研究課題/領域番号 |
21K05196
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
中根 幸治 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (50292446)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | エレクトロスピニング / ナノ繊維 |
研究開始時の研究の概要 |
注射器に高分子溶液(紡糸液)を入れ,二相分離液体(有機溶媒/水)の上部の有機相に注射針を刺し,紡糸液を押し出しながら注射針に高電圧を印加すると,有機相と水相の二相の界面で高分子ナノ繊維からなる不織布が形成される現象を確認した.本研究では,この現象が起こる条件(高分子材料の種類,有機溶媒の種類(誘電率),二相の液体の組み合わせ等)を系統的に調べ、紡糸メカニズムを明らかにする.また,この現象を利用して上面(有機相)と下面(水相)で表面特性が違うナノ繊維不織布の製造法の確立を行うことを本研究の目的とする.
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研究実績の概要 |
ヘキサン/水の二相分離系においてヘキサン中でポリビニルアルコール-ジメチルスルホキシド溶液や酢酸セルロース(CA)-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液などを紡糸液としてヘキサン中でエレクトロスピニング(液中ES)するとヘキサンと水の界面に高分子ナノ繊維不織布を作製できた.これは水の導電性と浮力のため水相表面がコレクターとなることが考えられる.この二相分離系での液中ESの利点を示すことを目的として,機能性高分子ナノ繊維の作製法を提案することにした.具体的には次の二つの検討を行った. (1)ヘキサン相中に分散染料を溶解させ,CA-DMF溶液を紡糸液として液中ESを行ったところ,着色したCAナノ繊維がヘキサン/水界面に析出した.これは紡糸中のポリマージェットが分散染料を取り込んだことを意味する. (2)水相を水酸化ナトリウム(0.1 N)水溶液とし,CA-DMF溶液を紡糸液として液中ESを行ったところナノ繊維不織布が得られたが,水相側はセルロース,ヘキサン相側はCAであることがATR-IRスペクトルから確認でき,表と裏で組成が異なるナノ繊維不織布が得られたことがわかった.これはヘキサン/水界面に析出したCAナノ繊維が水酸化ナトリウム水溶液側で脱アセチル化してセルロースになるためである. 上述のように,ヘキサン相や水相に試薬を溶解させておくことにより,液中ESの工程で機能性ナノ繊維を形成する手法が示されたと共に,液中ESを用いた新しい形状の繊維材料の創製法の可能性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の第一の目的は,有機相と水相の二相分離系での液中ES法のナノ繊維形成について系統的に調べることであり初年度で概ね達成している.それを踏まえて二年目の本年度は二相分離系での液中ESの利点を示すことを目的とした.その利点として,有機相であるヘキサン相や水相に機能性化合物や反応性化合物を溶解させておくことにより,紡糸中の繊維内への化合物の取り込みや反応を伴う紡糸により機能化したナノ繊維を作製することを考えた. 例として,分散染料を溶解させたヘキサン中でCA-DMF溶液を液中ESしたところ濃色に染まったCAナノ繊維不織布が得られた.CAナノ繊維不織布を分散染料溶液に浸漬させても着色はほとんど見られないので紡糸中に分散染料がCAナノ繊維に取り込まれたことが考えられる.他の検討として,水相を水酸化ナトリウム(0.1 N)水溶液とし,CA-DMF溶液を紡糸液として液中ESを行ったところナノ繊維不織布が得られたが,水相側はセルロース,ヘキサン相側はCAであることがATR-IRから確認でき表と裏で組成が異なるナノ繊維不織布が得られたことがわかった.これはヘキサン/水界面に析出したCAナノ繊維が水酸化ナトリウム水溶液側で脱アセチル化してセルロースになるためである. 以上のことから液中ESの紡糸工程でナノ繊維を機能化できる一例を示すことができたため,研究は順調に進捗していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は前年度に得られた知見を系統的に調べる.すなわち,ヘキサン/水酸化ナトリウム水溶液の二相分離系におけるセルロースナノ繊維集合体の作製と機能化を検討する.上述の通りCAの脱アセチル化により水相側でセルロースナノ繊維が形成される.セルロールナノ繊維は水に沈むことを考慮すると液中ESの紡糸時間を長くすると界面に析出したCAナノ繊維がセルロースナノ繊維に変換されていくためそれが連続的に積層して水相中にセルロースナノ繊維三次元集合体が形成できるのではと予想している.今年度はこの現象を確認しセルロースナノ繊維集合体を形成することを第一の目的とする.また得られた集合体の機能化と利用について検討を行う.
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