研究課題/領域番号 |
21K05318
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37030:ケミカルバイオロジー関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
下畑 宣行 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 准教授 (30419709)
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研究分担者 |
北條 宏徳 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (80788422)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 骨軟骨分化 / 変形性関節症 / ケミカルバイオロジー / ミトコンドリア / 軟骨 / 骨 |
研究開始時の研究の概要 |
本邦において多くの患者が報告されている変形性膝関節症(Osteoarthritis, OA) は、耐え難い疼痛や運動障害をもたらすなど患者のQOLを大きく損なう。その治療は重要な課題であるが、軟骨組織を再生する根本的な治療法は今までに開発されていなかった。低分子化合物TD-198946 (TD) は軟骨分化を促進する一方、詳細なメカニズムは不明であった。我々はTDの分子機序を解析することで着想した新たなスクリーニング系を利用し、OAの創薬研究を実施することを計画している。同時に、TDの詳細な分子機序を解明することでOAの病態解明の分子的基盤を供することを目的としている。
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研究実績の概要 |
我々は、ミトコンドリア内膜タンパク質Prohibitin (PHB) ・PHB2と軟骨分化の関連について着目し、この知見をもとにした新たな変形性関節症治療薬の同定を計画している。本年度において、下記3件に関して解析結果を得た。 1.変形性関節症は、永久軟骨における肥大分化の進行という正常な軟骨分化プロセスからの逸脱が疾患発症に影響を及ぼしている。我々は変形性関節症の創薬に関する知見を得るために、近年注目されている、細胞の生理機能に重要であるタンパク質合成初期の代謝過程に着目した。タンパク質の合成初期にmRNAの情報を基に翻訳が自律的に停止することが知られており、この作用がタンパク質の合成速度調節や局在変化などに重要な役割を果たすと考えられている。我々は、この自律的な翻訳停止を網羅的に取得・同定する手法を開発し、間葉系幹細胞から軟骨分化といった分化の進行の程度によって、新生ポリペプチド鎖のプロテオームプロファイルに顕著な差異が生じることを見出した。これらの結果は、このような翻訳の自律停止と分化過程が相互に影響を与えあっている可能性を示唆している。今年度はこれらの結果を論文として報告した。 2.PHBリガンドがPHB・PHB2を介して、軟骨分化にどのような役割を果たしているのか詳細に解析するために、マウス中手骨から作製した器官培養系を用いた。その結果、いくつかのPHB・PHB2リガンドが、骨全体の成長に大きな影響を与えることなく軟骨の肥大分化もしくは石灰化を有意に抑制することが明らかになった。 3.前年度に引き続き、新規変形性関節症治療薬を網羅的に同定するスクリーニング系を構築するためのPHB・PHB2とリガンドとの相互作用解析を進めている。本年度においては、PHB・PHB2とリガンドとの結合定数を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度において、新たな視点から軟骨分化過程をモニターするシステムを構築した。またこれらの系を用いて変形性関節症治療薬スクリーニングに関する新たな知見を得た。この系は、今後新たな変形性関節症治療薬の創薬ターゲットを同定するためのツールとしても利用可能だと考えている。 様々な低分子化合物の軟骨分化への効果を確認し、実際に創薬ターゲットとしての有用性を確認した。各低分子化合物において、軟骨分化への影響の程度は一様ではなく、結合部位もしくは結合活性はそれぞれリガンドごとによって異なり、効果が変動する可能性が考えられた。また、PHB・PHB2と低分子化合物との結合定数を決定し、スクリーニング時の薬剤濃度を推定する手がかりを得た。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた知見を用いて新規変形性関節症治療薬の探索をより効率よく進めることが可能となった。各低分子化合物において、軟骨分化への効果の程度は一様ではなく、結合部位もしくは結合活性の影響によって効果が変動する可能性あり、この特性は創薬スクリーニングを実施する上で非常に重要な知見となると考えられる。更に、実際にPHB・PHB 2とリガンドとの相互作用を結合定数の同定も含めて確認しており、PHB・PHB2の薬剤標的としての有用性も実証することができた。 今後、創薬スクリーニングを進めるとともに、より詳細にPHB・PHB2と複数のリガンドとの相互作用を、結合部位なども含めて解析していく予定である。加えて、PHB・PHB2の軟骨分化に及ぼす生理的機能に関しても詳細に解析していくことを考えている。PHB・PHB2のミトコンドリア外への局在化メカニズムやシグナル伝達経路への関与に関して、分化状態の変動に着目した、器官培養系を用いた組織学的解析を実施することを計画している。
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