研究課題/領域番号 |
21K05370
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
|
研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
下重 裕一 東洋大学, バイオ・ナノエレクトロニクス研究センター, 研究助手 (40622676)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | 磁性細菌 / ニトロスピラ門 / マグネトソーム / 磁性ナノ粒子 / マグネタイト |
研究開始時の研究の概要 |
磁性細菌は、酸化鉄または硫化鉄から成る磁性ナノ粒子を生合成する。磁性細菌由来の磁性ナノ粒子は、合成過程において有害な化学物質が不要で高い生体適合性を示すため、主に磁気温熱療法による癌治療等の医療分野で着目されている。しかしながら、既存の代表的な磁性細菌が生合成できる磁性ナノ粒子の収量は少なく、医療分野への実用化は困難である。本研究では、既存の磁性細菌よりも非常に多くの磁性ナノ粒子を生合成できる未培養ニトロスピラ門磁性細菌に着目し、様々な水域を探索した結果、本菌が山梨県河口湖に多数生息することを見出した。本菌の微生物学的分析とともに生息環境の詳細な分析も行うことで生育条件を検討し、培養を試みる。
|
研究実績の概要 |
令和5年度は、前年度に続き採取した湖底表層堆積物中における未培養ニトロスピラ門磁性細菌(以下、本菌と略す)の生育の有無を光学顕微鏡下で定期的に確認した。前年度と同様、本年度においても令和3年3月6日に2Lプラスチック容器6本に採取した湖水および湖底表層堆積物で本菌の生育または生存が確認できた。しかしながら、RNA-seq解析に必要な菌体収量が得られなかったため、本菌の生息環境の有機物および主要溶存無機成分濃度の測定を行い、培養に必要な培地組成の推定を行った。有機物(COD)および主要溶存無機成分(珪酸, 塩化物, リン酸, 硝酸, 亜硝酸, アンモニア, 硫酸, 硫化物, 鉄イオン)濃度は、本菌の生息環境の湖水を水質測定用試薬キット(共立理化学研究所)を使用して測定した。濃度測定に使用した湖水は、6本の堆積物試料を室温、暗所で静置培養し、本菌の生育が確認できた509日目以外にも、0日目、10日目および31日目の湖水も使用して比較検討を行った。各化学種の濃度測定結果から、特に硫黄化合物の濃度変化が顕著だった。硫化物イオン濃度の推移は、0日目は0.1 mg/L、10日目は0.08-0.2mg/L、31日目は0.06-0.1 mg/L、509日目は0.1-0.2 mg/Lで顕著な濃度変化は確認できなかった。しかしながら、硫酸イオン濃度の推移は、0日目、10日目および31日目は検出限界濃度(10 mg/L)以下だったが、509日目は63.3-84.5 mg/Lで濃度が顕著に増加した。本菌の生育が確認できた509日目に硫酸イオン濃度が極めて顕著に増加したことから、本菌が硫化物イオンを酸化して生育することが示唆された。本菌が菌体内に大量の単体硫黄顆粒を形成することも確認できていることから、硫黄酸化細菌と同様の生態的特徴を有する可能性が高い。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度は、前年度に続き採取した湖底表層堆積物中における未培養ニトロスピラ門磁性細菌(以下、本菌と略す)の生育の有無を確認し、令和3年3月6日に採取した湖底表層堆積物中において本菌の生育または生存を確認することができた。しかしながら、当該研究計画に基づいたRNA-seq解析を実施するために必要な本菌の菌体収量が得られなかった。一方、生息環境の有機物および主要溶存無機成分濃度を測定した結果、本菌を培養する上で極めて重要な知見を得ることができた。また、前年度に得られた堆積物中における深度別の本菌の生息分布および溶存酸素濃度プロファイルの結果も参照することで、本菌の培養条件が明確になりつつある。したがって、進捗状況に関してはやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、前年度に続き採取した湖底表層堆積物中における未培養ニトロスピラ門磁性細菌(以下、本菌と略す)の生育の有無を光学顕微鏡下で確認し、必要に応じて透過型電子顕微鏡観察および16S rDNA配列に基づくアンプリコンシーケンスによる菌叢解析から本菌の存在割合を確認する。RNA-seq解析等に必要な菌体収量が取得できた場合においては、当該解析等を実施して実際に環境中で発現している代謝関連遺伝子から培養に必要な栄養素の推定を行い、培養を試みる。またRNA-seq解析等が実施できない場合においても、前年度まで得られた知見を参照して本菌の培養を試みる。
|