研究課題/領域番号 |
21K05270
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37010:生体関連化学
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤野 公茂 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (00772378)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 無細胞翻訳系 / キメラtRNA / 改変遺伝暗号 / tRNA / 遺伝暗号 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者は、先行研究において、アミノ酸入れ替え遺伝暗号を持つ試験管内タンパク質合成系を提案した。この系は、通常の生物の持つ遺伝暗号と異なるため、万が一、組み換え遺伝子が外部に漏洩しても、実害を及ぼさないという利点がある。一方、タンパク質合成量が、通常の系の10分の1程度と低いという問題もあった。そこで、本研究では、使用するtRNAの大部分を大腸菌から抽出した天然tRNAに置き換えることで、タンパク質合成活性の高いアミノ酸入れ替え遺伝暗号の構築を目指す。本系が確立すれば、危険な遺伝子を用いずに、研究対象となるタンパク質のみを得る有用な方法となることが期待される。
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研究実績の概要 |
申請者が先行研究で提案したアミノ酸入れ替え(AS)遺伝暗号は、Ser, Leuコドンの交換により、普遍遺伝暗号との直交性を確立している。この系は、試験管内翻訳系により、危険な遺伝子を用いず研究対象のタンパク質のみを得る手段として有用である。しかし、AS遺伝暗号を持つ翻訳系は、タンパク質合成量が、通常の系の10分の1程度と低いという問題があった。これは、用いたtRNAが転写後修飾を持たず、必要最小限の21種類しか用意していないことが原因であると考えられる。そこで、本研究では、『大腸菌抽出の内在tRNAと、試験管内転写tRNAを組み合わせることにより、翻訳合成活性の高いアミノ酸入れ替え遺伝暗号を構築すること』を目指した。 初年度である2021年には、変性PAGEを用いることで、内在tRNAからSer, LeuのtRNAのみを選択的に除去する方法を考案した。ここに、試験管内転写により合成した2種類のキメラtRNAを添加することで、内在・転写ハイブリッドtRNAを構築することに成功した。このハイブリッドtRNAを用いることで、ペプチドとタンパク質のアミノ酸入れ替え翻訳合成が可能であることも示した。 2022年度の取り組みでは、アミノ酸入れ替え翻訳系で利用可能なコドンの拡大を目指して研究を進めた。前年度の段階で構築した翻訳系は、Ser, Leuに対応するtRNAが各1種類であるため、利用可能なコドンの数が、理論上の最大で64個中54個であった。そこで、Ser, Leuに対応するキメラtRNAをさらに追加し、利用可能なコドンを61個まで拡張することを目指した。利用可能なコドンが増えることで、遺伝子の設計時におけるコドン選択の自由度が上がり、遺伝子から翻訳合成によって得られる研究対象となるタンパク質収量の増加が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画は、次の4段階から成っている。(1) 内在・転写ハイブリッドtRNAの調製、(2) 内在・転写ハイブリッドtRNAを用いた無細胞翻訳系の構築、(3) 内在・転写tRNAハイブリッドAS-mini遺伝暗号の構築、(4) 内在・転写tRNAハイブリッドAS-full遺伝暗号の構築、である。 申請の段階では、初年度である2021年度に(1), (2)を行い、2022年度以降に (3), (4)を行うこととしていたが、実際には、1年目に(1), (2), (3)までが達成された。2年目である本年は、(4)に取り組んでいる。 (3)と(4)の違いは、AS-mini遺伝暗号では、Ser, Leuに対応するコドンが1つしか使用できないのに対し、AS-full遺伝暗号では全種類を使用できることである。そのため、AS-mini遺伝暗号で使用していなかった5種類のSer, Leuコドンに対し、これを読み取り可能なキメラtRNAを新たに設計し、翻訳系の構築を試みた。しかし、AS-mini遺伝暗号で使用していたtRNAボディに対し、アンチコドンを交換するアプローチではキメラtRNAの活性が得られなかったため、現在は、Ser, Leuに対応する他のtRNAボディの配列についても、キメラtRNAの作製を検討している状況である。 2年目の本来の目標(3)までは達成している状況のため、概ね順調に進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画は、次の4段階から成っている。(1) 内在・転写ハイブリッドtRNAの調製、(2) 内在・転写ハイブリッドtRNAを用いた無細胞翻訳系の構築、(3) 内在・転写tRNAハイブリッドAS-mini遺伝暗号の構築、(4) 内在・転写tRNAハイブリッドAS-full遺伝暗号の構築、である。 2022年度に(1), (2), (3)までを達成しており、(4)について進行中である。現在までに構築することができた内在・転写tRNAハイブリッド無細胞翻訳系は、SerとLeuに対応する最小限の2種類の試験管内転写tRNAと、内在tRNAを合わせたものであった。これにより、理論上使用可能なコドンは、64個のうち54個となっており、従来の系の36個から拡大させることに成功した。(4) 内在・転写tRNAハイブリッドAS-full遺伝暗号の構築では、さらにSerとLeuに対応するキメラtRNAを設計し、追加することで、最大61個のコドンを使用可能にすることを試みている。 ただし、実際の取り組みの過程で、これまで用いてきたSer, Leuに対応するtRNAのボディ配列では、活性のあるキメラtRNAの作製が困難であることも新たに判明したため、今後は別のtRNAボディを利用したキメラtRNAの設計についても検討する予定である。 この方法により、利用可能なコドンがさらに増えることで、タンパク質をコードするmRNAのコドンの最適化が可能になり、タンパク質の合成量のさらなる増加が期待できる。
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