研究課題/領域番号 |
21K05286
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37020:生物分子化学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 寛晃 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (20758205)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 化合物ライブラリー / 天然物有機化学 / 固相合成 / 構造活性相関 / 全合成 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、FoF1-ATP合成酵素を標的とする天然物の精密な構造制御とこれに基づく新機能創製を目的とする。固相合成法を応用した天然物類縁体ライブラリーの構築と、生物機能評価ならびに構造決定により、構造活性相関情報の取得と新規機能制御分子の創出を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、ミトコンドリアに存在するFoF1-ATP合成酵素に対して作用する天然物を基盤とした新機能創成を目的とする。構造基盤とする天然物としては、FoF1-ATP合成酵素に結合し、ATP合成を阻害することが知られているエフラペプチンCを選択した。本ペプチド系天然物の効率的な固相全合成法の確立と、固相合成を活用した構造多様化戦略に基づき、エフラペプチンC類縁体群の構築と生物活性評価を実現することで、新規機能分子を創出することを目指す。 今期は、前年度までに確立している天然物エフラペプチンCの固相合成法を応用し、複数の新規エフラペプチンC類縁体の合成を達成した。2-アミノイソ酪酸残基やピペコリン酸残基、特徴的なC末端構造を配列内に含む各類縁体は、天然物エフラペプチンCの固相合成と同様の担体や縮合条件を採用することで、効率的に構築することが可能であった。さらに、合成した新規類縁体群の統一的な生物活性評価を実施した。その結果、得られたエフラペプチンC類縁体群から、天然物よりも優れたがん細胞増殖抑制活性を示す化合物を見出した。 また、β,β-ジアルキルα,β-不飽和アミノ酸残基を複数含有する複雑ペプチド系天然物ヤクアミドB、環状抗菌ペプチド系天然物であるライソシンEおよびWAP-8294A2の部分構造を改変した類縁体群の合成および生体分子との相互作用解析を実施し、新たな知見を得た。さらに、金属イオンとの相互作用能を有するペプチド系天然物ロイヒケリンCの固相合成法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題を遂行する中で、次のような重要な進展があった。 (1)前年度に確立したエフラペプチンCの固相合成法を応用することで、複数の新規類縁体の合成を達成した。また、得られた類縁体群の統一的な生物活性評価を実現し、天然物よりも優れたがん細胞増殖抑制活性を示す新規類縁体の創出に初めて成功した。 (2)がん細胞増殖抑制活性を示す複雑ペプチド系天然物ヤクアミドBの結合タンパク質との相互作用を、ヤクアミドBの人工類縁体を利用して調査し、生細胞内での挙動等を明らかにした。また、本天然物の類縁体ライブラリーの構築と評価により、天然物と同等の生物活性を示す新規分子を見出した。 (3)細菌の呼吸鎖複合体の補酵素に相互作用して抗菌活性を示すライソシンEおよびWAP-8294A2について、標的分子との結合に対して重要な役割を担う残基を置換し、天然物よりも優れた安定性を示す人工類縁体を創出した。 (4)複数の非タンパク質構成アミノ酸を含有し、金属イオンと相互作用するペプチド系天然物ロイヒケリンCの固相合成法を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに合成したエフラペプチンC類縁体群について、FoF1-ATP合成酵素に対する作用を中心に詳細な解析を実施する。天然物よりも生物活性が向上した類縁体と、その他の類縁体の作用を比較し、新たな構造活性相関情報を得る。 また、前年度に引き続き、エフラペプチンCと同様に酸化的リン酸化を阻害するペプチド系天然物に関する機能研究を推進する。具体的には、ヤクアミドBの結合タンパク質との親和性や相互作用様式、ヤクアミドB類縁体の生物活性などを詳細に解析することで知見を蓄積し、統合することで、本研究課題を推進する。
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