研究課題/領域番号 |
21K05125
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34020:分析化学関連
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
葛目 陽義 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (20445456)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | ラマン分光法 / 水電解 / ニッケル / in situ / オペランド / SHINERS / 燃料電池 / 表面増強ラマン分光法 / 電気化学 / 電気化学触媒 / オペランド計測 |
研究開始時の研究の概要 |
燃料電池デバイスの本格的な普及に向けた主要素材開発の実用化研究で、基礎研究の成果があまり活用できていない問題点がある。本研究では、『実用化研究に有用な基礎研究成果を獲得するためのオペランド研究の基礎を構築すること』を提案する。そのために二つの課題を立てる。(1)発電環境下での触媒挙動を原子レベルでリアルタイム追跡する直接観察技術(オペランド分光法)の開発を目指す。(2)発電セルでの評価指針に合う触媒を設計・合成し、反応活性・選択性・安定性の優れた触媒開発を目指す。オペランド計測で得られた「生」の情報から、効率的な触媒設計がさらに促進され、燃料電池の実用化が強く推進される事が期待される。
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研究実績の概要 |
本研究課題の研究目的は『「実用化研究の【評価指針】と【測定法】」を基礎研究の触媒素材開発に導入することで、燃料電池開発に役立つ基礎研究の知見をオペランド研究で獲得し、効率的に燃料電池の実用化を進めること』である。その為の研究実施計画として(課題1)オペランド分光計測技術を開発し、高温・多湿・強酸などの特殊環境下でも高感度分光計測を可能とする増強素子を開発する;(課題2)得られた知見・新たなフィードバックされた知見を基に新触媒を開発する;の二つを挙げている。 2022年度の課題研究では(課題1)について耐酸性・耐アルカリ性・耐高熱性・電気化学環境下でのin situ/オペランド計測を可能とする(シリカ、チタニア、ジルコニア)シェル被覆増強素子の合成法確立・物性評価を計画通りに終了した。さらにそれぞれ高い耐酸性(pH1)、耐アルカリ性(pH13)、耐高熱性(500oC)を有することを実証した。さらに3種類のシェル素材について測定条件・環境への汎用性・適応性を強化するために3種類の核増強素子(金ナノ粒子、金銀コアシェルナノ粒子、金星形ナノ粒子)に展開し、超高感度その場ラマン分光技術【測定法】の実用化を達成した。さらに分光セルについてプロトタイプの設計が終了し作成段階にある。 (課題2)について、アルカリ水電解触媒として連珠型Ni合金触媒の開発に向けて、Ni電極表面における表面吸着種と電極活性との相関を解明するために、(課題1)で開発したジルコニア被覆増強素子によるアルカリ条件下でのin situ測定を実施し、平滑Ni表面における表面吸着種の電位依存変化の直接検出に世界で初めて成功し、論文執筆中である。続いて連珠型Ni触媒の分析を進め、さらに最終目標である連珠型Ni合金触媒へと展開していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画書に従って予定通りの開発が進められている。 (課題1)のIn situ/オペランド超高感度ラマン分光計測法の開発では、実用計測を可能とする耐久性などの新機能を担保するシェル素材、信号増強機能を担保するナノ粒子について3種類づつ、合計9種類の増強素子を開発したことで、汎用性・適応性の向上を達成した。酸・アルカリ・高温条件下で、レーザー波長の異なる分光計測がそれぞれ可能となった。当初の予定を半年近く繰り上げて目標達成した。一方で、実用条件下での計測を可能とするオペランドセルの開発はプロトタイプの設計が完了し作成段階に入っている。3年目前半に完成予定で計測技術や条件などのノウハウを確認・開拓する予定であり、当初予定に沿って進行できている。 (課題2)の実用条件下での触媒開発研究について、2年目から開始したNi電極での計測に初めて成功し、論文執筆する段階に達している。当初の予定より若干の遅れがあるが、測定条件・方法が確立されたため、3年目にNi触媒、Ni合金触媒へと展開していくことが可能となり、研究進捗はほぼ研究実施計画書通りに進行していると評価できる。 コロナによる研究計画の遅れは解消しつつあり、また順調に研究計画通りに進めていることもあり、2年目でのコロナ関連による人的支障は最小限に抑えられた。ただし海外からの試薬や特定消耗品の入手が困難であり、特にプロトタイプセルに使用する部品の調達ができていない。国内の代替品での試作を継続的に進め、研究計画通りでの開発につなげる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の研究実施計画として挙げた2つの課題:(課題1)オペランド分光計測技術を開発し、高温・多湿・強酸などの特殊環境下でも高感度分光計測を可能とする増強素子を開発する;(課題2)得られた知見・新たなフィードバックされた知見を基に新触媒を開発する;について、概ね当初の計画通りに最終年度も推進する。 (課題1)については実用環境下での直接計測を可能とする分光測定セルのプロトタイプの作製・使用方法やシステムの開拓を最終年度である3年目終了時までに完了する。そのためにも入手困難な部品の国内代替品の試作・検査を継続的に進めていく。 (課題2)については、最も基本表面である平滑Ni電極上での計測が終了したことで、最終年度ではNi触媒、最新の連珠型Ni触媒、さらには新規連珠型Ni合金触媒について開発・調査展開していく。また連珠型Ni触媒については材料となるNi触媒のナノ粒子径の影響や連珠度合い、空間密度による影響を加味しながら表面構造―活性の相関関係の調査を続ける。合金型触媒については、遷移金属元素、典型元素、ランタノイド系などの添加による影響を調査し、構造-組成―活性の3次元的相関関係を解明していく。 また新たな課題展開として、単結晶Ni表面を利用した素反応解明に向けた基盤研究を開始した。共同研究先と合同で国際的なネットワークを形成して展開していく。また様々な合金触媒を合成・調査していく中で、機械ラーニングを用いた新たな条件因子の探索調査についての試験的研究に着手する。
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