研究課題/領域番号 |
21K05213
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35030:有機機能材料関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鈴木 充朗 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (20724959)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 有機薄膜太陽電池 / 有機半導体 / π共役分子 / π共役化合物 / 有機太陽電池 / 薄膜構造制御 |
研究開始時の研究の概要 |
有機太陽電池による効率的な近赤外光電変換の実現は,太陽光エネルギーの有効活用に欠かせない重要な課題である.しかし,最先端材料を用いた素子でも近赤外領域における発電効率は不十分であり,革新的な新規材料の開発が求められている.そこで本研究では,「電子構造の非対称化」と「パッキングの緻密化」を組み合わせた独自のアプローチにより,近赤外光電変換の高効率化に挑む.「非対称化」については,π軌道が高度に非局在化した色素分子に対して適切な末端修飾を施すことにより,光吸収特性を大きく損なわずに必要十分な軌道係数の偏りを実現する.また「緻密化」は,塗布変換法による成膜プロセスを導入することで達成する.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,近赤外領域で効率的な光電変換が可能な有機薄膜太陽電池(OPV)の実現に向け,新たな有機半導体分子を開発することである。近赤外光は太陽光スペクトル中で比較的大きなエネルギーを占めるため,その活用は光電変換効率(PCE)の向上に大きく寄与し得る.また,近赤外光特化型の太陽電池は,可視光透過性や熱遮断性などの付加機能を取り入れたユニークな応用が期待される.しかしながら,現状ではOPVによる近赤外光電変換は低効率であり,既存材料の単純な構造改変では大幅な性能向上は難しい.このような背景のもと本研究では,近赤外光電変換の高効率化を目指し,キャリア再結合による性能低下を最小化するための分子設計指針の確立を目標とする. 研究期間の2年次目にあたる2022年度は,前年度に合成・評価した比較的単純な化合物からπ共役系を拡張し,1000nmを超える長波長吸収を持つ化合物の開発に取り組んだ.具体的には,indaceno[1,2-b:5,6-b']dithiophene(ID),に(5,6-dichloro-3-oxo-2,3-dihydro-1H-inden-1-ylidene)malononitrile(IC),およびdi(2-thienyl)diketopyrrolopyrrole(DPP)という三つのユニットから成るアクセプター分子の合成を進めた.合成条件の最適化を経て,物性評価が可能な量の目的化合物を取得することに成功するとともに,目的物の軌道エネルギー準位がアクセプター分子として十分に機能し得る程度に低いことを実験的に確認した.また,得られた化合物の薄膜状態における吸収端波長は約1100 nmであり,目標とした1000nmを超える値を達成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の成果に基づき,今年度は当初計画した「分子パッキングの緻密化」に関する検討に代わって,改めて分子設計から見直しを行うこととした.検討の結果,新たに設計した近赤外色素の合成に成功するとともに,その初期評価でほぼ設計通りの電子構造を有することが確認された.また,一般的なドナーポリマーと組み合わせた太陽電池では,近赤外光領域での光電変換応答が確認され,目的とする近赤外光の高効率光電変換に関する知見が確実に蓄積できている.全体として,おおむね順調に研究が進展している.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に合成した新規分子の電子・電気物性評価と光電変換特性評価をより詳細に進める.また,量子化学計算により,近赤外光吸収から電荷キャリア生成に至るプロセスの効率と分子構造との相関について検討する.
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