研究課題/領域番号 |
21K05311
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37030:ケミカルバイオロジー関連
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
和泉 雅之 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (80332641)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | タンパク質化学合成 / δ-セレノリシン / ユビキチン / 環状セレノエステル / ジセレニド結合 / 化学選択的縮合反応 / セレン / リシン |
研究開始時の研究の概要 |
タンパク質中のリシン側鎖アミノ基のユビキチン化は、不要タンパク質の分解、DNA修復、炎症、アポトーシスなど多彩な生理活性に関わっており、がん化や神経変性疾患の原因ともなることから、その機能解明のプローブとなるユビキチン化タンパク質プローブの精密化学合成研究が盛んに行われている。本研究では、研究代表者が独自に開発しているδ-セレノリシンを用いたユビキチン化反応を発展させ、ユビキチン側をセレノエステルとすることでセレン同士の化学選択的な縮合反応を開発し、効率的なユビキチン化タンパク質の合成法を確立する。
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研究実績の概要 |
タンパク質のユビキチン修飾は、不要タンパク質の分解、DNA修復、炎症、アポトーシスなど多彩な生命現象に関わっており、がんや神経変性疾患の原因ともなることからユビキチン化の機能解明が求められている。そのため、プローブとなるユビキチン修飾タンパク質の合成法が盛んに研究されている。タンパク質には反応点となるカルボキシ基とアミノ基が多数存在するため、プローブを短工程で効率的に合成するためには選択的縮合反応の開発が必要である。我々は、化学選択的なユビキチン化反応として、Brikらが開発したδ-メルカプトリシンを介したイソペプチドケミカルライゲーション法を応用し、δ-メルカプトリシンの硫黄原子をセレン原子に置換したδ-セレノリシンを介したユビキチン-チオエステルとの連結反応であるセレノイソペプチドケミカルライゲーション法を開発した。本研究ではその連結反応を発展させ、δ-セレノリシンとユビキチン-セレノエステルを利用する、セレン同士の化学選択的縮合反応を開発している。昨年度は、側鎖保護基の異なるδ-メルカプトリシン誘導体の合成法と環状ペプチドセレノエステルの合成法を検討した。本年度は、セレノイソペプチドケミカルライゲーション法について副反応とそれを回避するための方法について論文発表を行った。また、セレン同士の化学選択的な連結反応の反応条件を検討し、ジスルフィド結合をジセレニド結合に置換したタンパク質PhoSLアナログの化学合成へと応用した。さらに、環状セレノエステルの簡便な合成法へとつながるセレノエステルを経由する環状チオエステルのワンポット合成法を確立し、それらの研究成果について4件の学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、不要タンパク質の分解など多彩な生命現象に関わっているタンパク質のユビキチン化の機能解明のためのプローブとなるユビキチン修飾タンパク質の効率的な合成法の開発である。タンパク質には反応点となるカルボキシ基とアミノ基が多数存在するため、プローブの短工程で効率的な合成には選択的縮合反応の開発が必要である。我々は、セレンの高い反応性に着目し、Brikらの報告しているδ-メルカプトリシンの硫黄原子をセレン原子に置換したδ-セレノリシンを介したユビキチン-チオエステルとの連結反応を新たに開発した。本研究ではその反応を発展させ、環状ユビキチンセレノエステルを利用することで、δ-セレノリシンを導入したタンパク質とのセレン同士の化学選択的縮合反応を開発している。設定した3つの課題の進行状況:課題1では、δ-セレノリシン含有ペプチドの合成とその注意点およびδ-セレノリシンを介した連結反応について論文発表を行った。課題2では、40残基のタンパク質PhoSLをモデルとして、セレノシステインを含むペプチドヒドラジドをセレノエステルに変換すると自発的にセレノラクトンが形成されることを見出した。また、同様にシステインを含むペプチドヒドラジドも、セレノエステルへの変換反応で自発的にチオラクトンが形成されることも見出した。課題3では、環状ペプチドセレノエステルとN末端にセレノシステインを有するペプチドの連結反応の条件を確立した。また、ペプチドセレノエステルとセレノシステインを有するペプチドとの連結反応におけるC末端アミノ酸の違いや添加剤の違いによる副反応の進行の違いについてのノウハウを得て、ジセレニド結合を有するPhoSLアナログの化学合成に成功した。以上の成果から、進捗状況をおおむね順調と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
我々は、セレンの高い反応性に着目し、Brikらの報告しているδ-メルカプトリシンの硫黄原子をセレン原子に置換したδ-セレノリシンを介したユビキチン-α-チオエステルとの連結反応を新たに開発した。本研究では、この連結反応を発展させてより効率的なユビキチン修飾タンパク質の合成法とするため、環状ユビキチンセレノエステルとδ-セレノリシンを導入したタンパク質とのセレン同士の親和性を利用した化学選択的縮合反応の開発を進めている。現在の進捗状況は、設定した3つの課題のうち、課題1では、δ-セレノリシン含有ペプチドの合成とδ-セレノリシンを介した連結反応について論文発表を行い、今後はこの方法をユビキチン修飾糖タンパク質の合成へと応用する。課題2では、40残基のタンパク質PhoSLをモデルとして、セレノシステインまたはシステインを含むペプチドヒドラジドをセレノエステルに変換すると自発的にセレノラクトンまたはチオラクトンが形成されることを見出した。今後は、これらの知見をもとに、セレノシステインを介した連結法を利用してセレノシステイン含有ユビキチン-α-ヒドラジドを合成し、環状ユビキチンセレノエステルへの変換を検討する。課題3では、これまでの研究で環状ペプチドセレノエステルとN末端にセレノシステインを有するペプチドの連結反応の条件を確立し副反応に関するノウハウを得ている。今後は、そレラの知見を元に76残基の長鎖の環状ユビキチンセレノエステルとδ-セレノリシンを導入したタンパク質との化学選択的縮合反応の開発へとつなげていく予定である。
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