研究課題/領域番号 |
21K05212
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35030:有機機能材料関連
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
山田 重之 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 准教授 (10612252)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | フッ素 / フッ素化トラン / [3+3+3]環化三量化反応 / 発光 / 液晶 / 官能基変換 / 固体発光分子 / 熱刺激応答分子 / 液晶性発光 |
研究開始時の研究の概要 |
熱に応答して発光挙動が変化する熱刺激応答性の固体発光材料において,加熱下でも強い発光を維持できる新たな発光分子の分子デザイン,構造と特性との相関の解明が強く望まれている。容易に調製可能な直線状分子から,官能基変換によって円盤状や屈曲形状,分岐形状などの多様な幾何形状をもつ液晶分子への変換技術を確立する。得られた分子の光学特性・熱特性や熱刺激応答性を精査し,構造と特性との相関の解明を目的とする。本研究では多様な分子幾何をもつ熱刺激応答性の固体発光分子のデザイン・変換技術を提供し,『高効率・長寿命・高感度な熱刺激応答性の固体発光分子』の迅速な開発・技術的応用に貢献できる。
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研究実績の概要 |
熱に応答して発光挙動が変化する熱刺激応答性の固体発光材料は,スマートウィンドウや発光温度センサーとしての用途に期待される。しかし,従来の分子設計では加熱下で強く発光する分子開発は困難であった。そのため加熱下でも強い発光を維持できる新たな発光分子の分子デザイン,構造と特性との相関の解明が強く望まれている。そこで容易に調製可能な直線状分子から,官能基変換によって円盤状や屈曲形状,分岐形状などの多様な幾何形状をもつ液晶分子への変換し,光学特性・熱特性や熱刺激応答性を精査する。昨年度までに,1,4-ジオキサン溶媒中,ジコバルトオクタカルボニル触媒下,フッ素化トランを120°Cで加熱還流させると,[2+2+2]環化三量化反応が進行し,含フッ素ヘキサアリールベンゼン誘導体が得られ,その位置異性体は互いに異なる光学挙動を示すことも明らかにした。今年度は次の3点を検討した。 (1)フッ素化ヘキサアリールベンゼン構造のフッ素原子導入効果:非フッ素化および全フッ素化ヘキサアリールベンゼン誘導体を合成し,光学特性を比較したところ,部分フッ素化ヘキサアリールベンゼンが最も高い発光効率を示すことを見出した。分子間H-F水素結合が無輻射失活を抑制したものと推察している。 (2)アルコキシ置換フッ素化ヘキサアリールベンゼンの柔軟鎖の効果:鎖長の異なるアルコキシ鎖を導入したところ,光学特性はほぼ同一であったが,液晶特性は多様に変化した。その液晶性発現は限定的であり,更なる分子設計の改良が必要である。 (3)フッ素化トランとシクロペンタジエンとのDiels-Alder反応:当初予定していたDiels-Alder反応の検討を行なった。反応は幾分進行したが,添加剤,反応溶媒,反応温度,反応時間などを検討したが,収率の改善には至らなかった。現状では他のジエンに応用できないので,この検討は一度保留することを決断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初,今年度にはフッ素化トランを親ジエンとして,各種ジエンとのDiels-Alder反応を計画していた。しかし,その反応を精査したが,全く収率の改善には至らず,本アプローチを断念することを決断した (上記,研究実績の概要(3))。加えて,コロナ禍であり,罹患または濃厚接触の場合には在宅業務へとシフトしなければならず,研究が滞ったことや,外国からの輸入が遅延したことなども研究遅延の理由と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた,フッ素化トランと各種ジエンとのDiels-Alder反応は頓挫したものの,初年度と2年目で実施したフッ素化ヘキサアリールベンゼン誘導体は比較的良い成果が出ている。そこで,研究方針を「液晶性と発光特性を備えた円盤状分子」への転換を計画した。当初のヘキサアリールベンゼンでは発光特性は比較的良好であったが,液晶性を現す分子は限定的であった。これは中心芳香環の平面性が乏しく,カラム状の凝集構造の形成が阻害されたためだと考えている。そこで今後の研究の推進方策として,中心のπ共役構造を拡張するためメリット酸エステルまたはアミドを中心平面構造とし,6つの周辺位に発光特性をもつフッ素化トラン構造を導入した分子を設計し,その合成と光学特性の評価へのシフトを計画している。
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