研究課題/領域番号 |
21K05371
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
中西 昭仁 東京工科大学, 応用生物学部, 助教 (60640977)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 細胞プラスチックス / 光合成微生物 / 細胞内代謝量評価 / ゲノム編集 / 代謝改変 / 単細胞緑藻 / 細胞カプセル / ビタミンE / 緑藻のタンパク質細胞表層提示 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞プラスチックスとは単細胞緑藻を基盤とし細胞同士を連結して成形する新規素材である。基盤となる細胞に高付加価値の化合物を生産させ、制御されたタイミングで細胞内容物を漏出させられれば、湿布やフェイスパックなど今までにない生分解性プラスチックスとして利用できる可能性がある。そこで本研究では、細胞を適切に休止藻体化し内容物をタイミングよく漏出する「細胞カプセル技術」、ならびにゲノム編集技術を基盤としながら細胞表層提示技術と代謝フローの改変で実用株を創生して「細胞プラスチックス成型/利用技術」を確立し、有用物質を生産するプラスチックス原料の利用プラットフォームの構築を狙う。
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研究実績の概要 |
緑藻細胞を細胞プラスチックスの素材として利用する場合、細胞内の油脂は保湿成分としての価値がある。緑藻が生きていると細胞構造が壊れず細胞内に蓄積された油脂を維持しやすいが、同時に環境における微生物コンタミネーションを引き起こす。UV-C照射は細胞構造を維持させやすく殺処理法の有力な選択肢の一つであるが、細胞内代謝産物やその代謝フローへの影響は不明であった。そこで本研究は緑藻Chlamydomonas reinhardtiiに対するUV-C照射の影響を細胞生存率、油脂含有率とその組成、遺伝子転写量の推移で評価し、その応答を明らかにした。はじめに、UV-C照射強度 3.49 mW·cm-2, 細胞液深度5 mmであれば細胞密度1.6×107 cells·mL-1以下の場合10分間のUV-C照射で細胞が死滅することを示した。次に、UV-C照射前後で細胞内の油脂に有意な差が見られないことを明らかにした。さらに、トランスクリプトミクス解析において、ストレス応答で油脂合成に代謝を流そうとするのではなく、UV-Cの照射がcyclopropane fatty acid synthaseなどの油脂合成の主要な遺伝子転写量の低下によって油脂の合成が阻害され、enoyl-CoA hydratase/3-hydroxyacyl-CoA dehydrogenaseといった油脂の分解やIsocitrate dehydrogenase (NAD+)といったTCA回路のNADH2+やFADH2の生産を促す代謝関連遺伝子が活性化したことを明らかにした。UV-C照射時のC. reinhardtiiの細胞応答を遺伝子転写レベルで報告した初めての報告であった。また前年度エレクトロポレーションによる導入の最適化を進めた結果、ゲノム編集によりFKB12にビタミンE合成関連遺伝子の挿入に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、ビタミンEを高生産できる緑藻細胞カプセルを基盤とした細胞プラスチックスを作製し、直接的にフェイスパックや湿布などに応用可能な細胞プラスチックス素材の新規利用プラットフォームの構築を目指している。緑藻細胞を細胞プラスチックスの素材として用いるため、現在までにC. reinhardtiiのゲノム編集用の条件の最適化、C. reinhardtiiへのビタミンE生産関連遺伝子の導入、細胞内容物の油脂を維持した状態での緑藻細胞殺処理条件の最適化、UV-C処理時の細胞内の転写量応答の評価までを終えている。特に、今まで明らかになっていなかったUV-C照射時の緑藻細胞内の遺伝子転写量応答とエンドプロダクトとしての油脂含有率ならびに構成比の不変は、本研究ではじめて明らかになった点で学術的な意義があった。更には、本研究の進捗によって、細胞内容物の回収方法についても特定の条件で細胞の構造が弱くなる条件を見出している。上記のとおり、細胞を細胞プラスチックスの材料に用いた場合、細胞内の代謝物を直接的に使用可能にするための研究内容に大幅な進捗が見られたので、現在までの進捗状況は当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、ビタミンEを高生産できる緑藻細胞カプセルを基盤とした細胞プラスチックスを作製し、直接的にフェイスパックや湿布などに応用可能な細胞プラスチックス素材の新規利用プラットフォームの構築を目指している。今後はゲノム編集によって導入したビタミンE生産関連遺伝子の転写量を周辺遺伝子と共にトランスクリプトミクスによって実施するとともにそれら導入遺伝子の発現評価を実施する。すでに研究室によってHPLCを用いたビタミンEの定性定量系は構築されているので、ビタミンE生産性の評価を併せて進める。更には細胞プラスチックス化した時の細胞内容物の漏出条件の検討を進める。
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