研究課題/領域番号 |
21K05146
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34030:グリーンサステイナブルケミストリーおよび環境化学関連
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
坂井 亙 京都工芸繊維大学, 材料化学系, 教授 (70263176)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 高分子劣化 / 自動酸化劣化 / ラジカル反応 / 電子スピン共鳴 / ケミルミネッセンス / ポリプロピレン / 劣化 / 高分子材料 / ケミルミネッセンス(CL) / 電子スピン共鳴(ESR) / ラジカル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、高分子材料を加熱したときに起こる酸化劣化の、これまで直接的に調べられなかった中間の反応経路をより詳しく解明することを目的として、材料の酸化状態を分析できるケミルミネッセンス(CL)測定と、短寿命ラジカル種を分析できるスピントラップ-電子スピン共鳴(ST-ESR)測定とを同時に行う手法を独自に構築し、高分子材料の加熱中に生じる過酸化物質およびラジカル反応中間体の挙動の相関性を詳しく調べるものである。本研究を通じて得られる成果は、高分子材料の寿命を原因療法的かつ能動的に制御するための重要な基礎情報であり、サステナブル社会の実現のために必要不可欠な知見となる。
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研究実績の概要 |
高分子材料は酸素の存在下において、過酸化反応を通して徐々に酸化劣化する。本研究は、この酸化劣化について、これまで直接的に調べられることがなかった中間的な反応経路を詳しく解明することを目的とするものであり、材料の酸化状態を分析できるケミルミネッセンス(CL)測定と、短寿命ラジカル種を分析できるスピントラップ-電子スピン共鳴(ST-ESR)測定とを同時に行うCL-ST-ESR手法を独自に構築することで、高分子材料の酸化劣化途中で生じる過酸化物質およびラジカル反応中間体が示す挙動の相関性を詳しく調べるものである。 初年度は、ST-ESRのみにより反応中間体ラジカル種を同時に測定できることを確認するため、まずは未酸化のポリプロピレン(PP)に関してST-ESR測定を中心に詳しい実験を進め、その研究結果を1つの学術論文にまとめた。また、オンライン参加可能な学会において研究発表を行い、本研究に関する意見を他者からいただくと共に、今後の進展に有用な情報を収集した。 2年度目は、事前に酸化させた状態でのPPを試料とすることで、過酸化状態からのラジカル反応中間体の生成挙動を追跡し、同時にCL発光量との相関性を調べることを目的として研究を進め、試料調製の条件についても検討した。スピントラップ法においてはラジカル種を捕捉することで反応経路を解明できるが、同時に反応を止めることにもなるので、CL発光を観測するために反応を進行させる微妙な条件の調整が必要であることが分かってきた。またPP以外にポリアミド(66ナイロン、PA66)についてもCL発光とST-ESRの相関性を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目は、初年度に行えなかった、ラジカル反応中間体の挙動とCL発光量との相関性をCL-ST-ESR法により調べた。まず、未処理のポリプロピレン(PP)および事前に酸化処理させたポリプロピレン(OPP)試料を用いて、装置内にセットされた各試料からのCL発光を観測して比較できることを確認した。次に酸素気流下で比較し、酸化途中の過程も観測できた。さらに、スピントラップ剤を添加させて違いを調べたところ、ほどほどの濃度(1。0wt%)に仕上げることで、OPPからのCL発光とラジカル種の観測を同時に行えることを確認した。さらに、受光部に異なる種類のバンドパスフィルターを用いることで観測波長を変化させたところ、観測温度によってCL発光挙動が異なる事を見出したが、過去の報告例とは異なる波長領域の挙動が見られた。さらに、66ナイロン(PA66)の酸化劣化についてもCL発光挙動とST-ESRによる観測結果を比較を行ったところ、PA66の過酸化劣化過程を決定する根拠を得ることができた。成果として、PPについては1つの学術論文を発表し、PA66については投稿後、現時点でMinor Revisionの評価を得ており、再査読の途中である。各研究内容について、論文発表以外に各種学会にて成果発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
3年目は、さらに条件を厳しく設定して、CL-ST-ESR法で得られる情報の内容を確立させる。試料の事前の酸化状態、酸素の流量、測定時間、測定温度による影響を強く受けることが分かり、より詳細な実験を行って、反応経路の解析を進める。光学フィルターの波長を細分化し、CL発光種の特定を試みる。ラジカル種の特定については、酸素ラジカル種を中心に観測を行うため、これまでとは異なるスピントラップ剤を用いて解析を行い、CL発光との相関性をより詳しく検討する。さらに、2022年度末に本学共通機器として最新のESR分光装置が導入されたことから、この新ESR装置に合わせてCL測定部分を改良して接続し、より高解像度のESRスペクトルを観測する。そのことで、昨年度までは観測できなかった条件でのCL-ST-ESR実験が可能となる。また別途、高分子材料を、本研究代表者が過去に、ST-ESR法で解析実績のあるポリブタジエンやポリイソプレンなどのエラストマー系材料や、ポリ乳酸やポリメタクリル酸メチル、ポリビニルアルコールなどにも広げ、高分子材料の酸化劣化に関して、より汎用的な情報が得るための実験を推し進め、一連の成果として発表したい。
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