研究課題/領域番号 |
21K05144
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34030:グリーンサステイナブルケミストリーおよび環境化学関連
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
本田 光典 金沢大学, 物質化学系, 教授 (60242533)
|
研究分担者 |
山口 孝浩 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (90272947)
須田 光広 金沢大学, 理工研究域, 技術専門職員 (10377400)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | フルオラス / イオン液体 / シロキサン / ハイブリッド材料 / シリル基 / グリーンサステイナブルケミストリー / シリコーン |
研究開始時の研究の概要 |
グリーン・サスティナブルケミストリーを指向した環境負荷の低減、資源の有効利用を可能にする新規ハイブリッド材料の創製を目指し、低粘性のフルオラスイオン液体の合成を検討する。そのために任意の鎖長をもつシロキサン骨格の合成法を開発し、ケイ素原子上にパーフルオロアルキル基を導入した新たなフルオラスタグを構築する。シロキサン構造はシリコーンの骨格を成すものであり、標的分子への新規タグの導入により低粘性の付与が期待できる。また、本計画ではパーフルオロアルキル基の導入数も大幅に増やすことが可能で従来に比べ格段にフルオラス性を向上したイオン液体の実用化が可能となり、優れた高機能性媒体のローンチへ波及できる。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、粘性の低いフルオラスイオン液体の合成を検討し、このハイブリッド溶媒を実用的な材料へと発展させることにある。また一方で、本申請による研究の下、更なるフルオラス性の向上を目指す。フルオラス性を増強するには単純にパーフルオロアルキル基の数を増やせば良いと考えられるが、その特異な凝集作用も同時に強くなるため、単なる増数では粘性が高くなると予想される。この二律背反を解決するための新たなフルオラスタグの開発を標的とする。 粘度低下を目的とするシリルタグに適した構造を検索するために、ケイ素原子上にシロキシ基を3つもつシリル基を導入したハロゲン化アルキルの合成を検討した。具体的には、クロロトリメチルシランのイソプロパノール溶液にトリクロロ(3-クロロプロピル)シランを反応させ3-クロロプロピルトリ(トリメチルシロキシ)シランを合成し、これをヨウ化ナトリウムと反応させハロゲン交換し、ハロゲンとシリル基の間にメチレンスペーサーを3つもち、分岐型トリシロキサン構造を有するシリルアルキルヨージドを得た。 一方、直鎖型シロキサン構造を導入するためのタグとして、クロロメチルクロロジメチルシランをイソプロパノール溶液中でクロロトリメチルシランと反応させクロロメチルジシロキサンを合成し、これをハロゲン交換してジシロキサン構造をもつシリルアルキルヨージドを得た。 以上に述べた分岐型および直鎖型のシロキサン構造をもつシリルアルキル基をフルオラスタグとして用い、ピロリジンまたはイミダゾールの窒素原子上に2つのタグをもつヨージド塩を合成し、アニオン交換によりライブラリーを構築した。いずれの化合物も粘度測定には至っていないが、一部の化合物において目視で流動性を確認した。 以上の結果は、タグを構成するシロキサン構造の導入によりイオン液体の融点や粘度低下させる可能性があることを示唆するものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度における本研究の目的は、シロキサン構造をもつハロゲン化アルキルを合成し、その際に分岐型および直鎖型のシロキサン構造をもつものを合成し、これを粘度低下を目的としたシロキサンタグとして調製することにある。これらのタグを導入したイオン液体を合成することにより、修飾能が高いシリル基を維持しながら、タグの構造とイオン液体の粘度の相関を調査し、低粘性のハイブリッドイオン液体のライブラリー構築を目指した。 本研究では、分岐型および直鎖型のシロキサン構造をもつ2種のシリルアルキルヨージドを調製し、これらをタグとして用いてピロリジン、またはイミダゾールの窒素原子上にタグを導入したヨージド塩の合成に成功した。これらを種々アニオン交換して対応する塩に変換したところ、分岐型シロキサンを導入したイミダゾリウム塩は、導入したタグの数やアニオンの種類にかかわらず、固体となったが、分岐型シロキサンを2つ導入したピロリジニウム塩は、常温で液体として得られ、新規イオン液体として利用可能であることを明らかにした。一方、直鎖型シロキサンを1つ導入したピロリジニウム塩も固体となったが、現在2つ目の直鎖型シロキサンの導入を検討中である。 上述のように、ケイ素原子上にシロキシ基もつシリル基を有するシロキサン構造をタグとして導入したアンモニウム塩を合成することにより、イオン液体の粘度低下に一部成功し、タグ中のシロキサン部分の構造と融点や粘度の相関の解明も進行している。しかしながら、シロキサン部分における骨格変更だけでは物性の調整に限界があることが明らかになりつつあり、現時点で全体として概ね予定通りと考えた。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度および本年度に得られた知見をもとに、ケイ素原子上にパーフルオロアルキル基を3つもつシリル基を導入したシロキサン構造を構築する。シロキサン構造の導入により得られる塩の顕著な粘度低下は認められなかったものの、トリシロキサンを側鎖にもつ塩が従来のイオン液体に比べ粘度が低く分子拡散が速いことも報告されている。加えて、シロキサンを有する塩は高い熱安定性を示すことも分かっており、パーフルオロアルキル基をもつシロキサン骨格をイオン液体に導入すれば低粘性かつ分子拡散速度の速い、フルオラスなイオン液体となることが期待できる。そこで、シロキサン構造中のシリル基にパーフルオロアルキル基を導入し、得られるフルオラスシロキサン構造をタグとして用い、ピロリジン、またはイミダゾールの窒素原子上に2つのタグをもつ塩類の合成を検討し、生成するイオン液体の粘度を低下させる。また、シロキサン構造へのパーフルオロアルキル基の導入数や導入部位の調整を図り、フルオラス性や粘性等の物性のチューニングの可能性を見極めたい。
|