研究課題/領域番号 |
21K05366
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022) 大阪府立大学 (2021) |
研究代表者 |
炭谷 順一 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 准教授 (10264813)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | マルトトリオース / 配糖体 / 糖転移反応 / アミラーゼ / α-アミラーゼ |
研究開始時の研究の概要 |
天然には有用な生理活性を有するものの,強いにおいや刺激を持っていたり,水溶性や安定性に乏しかったりすることで利用できない多くの化合物が存在する。配糖体化することで,化合物の溶解性,安定性,吸収性および味質などが改変されることが知られている。本研究ではデンプンをマルトトリオース単位に切断するとともに化合物に結合して配糖体を合成するアミラーゼについて,変異酵素を用いた生化学的解析とX線結晶構造解析を用いた構造生物学的アプローチによって基質認識や糖転移活性に関する分子基盤を明らかにするとともに,特定のα-グルカンオリゴ糖配糖体合成のためのプラットフォームの創製を目指す。
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研究実績の概要 |
天然には有用な生理活性を有するものの,強いにおいや刺激を持っていたり,水溶性や安定性に乏しかったりすることで利用できない多くの化合物が存在する。そのような化合物に糖を結合させて配糖体とすることで,化合物の溶解性,安定性,吸収性および味質などが改変されることが知られている。我々は土壌から分離した放線菌MK-1785株がデンプンを非還元末端側からマルトトリオース(G3) 単位で分解するとともに,生成するG3を水酸基含有化合物に転移し配糖体を合成することが可能なα-アミラーゼ(G3Amy)を生産することを見いだした。本研究では,X線結晶解析を用いた構造生物学的アプローチと変異酵素を用いた酵素化学的アプローチを組み合わせて,本酵素の基質認識や糖転移に関する分子基盤を解明することを目的としている。また,その成果を基に糖転移活性をさらに高めたり糖受容体特異性を改変したりすることで,特異な生理活性を有するG3配糖体の合成プラットフォームを創製することを目指している。 今年度はG3Amyと触媒ドメイン内で95%のアミノ酸が一致するオルソログ酵素においてG3特異性がなく,通常のα-アミラーゼと同様にランダムにデンプン鎖を分解することが判明した。そこで,同酵素に対してN192Q変異を導入したところ,変異酵素はG3特異性を獲得している可能性が強く示唆されたものの,minorな分解産物としてG1やG2が検出された。これは宿主酵素の影響によるものと考え,発現産物を精製する必要性が生じた。同酵素野生型およびN192Q変異酵素を各種クロマトグラフィーを用いて電気泳動的に均一に精製し,宿主酵素の影響を排除したサンプルを用いてG3特異性を確認したところ,N192Q変異酵素の反応産物としてG3のみ検出されたことから,Q192がG3特異性の発現に極めて大きく関与していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度もG3Amyオルソログ酵素群について遺伝子発現検討を行い,良好に変異酵素の解析が可能なオルソログ酵素を同定する予定であったが,結局大腸菌やBrevibacillus choshinensisを宿主とした場合,G3Amy以上に発現量が多いオルソログは存在しなかった。しかし,最もG3Amyとidentityが高いオルソログ酵素のひとつであるKitasatospora cineracea由来オルソログ酵素(KcAmy1)遺伝子を大腸菌にて発現させ,発現産物の精製標品を用いてデンプンに対する作用をTLCにて確認したところ,G3特異性は観察されず通常のα-アミラーゼと同様のデンプン鎖をランダムに加水分解する酵素であることが判明した。G3AmyとKcAmy1の触媒ドメイン内でアミノ酸残基が異なる23か所の中で,以前G3AmyでG3特異性に大きく関与している可能性が示されたN134とQ192のうち,N134はKcAmy1でも保存されているものの,Q192はN192となっており,このアミノ酸残基をQに置換することでG3特異性を獲得できる可能性が考えられ,KcAmy1に対してN192Q変異を導入した変異酵素遺伝子を大腸菌にて発現させ,発現産物の精製標品を用いてデンプンに対する作用をTLCにて確認した。その結果,KcAmy1-N192QはG3特異性を獲得していることが明らかになりQ192がG3特異性の発現に極めて重要な役割を果たしていることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度として,本研究の第一の目的である,加水分解反応と糖転移反応の分水嶺となるアミノ酸残基とその分子機構について明らかにするために,F258およびP259を含むループ構造を中心に,変異酵素を作製し,加水分解活性と糖転移活性を評価することで変異部位のアミノ酸の役割を明らかにする。G3AmyとBacillus sp. 1011由来CGTaseの立体構造を重ね合わせたところ,本ループ領域が内側にずれることで,acid/baseであるE256の位置がnucleophileであるD225から約5.0Åも離れる結果となっており,このことが加水分解を即座に進行させない原因になっているものと考えられた。糖受容体となる化合物がサブサイト+1部位に侵入することで,F258が動き,E256が適切ない位置取りを取ることが可能となり,糖転移反応が進行するものと考えられるため,E256の位置が変化するような変異酵素を設計し,それらの加水分解活性と糖転移活性について検討し,F258が位置するループの反応を進行させるためのスイッチとしての役割を明らかにしていく予定である。 また,L191R変異酵素の糖転移活性が上昇した結果が得られているが,この部位はCGTaseにおいて環化反応や糖転移反応に重要な役割を果たしている保存された4つの芳香族残基のうちのひとつが位置する場所となっている。そのため,芳香族アミノ酸に置換することで糖転移活性にどのような影響が生じるのかについても検討する。
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