研究課題/領域番号 |
21K05142
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34030:グリーンサステイナブルケミストリーおよび環境化学関連
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
尾崎 純一 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (30214125)
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研究分担者 |
小林 里江子 群馬大学, 大学院理工学府, 特任助教 (70600013)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | カーボン担体 / 窒素ドープ / 炭化タングステン / 水素発生触媒 / 材料反応工学 |
研究開始時の研究の概要 |
水素製造用の水電解用カソード触媒として非貴金属触媒の開発が求められている。本研究では、水素発生反応(HER)に対する高い触媒活性を持つ炭化タングステン触媒(WxC/C)を、タングステン化合物をカーボン担体上で加熱し得る方法を取り上げる。本研究の核心をなす学術的「問い」として、「高いHER触媒活性を持つ炭化タングステン触媒合成に求められる炭素源カーボン担体の要件はなにか?」と設定した。具体的には、導入量と化学状態を制御した窒素ドープカーボン担体の使用や、カーボン担体へのWxC担持量の変化が、WxCの構造・組成、分散性、そしてHER触媒活性に及ぼす影響を評価することで「問い」に対する解答を見出す。
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研究実績の概要 |
前年度は、炭化タングステン担持量とHER活性との関係を調査し、炭化タングステンの担持量には最適値が存在すること、その最適値は小さな粒子径の方が大きいことを明らかにした。最適値を持つことは、この触媒のHER活性が炭化タングステンの露出表面積に依存することと解釈した。
今年度は、カーボン担体に含まれる窒素量と炭化タングステン粒子径の関係を調査した。これまでにカーボン担体中に窒素が含まれている場合に炭化タングステンが微粒子化する傾向があることは把握していたが、窒素量が炭化タングステンの粒子径に与える影響は不明であった。そこで、処理時間を変えた窒素プラズマドーピングにより、窒素導入量を0.3~11 at. %の範囲でコントロールしたカーボン担体を調製し、窒素量と炭化タングステン粒子径の関係を明らかにすることを目的とした検討を進めた。得られた炭化タングステン触媒の粒子径は窒素導入量に伴い減少し、このとき水素発生触媒活性は増加した。つまり、高活性WxC担持カーボン触媒を得るためには、高担持量を実現するための微粒子化が望ましい。そして微粒子化のためには、カーボン担体が10 at. %以上の窒素を含むことが必要であると結論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、窒素を導入したカーボン担体を用いる炭化タングステン調製を実施した。窒素量0.3 at. %のカーボン担体を用いて得た炭化タングステンの粒子径は4.1 nmであった。窒素量が8 at. %および11 at. %の場合、それぞれの粒子径は3.2 nmおよび2.5 nmと減少した。特に、10 at. %の場合に顕著な粒子径の減少が認められた。これらの粒子径の減少にともないHER触媒活性が増加することを確認した。以上の結果から、高活性WxC担持カーボン触媒を得るためには、カーボン担体の窒素量が10at.%以上であることが要件であることが示された。このように、本研究で目的としている、カーボン担体の観点からHER用炭化タングステン触媒の材料設計法の確立は、着実に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はカーボン担体の特性と生成WxC特性の相関の評価と、その物理化学的解釈への理解を進めるための研究を行う。
本年度は、カーボン担体の窒素量が炭化タングステンの微粒子化を実現し、さらに水素発生触媒活性が増加するということを明らかにした。しかし、窒素の存在がカーボン担体の炭化タングステン形成にどのように関与しているかは未解明である。この関与を明らかにする上で、窒素がカーボン担体とタングステンとの反応性を増加させる作用の存在を考えることにする。これを考えることで、凝集が進みにくい低温下で炭化タングステンが生成し、この物質の高い熱安定性の結果として起こる微粒子化を説明できる。次年度は、カーボン担体の反応性と窒素量の関係を詳細に吟味することで、上記の仮説を検証する予定である。
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