研究課題/領域番号 |
21K05198
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
駒口 健治 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (80291483)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | ヒンダードアミン系光安定剤 / Denisovサイクル / 光酸化反応 / ニトロキシドラジカル / ウレタン / 耐候劣化 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)は,有機高分子材料の代表的な耐候劣化防止剤で,少量の添加にもかかわらず優れた効果を示す。HALS分子は,添加時の状態ではラジカル捕捉能を有しないが,光酸化でニトロキシドラジカルに変化することではじめて捕捉能を発揮する。しかし,このHALSの覚醒反応を含めてその動作機構の詳細は明らかにされていない。本研究では,HALSが活性HALSに変化する覚醒反応について,電子スピン共鳴法を用いて調査する。覚醒反応に関する知見は,HALSの動作機構の理解を深めるためには必須であり,新しいHALSの開発や高分子材料の寿命の評価法開発にも極めて有用である。
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研究実績の概要 |
本年度は,HALSとして用いたセバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル,SBPM)のジクロロメタン(DCM)の溶液系における覚醒反応をさらに詳細に調査した。SBPMの覚醒反応で生成するニトロキシドラジカルは,光照射の時間と共に増加し,ある値(約0.01 mM)に達するとその後は減少に転じ,最終的にESR検出できなくなった。このニトロキシドラジカル生成量の最大値は,HALS濃度,照射光強度などの条件に関係なく,ほぼ一定となった。一定となった原因として,DCM溶液中の溶存酸素が考えられる。光学式溶存酸素計(本年度に購入)を用いて,大気下室温にてDCM中の酸素濃度を測定した結果,溶存酸素濃度は、ニトロキシドラジカルの最大生成量よりも80倍も高いことがわかった。この理由として,光励起したSBPMの寿命が関係している可能性がある。 SBPMのピペリジル基の置換基の影響を調査した結果,HALS濃度が同じとき,-CH3から-Hに変わるとニトロキシドラジカルの最大生成量はSBPMの約15倍, -O(CH2)7CH3 に変わると,約40倍に増加することがわかった。濃度と照射光強度などの他の実験条件が同じにもかかわらず,ニトロキシドラジカルの生成速度も置換基の種類に依存し,-CH3 < -H < -O(CH2)7CH3 の順で大きくなった。 また,DCM中でニトロキシドラジカルの光照射による消失が当初の想定以上に早く進行することがわかった。この消失反応は,BPMPS濃度に依存して大きくなったことから,ニトロキシドラジカルの水素引き抜き反応よりも,未反応のSBPMとの光反応による消失の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度,進捗に遅れが出ている原因として,溶媒として用いたDCMの光分解反応の影響を挙げた。しかし,ニトロキシドラジカル生成量のHALS濃度依存性や光強度依存性,置換基依存性,溶媒効果から判断すると,DCMの光分解が本反応に寄与している可能性は低いと考えられる。ただし,本実験での照射光の波長領域にDCMの光吸収特性は含まれることから,DCMの光励起による影響は完全には否定できない。この問題については,引き続き検討したい。 HALSの初期覚醒反応で生成したニトロキシドラジカルの光反応については,すでに報告されているように水素引き抜き反応(NO部への水素付加)を予測していたが,本系においてニトロキシドラジカルはHALS濃度が高いほど減少速度は速くなった。したがって,ニトロキシドラジカルの光による減少は水素引き抜きではない可能性があり,光強度依存性などについてさらに詳細に検討する必要がある。 溶液中での覚醒反応(ニトロキシドラジカルの光生成と光消失)が,当初の予想よりも複雑であることが次第に明らかになってきた。そのため,モデル高分子中での調査の着手が当初の予定よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,DCM溶液中のSBPMの覚醒反応について,速度論的解析を行う。溶存酸素濃度を変え,UVバンドパスフィルター(透過波長239nm,半値幅10 nm)を用いてDCMよりもSBPMを優先的に光励起する条件でESR測定を行う。サーモパイルを用いて励起光の光強度を測定し,励起光の光強度を量子収率を求める。速度論的解析により,SBPMへの光照射によるニトロキシドラジカル生成と消失の反応機構を明らかにし,それらの反応速度定数を決定する。また,副反応について調査するために,ガスクロマトグラフィー,高速液体クロマトグラフィー,および精密質量分析法を用いて反応溶液に含まれるDCMの光分解やニトロキシドラジカル以外の生成物の調査を行う。 溶液系の実験と並行して,次年度に予定していたように,固体状態の有機高分子樹脂中での覚醒反応を調べる。ヘキサメチレンジイソシアネート(OCN(CH2)6NCO)とブタンジオールおよびブタントリオールを用いて,単純な構造を有するウレタン樹脂を合成し,覚醒反応で生成するニトロキシドラジカルとSBPM添加量や酸素などとの関係を調査する。
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