研究課題/領域番号 |
21K05231
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36010:無機物質および無機材料化学関連
|
研究機関 | 大阪公立大学 (2022) 大阪府立大学 (2021) |
研究代表者 |
堀内 悠 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90611418)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | 多孔性金属錯体 / 多孔性配位高分子 / 可視光応答型光触媒 / 欠陥制御 / 水素製造 / 光触媒 / 水素生成 |
研究開始時の研究の概要 |
太陽光と水から水素を製造することが可能な光触媒水分解系の構築は、現在のエネルギー問題の解決策として有望視されている。有機-無機ハイブリッド骨格に基づくユニークな光機能性を実現する多孔性金属錯体(PCP)は光触媒開発における有望な材料候補であるが、実用化に資する高い反応効率を実現するに至っていない。本研究では、PCP光触媒の新規材料設計の観点から、光と熱の同時印加により配位子欠陥を導入する新規手法を確立するとともに、構築した欠陥サイトの反応性評価と同サイトへの選択的かつ高分散な助触媒複合化を通して、高効率太陽光水分解系を実現するPCP光触媒の開発を行う。
|
研究実績の概要 |
無尽蔵な太陽光エネルギーを水素エネルギーへと変換することが可能な、光触媒を利用する太陽光水分解系の構築は、現在のエネルギー問題の解決策として有望視されている。多孔性金属錯体(PCP)光触媒は、その有機-無機ハイブリッド骨格に基づくユニークな光機能性を基盤として、当該反応を促進できることが見出されてきたが、実用化に資する高い反応効率を実現するに至っていない。本申請課題では、PCPの骨格のフレキシブル性に着目し、熱印加によりアシストされる架橋性有機配位子の解離促進を通した、配位不飽和サイトの形成、物質拡散経路の拡大、およびその配位不飽和サイトへの位置選択的助触媒固定化を検討し、光触媒反応の高効率化を進めている。 2022年度は、Ti系PCP光触媒に対する新たな配位不飽和サイトの形成技術として、酸処理による配位子欠陥の制御を検討するとともに、生成した配位不飽和サイトへの各種遷移金属種による修飾の影響を評価した。その結果、塩酸処理を施すことにより、Ti系PCP光触媒への配位子欠陥の導入に成功するとともに、欠陥導入による光触媒水素生成活性の向上を実現した。また、各種遷移金属種による配位不飽和サイトの修飾においては、Zr種による修飾が有効であることを見出した。今後は、1、2年目で得られた知見を統合した、熱アシスト条件下での助触媒の固定化を行うことで、均一かつ効果的な反応サイトの創出を検討し、引き続き、熱アシスト効果を利用する助触媒担持のコンセプトの有効性の検証を行っていくとともに、最終的に、高効率PCP光触媒の開発の実現につなげる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、Ti系PCP光触媒に対する新たな配位不飽和サイトの形成技術として、酸処理による配位子欠陥の制御を検討するとともに、生成した配位不飽和サイトへの遷移金属種による修飾の影響を評価した。Tiクラスターと2-アミノテレフタル酸からなるTi系PCP光触媒、MIL-125-NH2(Ti)を合成し、酸処理による有機配位子の部分除去を検討した結果、塩酸を用いることで配位子脱離の進行が確認された。この際、処理溶液中の塩酸濃度の調整を通して、配位子脱離量、すなわちPCP光触媒中の配位子欠陥量の制御が可能であった。欠陥導入前のMIL-125-NH2(Ti)と比較して、最適量の欠陥を導入したMIL-125-NH2(Ti)では、およそ11倍の光触媒水素生成活性の向上が実現された。一方で、過剰に濃い塩酸濃度条件では、PCP骨格の崩壊に伴う活性低下が生じることが確認された。続いて、MIL-125-NH2(Ti)に対して、各種遷移金属塩化物を用いたTiクラスターの表面修飾を検討した。これは、処理中に発生する塩酸による欠陥生成と、生成した配位不飽和サイトへの金属種修飾の同時実現を期待した試みである。本処理においては、塩化ジルコニウムを用いた際に最大の光触媒水素生成活性が得られ、未処理のMIL-125-NH2(Ti)の20倍を超える光触媒活性が実現された。種々のキャラクタリゼーションの結果、Tiクラスターに表面修飾された遷移金属種が助触媒として電子トラップ効果を示し、プロトン還元に係る電子移動効率が向上したことが活性向上の要因であると示唆された。このように、PCP光触媒の欠陥制御を通した光触媒活性の向上効果に関する知見が蓄積されており、目標とするPCP光触媒開発が順調に進んでいると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
1年めの研究では、Ti系PCP光触媒に対する熱アシスト光触媒プロセスの基礎的な情報の収集と反応の高効率化を実現してきた。2年めは、Ti系PCP光触媒内の配位不飽和サイトの特性理解を深めるために、1年めとは異なる手法で配位子欠陥制御を試みるとともに、生成した配位不飽和サイトへの選択的な助触媒固定を検討した。いずれの検討を通しても、光触媒水素生成活性の向上につながる重要な知見を得ることができている。 最終年度となる3年目は、1、2年目で得られた知見を統合した、熱アシスト条件下での助触媒の固定化を行うことで、均一かつ効果的な反応サイトの創出を検討する。特に、加熱条件や助触媒種を様々に変化させ、最適化を検討する。得られた複合材料に対しては、TEM観察やXPS、XFAS測定等の各種キャラクタリゼーション技術を駆使して、助触媒の固定化状態の評価を行うとともに、光触媒水素生成反応などの有用光触媒反応に適用し、PCP光触媒の構造と光触媒反応性との相関の明らかにする。以上の検討を通して、高効率PCP光触媒の開発の実現を目指す。
|