研究課題/領域番号 |
21K05283
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37010:生体関連化学
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
高橋 俊太郎 甲南大学, 先端生命工学研究所, 准教授 (40456257)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | グアニン四重鎖 / i-motif / 熱力学 / 遺伝子複製 / 分子クラウディング / ミトコンドリア / リガンド / 分子クラウディング環境 / DNA / 分子環境 / 核酸構造 |
研究開始時の研究の概要 |
ミトコンドリアはアデノシン三リン酸(ATP)などの高エネルギー分子を生産する重要な細胞小器官である。近年、細胞内外の環境変化がミトコンドリアDNA(mtDNA)の変異を誘発し、細胞内の代謝異常を生じることで、癌や糖尿病などの生活習慣病が引き起こされることが明らかになってきた。本研究では、四重鎖構造の安定性やトポロジーがmtDNAの複製反応に及ぼす影響を定量解析することで、ミトコンドリア内環境依存的なmtDNA変異発生のメカニズムの解明とその化学的制御を目指す。mtDNAの変異発生を定量的に理解することで、生活習慣病のリスク診断技術や、mtDNAの四重鎖形成を制御する治療薬の開発などの新しい医工学の展開が期待できる。
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研究実績の概要 |
本研究では、四重鎖構造の安定性やトポロジーがヒトのミトコンドリアDNAの複製反応に及ぼす影響を定量解析することで、ミトコンドリア内環境依存的なミトコンドリアDNA変異発生のメカニズムの解明とその化学的制御を目指す。令和4年度は、前年度に引き続き、ミトコンドリア内の分子クラウディング環境を計測するための核酸プローブの開発を進めた。プローブのコアとしてとしてG四重鎖構造を用いるために、G四重鎖構造の分子クラウディング環境下での挙動を定量的に解析した。圧力変化による体積値測定と分子動力学計算を用いることで、G四重鎖構造の配列に依存して変化する周囲の水和水の定量化に成功した(Anal. Chem. 94, 7400 (2022))。それにより、溶液中の水の活量変化を核酸プローブで測定するための基礎的データを収集することができた。各四重鎖構造をコアとした核酸プローブを調製し、溶液中の水の活量変化と排除体積効果を定量的に解析できることをin vitroの実験系で確認し、現在は細胞内での解析を進めている。 また、DNA複製反応制御の検討を進める過程で、本研究のアプローチが様々な核酸複製反応の制御法開発に活用できるという予期していなかった結果を見いだした。その一例として、新型コロナウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼの反応を、細胞内のG四重鎖構造を形成するRNAでRNA複製が阻害できることを発表した(Chem. Commun., 59, 872 (2023))。さらに、高温にすることで低下する複製反応の効率を、圧力を上げることでその低下を抑制できることを明らかにした(Biophys. Chem. 292, 106914 (2023)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は前年度に引き続き、ミトコンドリア内環境を計測するためのプローブ設計のための基礎データを収集し、論文発表するなど、順調に成果を上げることができた。プローブのコアとなるとしてi-motifやG四重鎖構造を組み合わせて用いることで、溶液中の水の活量や排除体積効果を定量的に導くことができるようになった。一方で、細胞内での活用において、細胞内タンパク質等の結合やプローブの分解などの問題が生じており、現在分子設計の検討を進めている。一方、DNA複製反応の解析を進める過程において、確立した方法論が様々な複製反応の制御法の開発に活用できるという当初予期していなかった研究展開が得られた。特に新型コロナウイルスのRNA複製阻害に関する研究成果は、今後出現が予期される変異株や新規のウイルスに対する特効薬としての展開だけでなく、ミトコンドリアを含む、細胞内のDNA複製反応の制御に関しても広く一般的に展開できる成果である。以上の経緯から、研究全体としてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、核酸プローブの改良を行い、ミトコンドリア内の溶液環境を測定する手法を確立させる。ミトコンドリア内環境と同等の水の活量と排除体積効果を有するミトコンドリア擬似環境を、分子量の異なるポリエチレングリコール等を用いて調整することで、ミトコンドリア擬似環境中で四重鎖を形成したミトコンドリアDNAの複製反応速度を定量的に解析する。それにより、ミトコンドリア内環境変化に依存してミトコンドリアDNAの変異を誘導する可能性のある四重鎖構造を安定性変化とその複製効率で定量的に分類化する。健常細胞とがん細胞のDNAを解析し、それらについて、(1)ミトコンドリア内環境、(2)ミトコンドリアDNAの変異、(3)核内DNAのメチル化を解析し、がん細胞のような後天的疾患の発症とミトコンドリアDNAの四重鎖構造形成の相関を検討する。
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