研究課題/領域番号 |
21K05209
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35030:有機機能材料関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井上 悟 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00799562)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 有機半導体 / 有機トランジスタ / 層状結晶性 / アルキル基 / チエノアセン / プリンテッドエレクトロニクス / 結晶構造 / 分子合成 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、非対称縮環構造を持つπ電子系骨格に多彩な化学修飾を施した、新たな高性能有機半導体の創製を目指す。これまで物質開発が見過ごされてきたこれら化合物群の合成手法を確立し、それら分子群の結晶構造解析およびデバイス物性の評価を行うことで、結晶構造-デバイス物性相関を系統的・網羅的に明らかにする。本研究を通して、非対称π電子分子群の半導体性能発現の鍵となる、高秩序層状構造構築のための新たな指導原理を確立するとともに、プリンテッドエレクトロニクス実現に最適な半導体材料の開発に取り組む。
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研究実績の概要 |
有機半導体は、既存の無機半導体では困難な、常温・常圧下で既存の印刷技術を用いて電子デバイスを作製する「プリンテッドエレクトロニクス」を実現するための基本要素となる材料である。中でも剛直なチエノアセン骨格と柔軟なアルキル基が連結した棒状分子有機半導体には、横繋がりの分子層を形成しやすい性質(層状結晶性)があり、キャリア輸送に最適な伝導面を層内方向に沿って構築できることから優れたキャリア輸送特性を示す。本研究ではこのような層状結晶性を有する有機半導体の性能向上を目的に、非対称縮環構造を持つπ電子系骨格に多彩な化学修飾を施した、非対称置換-非対称骨格型の高性能有機半導体の創製を目指す。 本年度は、昨年度開発を進めた非対称置換-非対称骨格型有機半導体のデバイス特性の検証、特にアルキル鎖長依存性に関する調査に注力した。中でも、チエノチオフェンに対しベンゼンとナフタレンが左右に縮環することで非対称構造を取るBTNT骨格系では、一連の化合物の結晶構造はアルキル鎖長に依存せず、すべて同形の2分子膜型層状ヘリンボーン構造を形成するにも関わらず、これを用いて作製した単結晶トランジスタの電界効果移動度はアルキル鎖の伸長に応じて顕著な移動度向上効果が確認された。特に、これまでの有機半導体ではあまり用いられることのなかった非常に長いアルキル鎖(n>12)を置換した誘導体では、アルキル鎖の熱揺らぎが大幅に抑制されることで層状結晶性が強化され、世界最高水準の電界効果移動度16cm2/Vsを示す有機単結晶トランジスタを室温で作製可能であることを実証した。以上の成果を応用物理学会、日本化学会にて学会発表を行った(計3件)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り、本年度は対称性の低い非対称型π電子骨格を非対称置換した半導体系のデバイス特性評価に注力した。その結果、いくつかの半導体系において当初の期待を大幅に上回るデバイス性能を実証するに至ったことから、当初の計画以上に研究が進展していると考えている。さらに重要な点は、本系ではアルキル鎖のみの非対称置換といったきわめてシンプルな置換基効果であっても層状結晶性が強化され、伴って実用性の高い性能が得られることにある。従って、非対称置換-非対称骨格型有機半導体系における性能向上には、非対称骨格の選定とともに組み合わせる置換基との協働効果が鍵となることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度その本質的な性能を実証した非対称有機半導体に関する論文発表を早急に進めるとともに、最終年度では、本年度明らかになった置換基効果の重要性を受けて、さらなる性能向上に有効な置換基の考案を重点的に進め、これまで開発を進めてきた非対称π電子骨格との統合を検証するとともに、新機能の発現にむけた取り組みについても推進する。
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