,電極表面への金属酵素固定化時に用いる自己組織化単分子層 (SAM) の構成分子であるアルカンチオールの末端官能基の割合によってCcOの電極表面でのタンパク質配向が変化し,cyt cとの吸着挙動が変化することが明らかとなった.また,cyt cとの吸着により,CcOの電気化学的酵素活性も変化することが明らかになった.これらの結果から,電極支持生体膜反応場を用いることで,比較的弱い相互作用である,リン脂質やタンパク質間相互作用によっても酵素活性が変化することを明らかにすることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電極支持生体膜反応場を構築することで,均一溶媒系では系統的な実験が難しい,膜貫通型金属酵素と脂質または水溶性タンパク質との相互作用による酵素活性への影響を明らかにすることができたため,おおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
電極支持生体膜中埋め込まれている金属酵素のタンパク質配向は界面での電子移動や物質輸送,複数の金属酵素の協働によるカスケード反応への展開等において重要である.水溶性タンパク質との相互作用の有無から間接的に電極表面に固定化した金属酵素の配向決定に成功したが,直接的なタンパク質配向の決定には至っていない.今後は当初の計画通り,表面敏感な分光計測手法を用いることによるタンパク質配向を決定する.その後,電極支持生体膜反応場における膜貫通型金属酵素の配向制御および他の水溶性金属酵素との協働的電気化学反応によるカスケード反応へと展開を試みる.
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