研究課題/領域番号 |
21K05378
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38030:応用生物化学関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
鳥山 優 静岡大学, 農学部, 教授 (60202206)
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研究分担者 |
小池 亨 静岡大学, 理学部, 講師 (20377716)
道羅 英夫 静岡大学, 理学部, 教授 (10311705)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 器官再生 / 再生芽 / RNA-seq / 遺伝子発現解析 / 幹細胞 / マナマコ / 内臓放出 / 横切断 / 組織学 |
研究開始時の研究の概要 |
棘皮動物に属するマナマコは,刺激に応じて「内臓の自切・放出」を行う。我々は「その内臓放出個体を横切断すると,各切断体から個体が再生すること」を発見しており,そこには器官再生の根幹を成す分子機構が関わると考えられる。本研究は,この再生実験系における「器官再生の起点となる再生芽」に着目し,その構成細胞の起源と再生芽形成・器官形成に関わる分子機構を明らかにすることを目的とする。具体的内容として,①再生芽形成・器官形成過程の組織学的解析,②各種ステージの再生芽の網羅的遺伝子発現解析,③目的遺伝子発現細胞の同定と機能解析を行う。本研究により,再生医療の技術開発に繋がる基礎的な分子機構の発見が期待される。
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研究実績の概要 |
器官再生の能力は動物種や対象とする器官によって大きく異なる。ヒト再生医療を考えた際,器官レベルでの再生はまだ困難を極めており,こうした技術を今後確立していくためには,器官再生現象に関わるさらなる基礎的知識の積み上げが必要である。本研究は,再生能力の高いマナマコを研究材料とし,我々が確立した「内臓放出-横切断からの全身再生系」を用いて,内臓や失われたマナマコ前方の主要器官の再生機構を明らかにしようとするものである。その際,特に横切断面に形成される器官形成の起点となる「再生芽」に着目し,そこで発現変動する遺伝子や器官再生に関わる細胞の動態を明らかにすることを,本研究プロジェクトを通しての目的としている。 2022年度は,「実験項目2. 網羅的遺伝子発現解析」の一環として,再生過程で発現変動する遺伝子(DEG)のうち「発現上昇する遺伝子」のいくつかに着目し,それらの発現をin situハイブリダイゼーション法を用いて組織・細胞レベルにて詳細に解析を行なった。その際,前年度に同定した細胞分化マーカー・幹細胞マーカー遺伝子の発現と共に解析することで,「実験項目3. 候補遺伝子発現細胞の特定」を試みた。その結果,再生過程の一時期に,やや大型の細胞が神経組織等から出現し,再生芽へと遊走していると見られる組織像が得られ,それら細胞は未分化性の維持に関わる転写因子や,様々な成体幹細胞で発現する細胞膜タンパク質を発現していることが明らかになった。また,再生芽部ではこれら細胞集団から内胚葉マーカーを発現する細胞が出現すると見られる組織像も観察された。 以上,本研究期間には,マナマコの器官再生に関わる新規幹細胞様細胞を同定し,この器官再生系では細胞の脱分化・遊走・分化転換が広く関与する可能性を示すことができた。これは,器官再生機構を考える上での,基礎的・本質的な知見を広げる成果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は,「実験項目2. 網羅的遺伝子発現解析」,及び「実験項目3. 候補遺伝子発現細胞の特定」を行うことを計画し,それに従って研究を遂行して以下のとおり概ね順調に進展している。 前年度の段階で「実験項目2」のRNA-seq解析の一部を進めており,再生初期の後方切断体サンプルにて解析を行った結果,再生過程で発現変動する遺伝子群や個々の遺伝子を複数同定していた。本年度はサンプル数を増やしてさらに解析を進めると共に,それら一部の遺伝子の発現解析を組織・細胞レベルにて詳細に行った。それらの中で,哺乳類にて幹細胞マーカーとして多くの組織で知られている膜タンパク質をコードする遺伝子が,再生組織中の特有の細胞形態と分布を示す細胞において,特定のタイミングにて顕著に発現していることを発見した。その細胞の分布と形態からは遊走性の細胞であることが予想された。それに加えて,「実験項目3」の計画の一環として,その遺伝子を発現する細胞をキャラクタライズするために,前年度に同定した細胞分化マーカー・幹細胞マーカーと,新たなマーカーの発現をあわせて解析したところ,ES細胞でも発現することが知られている未分化性に関わる遺伝子が発現していることや,それら細胞集団の周辺に内胚葉マーカーを発現する細胞が出現する様子が観察された。これら実験結果は,マナマコ再生過程に出現する幹細胞様細胞の新規発見を意味し,また再生への幹細胞様細胞の関わりについての洞察を得るものである。 この成果は,本プロジェクトの最終年度の研究の発展に繋がるものと期待でき,研究の最終目的に向けて,概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在,主に解析を進めている遺伝子(DEG)については,抗体の作製や全長クローニング,培養細胞等を用いた遺伝子導入・ノックダウン実験等を行い,その機能解析を行う。また,これまでにその他にも多くのDEGを見出しているが,パブリックデータベース上の情報を用いた検索・解析では遺伝子を同定できないものも多いため,自身のRNA-seqデータを元にde novoアセンブリも行い,より多くの遺伝子の同定を進めると共に,全長クローニングを行う。またそれら遺伝子についても詳細な発現解析と,機能解析を目指す。
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