研究課題/領域番号 |
21K05253
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
|
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
宇井 幸一 岩手大学, 理工学部, 准教授 (60360161)
|
研究分担者 |
竹口 竜弥 岩手大学, 理工学部, 教授 (30227011)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
|
キーワード | リチウム-空気二次電池 / 電解質 / 空気極 / イオン液体 / ケッチェンブラック / 電気化学インピーダンス / カーボンナノチューブ / リチウム・空気二次電池 / 放充電反応 |
研究開始時の研究の概要 |
リチウム・空気二次電池(LABs)のエネルギー密度はリチウムイオン電池を大きく上回るので、次世代二次電池として期待されている。しかしながら、電解質の揮発や反応中間体の超酸化物による電解質分解など、主に電解質に多くの問題を抱えている。そこで本研究では、未だに実用化されていないLABsの問題である短い寿命(サイクル特性)を解決するため、電解質に難揮発性の室温イオン液体を選択して、正極である炭素系空気極との界面設計に関する基礎的知見を得ることを目的とする。特に、放電反応の際、空気極に生成する析出物を解析し、放充電反応を解明することで、室温イオン液体の構造と空気極のサイクル特性の関係を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
本年度は電解質/空気極の界面設計に関する基礎的知見を得るため、空気極にケッチェンブラックを、電解質にアミド系イオン液体(IL)を用いたリチウム-空気二次電池(LABs)を作製し、以下の2つの項目を実施した。 まず、電解質に室温域で液体である環式脂肪族カチオンとビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(TFSA)アニオンから成るILを用いたLABsを作製し、電解質の種類(有機溶媒系, IL系)がLABsの電気化学的特性と空気極の界面挙動に及ぼす影響を検討した。有機溶媒系と比べて、IL系の1サイクル目の放充電容量およびエネルギー効率は高かった。電気化学インピーダンス測定(EIS)を実施し、1サイクル目の充電後のナイキストプロットを得たところ、有機溶媒系の界面抵抗と比べ、IL系は低かった。これにより、IL系で生成される副生成物は充電による残存が少ないため、有機溶媒系よりも低い界面抵抗を維持できる可能性が示唆された。以上より、IL系では放電中に生成されたIL由来の副生成物は充電により効率的に分解されることで、良好な電池特性を示すと考えられる。 次に、TFSAアニオンから成るILと比べ、低粘性率を示すビス(フルオロスルホニル)アミド(FSA)アニオンから成るILに展開して、電解質の種類(有機溶媒系, IL系)がLABsの空気極の界面挙動と放電生成物の関係を検討した。EISを実施し、1サイクル目の放電後のナイキストプロットを得たところ、有機溶媒系の界面抵抗と比べ、IL系は低かった。FE-SEM/EDXより、FSAアニオンの還元により、酸素、フッ素、硫黄を含む副生成物が均一に堆積している可能性が示唆された。以上より、FSAアニオンを有するILにおいても、アニオン由来の副生成物が空気極の表面を覆うが、電解質/空気極の界面抵抗が低いことから、LABs用電解質として適用できる可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は空気極にケッチェンブラックを、電解質に環式脂肪族カチオンとTFSAアニオンもしくはFSAアニオンから成るILの中から、リチウム金属への耐還元性に優れ、室温域以下で融点を有するものを選択し、当初の計画のとおり、以下の3項目を実施した。 1) FE-SEM/EDX、XPSなどを用い、放電中に空気極表面に生成する析出物(主生成物のLi2O2、副生成物など)の状態・成分を分析した。 2) EISなどの電気化学的手法を用い、室温IL電解質/空気極の界面挙動を測定し、放充電反応に伴うパラメーター(電荷移動抵抗、電気二重層容量、Li+イオンの拡散抵抗など)を解析した。 3) 上記1)と2)を合わせて、「室温ILの構造が空気極の寿命に影響を及ぼす要因」を考察し、析出物が堆積(目詰まり)しない空気極設計に関する基礎的知見を得た。 上記3項目に加え、先行研究におけるTFSAアニオンから成るIL電解質と同様に、FSAアニオンから成るIL電解質においても電解質/空気極の界面抵抗が有機溶媒系より低いこと示したから、電解質にアミド系ILを適用する優位性が得られた。以上より、空気極表面の析出物の状態・成分を解析することで、「室温ILの構造と空気極の寿命との関係」を考察し、さらにはLABsの高性能化に向けて基礎的知見を得たことから、概ね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
令和4年度は概ね順調に進展したので、当初の研究実施計画を実施していく。令和5年度は令和4年度までに得られた結果を基にして、他の脂肪族カチオン(環式・非環式など)、TFSAアニオンもしくはFSAアニオンから成るアミド系ILに展開して、上記「現在までの進捗状況」に記した1~3)の項目を実施する。 上記1)と2)を合わせて、「室温ILの構造が空気極の寿命に影響を及ぼす要因」を考察し、析出物が堆積(目詰まり)しない空気極の界面設計を得て、LABsの高性能化を導く。 また、得られた結果を取りまとめ、研究成果を国内外への発表を積極的に試みる。
|