研究課題/領域番号 |
21K05307
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37030:ケミカルバイオロジー関連
|
研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
小堀 哲生 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 教授 (00397605)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 架橋性核酸 / ジアジリン / RNaseH / 核酸医薬 / エクソソーム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究において我々は、新しい分子標的薬の母核として共有結合で架橋された核酸-RNA分解酵素複合体を提案する。また、核酸-RNA分解酵素複合体の細胞送達キャリアーとして、核酸-RNA分解酵素複合体を内包するエクソソーム(Antisense-Nuclease Capsulated Exosome : ANCsome)を新たに開発する。
|
研究実績の概要 |
正常細胞とがん細胞の“分子レベルの違い”を利用して効果を発揮する医薬品として、生体分子を基本骨格にもつ分子標的薬が開発されている。そのなかでも核酸を基本骨格にもつアンチセンス核酸(ASO)は、①化学合成可能であるため大量供給と製品の質の確保が容易である、②塩基配列を選定するだけで論理的に薬剤デザインが可能である、③セントラルドグマ中の翻訳過程を停止できるため、あらゆる疾患原因タンパクの生成を選択的に制御可能である、という3つの大きな特徴を持つことから、分子標的薬の有望株として日米欧の製薬会社やベンチャー企業から高い注目を集めている。しかしながら、ASOは細胞膜透過性がほとんどないため、「細胞内取り込み効率が極めて悪い」という問題と、「標的mRNAの切断に核酸分解酵素(RNaseH)の活性を必要とするため、RNaseH低発現細胞中ではほとんど活性を示さない」という2つの問題を抱えている。そこで我々は、どのような細胞においても効率的にmRNA-RNaseH-ASO三元複合体を形成させるために、共有結合で架橋されたASO-RNaseH複合体の作製ならびに、作製した複合体の活性評価を実施した。昨年度は、以下に示す2項目について検討した。 ①光反応部位と糖環とをつなぐリンカー長を変化させた誘導体を開発することにより、2’位に導入された光反応部位の自由度が架橋反応に与える影響を評価した。 ②光反応部位が5’位に導入された架橋性核酸の開発、ならびに分子夾雑系において、核酸結合性タンパク質と光架橋生核酸との反応効率を評価した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、当研究室では光架橋性ヌクレオシド2’-diazirine-conjugated adenosine(DA), 2’-diazirine-conjugated cytosine (DC)を開発している。DA, DCを導入したオリゴDNAと相補鎖核酸との架橋特性を評価した結果、ジアジリン残基が導入された核酸はDNAとのみ反応し、RNAとは反応しないことが明らかとなった。 昨年度は、①標的RNAとの架橋効率の向上を目指し、光反応部位と糖環とをつなぐリンカー長を変化させた誘導体を開発した。まず、短鎖核酸に導入された2’プロパルギルヌクレオシドにクリック反応を利用してアルキル鎖長の異なるジアジリン誘導体を反応させることで、ジアジリン修飾核酸を化学合成したのち、その反応性を評価した。その結果、RNaseHの標的切断部位近傍にジアジリン誘導体を導入すると、RNaseHの活性を2倍程度上昇させることを見出した。 また、②ジアジリン誘導体を5’位に導入した光応答性核酸についても化学合成と活性評価を実施した結果、本誘導体についてはテロメラーゼの活性を効率的に阻害可能であることを見出した。本実験系で利用されているTRAPアッセイでは、様々な細胞成分を含んだがん細胞抽出液を利用していることから、得られた結果は、生体分子夾雑系においてもジアジリン誘導体が、標的タンパク-RNA複合体を選択的に認識し、活性制御できることを示唆している。また、テロメラーゼは、ガン細胞に特異的に発現しているDNAポリメラーゼで、抗がん剤の標的酵素である。そのため、5’位にジアジリン誘導体が導入された光応答性核酸は、ガンを標的とした核酸医薬品の候補として非常に有望であると考えられる。 以上の成果が得られているため、昨年度の進捗状況はおおむね計画通りに進行していると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度までの結果を受け、今年度以降は、以下に示す研究(実施項目Ⅰ、実施項目Ⅱ)を推進する予定である。 実施項目Ⅰ:Antisense-Nuclease Capsulated Exosome(ANCsome)の構築 エクソソームを特定タンパク質のデリバリーに利用する際には、エクソソーム産生細胞と受容細胞の組み合わせが鍵となることが報告されている。とくに、がん組織へ選択的に薬剤をデリバリーする際には、樹状細胞や間葉系幹細胞からえられるエクソソームが有効であることが報告されている。また、特定のタンパク質をエクソソームに内包する技術として、膜結合性タンパク(CD63,lactadherin,Lamp2c等)と特定タンパク質の融合タンパクを利用する手法が報告されている。そこで本年度は、ASO-RNaseH複合体を含有するエクソソームの開発について検討する。 実施項目Ⅱ:テロメラーゼを標的とした共有結合で架橋されたASO-RNaseH複合体の構築 RNA-タンパク複合体であるテロメラーゼの活性を阻害する光応答性核酸の開発を継続して実施する。昨年度までの検討結果から、糖部5’位に光応答反応を誘起するジアジリン残基を導入した光応答性ASOが、活性の高いASO-RNaseH複合体の形成に有効であることが明らかとなっているため、今年度は、①光応答性残基が導入された2’OMe型ASOの開発と、②光反応性残基の反応性の向上、の二項目を実施することで活性の高いテロメラーゼ阻害剤の開発を行う。
|