研究課題/領域番号 |
21K05197
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
野呂 篤史 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (90377896)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 脱保護 / ポリスチレンスルホン酸 / 架橋 / イオン交換容量 / 燃料電池 / 電解質膜 / 伝導率 / スルホン酸エステル / 固体高分子形燃料電池 / 高分子電解質膜 / プロトン伝導率 / 無加湿 / 強酸性官能基 / 架橋ポリマー / 架橋点 / プロトン伝導 |
研究開始時の研究の概要 |
強酸性官能基を有し、かつビニルポリマーをベースとした架橋ポリマーに対し、強酸を浸み込ませて新規無水高分子電解質膜を創製する。プロトン伝導率に関して、無加湿下の無水高分子電解質膜がナフィオン等の加湿系高分子電解質膜を凌駕(>0.1 S/cm)していることを確認する。最終的には無加湿下で高伝導率を示す無水高分子電解質膜作製のための有用な分子設計を提案する。
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研究実績の概要 |
2021年度において、脱保護法を利用することでスルホン酸含有率の高いポリスチレンスルホン酸架橋物(CL-sSA)を合成していた。膜調製、伝導率測定の再現性に十分に注意をし、調製、測定を進めた。なお、膜のイオン交換容量(IEC)は滴定により決定し、5.0 mequiv/g以上であることを確認した。このCL-sSA膜の80℃、90%RHでの伝導率は0.93 S/cmであった。一般的に燃料電池用電解質膜として利用されるChemours のNR212(ナフィオン)の伝導率は0.15 S/cmであるため、CL-sSA膜は同条件で極めて高い高伝導率を示すことが分かった。化学架橋のために用いられるジビニルベンゼンを混ぜ込まずに、アルキル保護基で保護したスルホン酸エステルモノマー(スチレンスルホン酸n-ブチル)のみを重合させ、さらに脱保護することで得られる未架橋のポリスチレンスルホン酸は、加湿下では水分によって溶解するため膜としての形状を維持できず、CL-sSAでは化学架橋の有効性を見出すことができた。これらの成果をまとめてACS Applied Polymer Materials誌に論文を投稿し、受理がなされた。プレスリリース(科研費への謝辞記載)を発表したところ、国内外で大きな反響があり、日経電子版、日経産業新聞9面などで関連記事が取り上げられた。 さらに、酸性官能基を有する架橋ポリマーにリン酸を浸み込ませた電解質膜も作製、無加湿下で伝導率を測定し、学会発表も行った。 そのほか、酸性官能基を有する架橋ポリマーの合成、評価実験と並行して、塩基性官能基を有するポリマーに強酸性液体を浸み込ませて得られる電解質膜の作製及び評価、イオン性のポリマーの調製及び力学特性に関しても一部実験を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度末までの目標としていた、スルホン酸エステルを有したモノマーを合成して重合・架橋することで、保護されたスルホン酸基を有する架橋ポリマーを合成し、さらに塩基性条件下で脱保護反応を行うことでスルホン酸基(強酸性官能基)を高密度で有する架橋ポリマーを合成しており、また得られた架橋ポリマーからなる電解質膜を作製し、伝導率測定を行って高伝導率を確認し、論文発表も行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
強酸性官能基であるスルホン酸基を高密度で有する架橋ポリマーの合成法の有効性が、英語論文の受理、国内外メディアでの大きな反響からも認められた。今後はこの合成法の有効性を学会でも発表する(2023年9月の高分子討論会で発表を計画)。さらに、この手法を用いてスルホン酸基を高密度で有する架橋ポリマー膜中のスルホン酸基の密度、架橋点密度を適宜調節することでスルホン酸基を高密度で有する架橋ポリマー膜が示す伝導率がどのようになるのかを確認する。またスルホン酸基を高密度で有する架橋ポリマー膜の伝導率の湿度依存性についても調査し、無機酸等添加物の影響などについても調査する。
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