研究課題
基盤研究(C)
水田土壌中の鉄の酸化還元反応は、土壌中の物質代謝に大きく影響する重要な反応であるが、これまで鉄酸化反応については非生物的な反応が主体と考えられてきた。しかし、近年、Gallionellaceae科の微好気性鉄酸化細菌(以下、鉄酸化細菌)が土壌中の鉄酸化反応に深く関わることが明らかにされた。本研究では、鉄酸化細菌株の鉄酸化活性と水田土壌中での鉄酸化反応に伴う鉄酸化細菌数の変化から、土壌中での鉄酸化ポテンシャルを評価する。また、酸化された鉄と一緒に共沈した細胞などの易分解性有機物が、水田土壌の可給態窒素源の一部を担う可能性を探る。以上より水田土壌中での鉄酸化細菌の潜在的な役割を明らかにする。
本研究では水田より分離したGallionellaceae科微好気性鉄酸化細菌の鉄酸化活性を測定するとともに、水田土壌落水時のGallionellaceae科微好気性鉄酸化細菌群集の動態を解析し、土壌中の微好気性鉄酸化細菌の鉄酸化ポテンシャルを推定した。土壌培養実験により、Gallionellaceae科鉄酸化細菌群集は土壌に酸素がわずかに入るようになった落水後の初期の鉄酸化反応に関わると推察され、短期間で著しく増殖することが明らかになった。また、そのときの鉄酸化ポテンシャルは乾土1gあたり最大0.03mg Fe(II)で、主に土壌溶液中の2価鉄イオンの酸化に関わることが示唆された。
湛水と落水が繰り返される水田では、土壌中の鉄の酸化還元状態が大きく変化する。鉄の酸化還元反応は土壌中の炭素や窒素、その他様々な無機元素の動態にも影響を及ぼす重要な反応である。近年、微好気性鉄酸化細菌として知られるGallionellaceae科鉄酸化菌が、水田土壌の鉄酸化反応に関わることが明らかになってきたが、そのポテンシャルは不明であった。本研究では、土壌中での微好気性鉄酸化菌の鉄酸化ポテンシャルをはじめて評価した研究であり、今後、水田土壌中での鉄酸化反応に伴う物質動態の詳細を理解する上で貴重な知見を得た。
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