研究課題/領域番号 |
21K05219
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35030:有機機能材料関連
|
研究機関 | 奈良工業高等専門学校 |
研究代表者 |
宇田 亮子 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 教授 (90321463)
|
研究分担者 |
林 啓太 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 准教授 (10710783)
岩崎 智之 愛媛大学, 学術支援センター, 助教 (50808847)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | リポソーム / トリフェニルメタン / がん細胞 / 標的化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、リン脂質から成る大きさ100nmほどの小胞体であるリポソームに、pHによって細胞毒性が変化するトリフェニルメタン分子を含有させたものを用いている。がん細胞周囲は弱酸性であり、その環境下ではトリフェニルメタン分子がリポソームから放出され、がん細胞を殺傷すると考えられる。また放出したトリフェニルメタン分子は、蛍光を発してがん細胞の検出を可能にすることが期待される。
|
研究実績の概要 |
がん細胞だけに的を絞り正常細胞へのダメージを抑えて副作用を軽減する薬物送達システムの開発は、我が国の喫緊の課題である。がん細胞特有の嫌気性解糖のために細胞の周囲環境は弱酸性(pH6.2~6.9)となっており、これを利用して正常細胞(pH7.4)には攻撃せずがん細胞を標的にする研究が盛んに行われている。本研究が目指すのは、一つの分子にpH応答性・細胞殺傷性・蛍光性の3つの機能を担わせ、リポソーム膜がつくる疎水性相互作用の場を利用することで、選択的がん細胞の死滅と検出を同時に行う新しい送達システムの創出である。ところでヒドロキシ基などの脱離基を有する中性分子のトリフェニルメタン誘導体は、低pH環境下でカチオンとなり高い細胞毒性と蛍光性を示す。そこで本研究では、この反応をリポソーム膜中で行いトリフェニルメチルカチオンを膜外に放出させることで、酸性環境のがん細胞の殺傷と同時検出が可能な新しい送達システムを提案することを目的としている。本研究では表面に葉酸リガンドを修飾させたトリフェニルメタン誘導体含有リポソームを作製した。リポソームが葉酸リガンドを持つことで、正常細胞への攻撃を抑えがん細胞へのリポソームの集積化が可能となる。このリポソームを昨年度のマウス大腸がん細胞に加えて、本年度はヒト子宮頸がん細胞(HeLa細胞)にも添加した。未修飾のリポソームに比べて葉酸リガンド修飾リポソームのHeLa細胞殺傷力は高いことが分かった。また共焦点レーザー顕微鏡によるリポソーム添加細胞の観察を行い、トリフェニルメタン誘導体由来の近赤外領域波長の蛍光を確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
葉酸リガンドを表面修飾したマラカイトグリーンカルビノール含有リポソームを作製した。このリポソームをColon 26細胞(マウス大腸がん)やHeLa細胞(ヒト子宮頸がん)に添加し細胞生存率を評価した。葉酸リガンド未修飾のリポソームに比べて細胞生存率が低いこと、また先に葉酸を添加して細胞表面の葉酸リガンドをキャップすれば、Colon26細胞、HeLa細胞ともに生存率が回復することから、がん細胞表面の葉酸レセプターとの相互作用により、本研究のリポソームの細胞へ導入が促進されたことが分かった。このように本研究の目的の1つである“がん細胞殺傷”のための結果を得ている。さらに共焦点レーザー顕微鏡によるリポソーム添加細胞の観察を行い、トリフェニルメタン誘導体由来の近赤外領域波長の蛍光を細胞核内で確認しており、もう1つの目的である“標的細胞検出“のためのデータを取得している。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の葉酸リガンド結合リポソームを用い、マウス大腸がん細胞やヒト子宮頸がん細胞を殺傷することに成功した。当初は更にイムノリポソームを作製してその効果を検証する予定であったが、昨今の試薬価格の高騰に伴い予算内で全ての計画を遂行することが難しい見通しとなった。そこで残りの予算を、もう1つの目的である”がん細胞検出”にフォーカスして研究を進める。イムノリポソームの結果はなくとも、本年度までに得た葉酸リガンドリポソームの結果によって、本研究の学術的意義は損なわれないと考えられる。具体的には、共焦点レーザー顕微鏡観察に加え、フローサイトメトリーやマイクロプレートリーダーを用いて細胞の蛍光性のデータを取得し、トリフェニルメタンを用いたがん細胞の検出限界を明らかにする予定である。
|