研究課題/領域番号 |
21K05227
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36010:無機物質および無機材料化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高津 浩 京都大学, 工学研究科, 講師 (60585602)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 磁気異方性 / 応力 / トポケミカル反応 / 高圧実験 / XAS / 巨大磁気異方 / EuVO2H |
研究開始時の研究の概要 |
従来、ユウロピウム化合物では磁気異方性が無いことが定説とされてきたが、我々が新しく開発した新物質のEuVO2Hではネオジム磁石に匹敵する巨大な磁気異方性をもつという、これまでの常識にはない新しい現象を発見した。本研究では、この発見を大きく拡張し、(1)EuVO2Hにおける新奇な磁気異方性のメカニズムの解明と、(2)巨大磁気異方性をもつユウロピウム化合物の探索拡大の2つの目標に挑戦する。我々独自のテーマで、「巨大磁気異方性をもったユウロピウム化合物」という新しい枠組みを開拓する。
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研究実績の概要 |
本年度は、研究対象物質の磁気異方性の起源解明に向けて以下の研究を推進した。 ① 本年度は、元素選択的/価数選択的に磁気異方性を示す元素を明らかにするために、キュリー温度TC以下でX線磁気円二色性(XMCD)実験を行った。実験は、放射光施設SPring-8 BL25SUにて実験を行った。その結果、強磁性はEu2+に起因するものであることを明白にできた。他の元素でもXMCD測定を行ったがそれらではシグナルは観測されなかった。また、X線の入射方向を0°と60°にかえて磁場掃引したときのXMCDは、磁化測定と同様、やはり垂直磁気異方性が実現していることが分かった。再現性も得た。これらの結果、ユウロピウム化合物には非常に珍しいことに巨大な磁気異方性が実現していることをX線吸収分光測定からも明白になった。得られた成果は論文にまとめ投稿した。
②研究対象の物質は、圧力や基板応力により、価数転移を示す。そこで、この起源を解明するためにユウロピウムサイトへの元素置換を行い、物性変化を調べた。本年度は粉末試料を用いた高圧下での格子定数の変化と価数変化を調べた。実験はKEKのBL-18CとSPring-8のBL39XUで行った。その結果、ユウロピウムサイトに微量にSrを置換している時、置換していない試料に比べてc軸方向の格子定数が大きく変化することが分かった。X線吸収分光測定によると、置換により価数転移する圧力が高圧側にシフトしていくこと、そして、置換していない試料に比べて価数変化が連続して起きていることがわかった。これらの結果、置換系に見られた格子定数の異常な圧縮現象は、ユウロピウムサイトの価数変化と関係しており、これが非磁性のSr置換によって誘発されていることが明らかになった。本成果は現在論文にまとめて投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
薄膜におけるXMCD測定から磁気異方性の起源となる元素を特定することに成功し、さらに磁気異方性も検出ることができたため、磁気異方性をしめすユウロピウム化合物という新しい観点を明白にすることができたため。また、非磁性元素置換により、当初予想していなかったような格子定数の異常圧縮などが見出すことができ、新たな研究展開につながりつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
① 2022年度までの研究を通じて、ユウロピウム化合物における磁気異方性と価数変化の相関が浮き彫りになった。2023年度は、これまでに得られた成果を理論と共に更に解釈すると共に、Eu2+とEu3+の価数変化やその分布状態を明らかにする。通常のX線回折実験ではこれらを明らかにすることは難しいため、例えば、蛍光X線をつかったホログラム像を取得してその価数分解解析を行い、局所的なEu2+とEu3+の分布などを明らかにする。そして、磁気異方性に影響を明確にする。
②ユウロピウムサイトへの非磁性元素置換が磁気異方性やキュリー温度TCの変化に与える影響を明確にする。具体的には、EuサイトにSrを置換し、その置換量の変化が磁性におよぶ巣影響を磁化測定から明らかにする。磁気異方性の変化を明らかにするために薄膜での実験を試みる。得られた結果は、2022年度に実施した置換試料の高圧下のX線回折実験やX線吸収分光測定の結果と照らし合わせて学会発表や論文の形にまとめ、社会に還元する。必要に応じて放射光施設のビームタイムなどを申請して研究を推進する。
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