研究課題/領域番号 |
21K05393
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38030:応用生物化学関連
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
河野 強 鳥取大学, 農学部, 教授 (50270567)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 神経ペプチド / 生育・休眠制御 / ホルモン / 環境応答 / 線虫 / 受容体 / 休眠 / 情報伝達 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、モデル生物・線虫C. エレガンスを用い、環境に応答した線虫類の生育停止・再開の分子メカニズムの解明を行う。
具体的には、環境因子(エサ・生育密度・温度)に初期応答して下流の生育/休眠制御ホルモンシグナルを制御する分子を特定し、その分子機構を明らかにすることを通じて、C. エレガンスの休眠制御機構の未解明部分を明らかにする。制御分子として短鎖神経ペプチドFLPsに着目する。
研究項目としては、①休眠制御FLPの特定、②環境因子への応答性の検証、③下流のホルモンシグナル制御の検証、④休眠制御FLP受容体の同定を行う。
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研究実績の概要 |
本研究では、自活性土壌線虫Caenorhabditis elegansをモデル生物として用い、短鎖神経ペプチドFLP(FMRFamide-like peptide)とその受容体が線虫の幼虫生育/休眠を制御する分子機構を解明して植物寄生性線虫の防除法開発に資することを目的とする。 本年度は前年度に実施したflp遺伝子破壊線虫を用いたスクリーニングにより抽出した、生育/休眠制御遺伝子flp-1ならびにflp-2の分子機構を明らかにした。さらに、flp-1ならびにflp-2とは分子機構の異なるflp遺伝子を抽出し、分子機構の解析を進めた。また、FLP受容体と目されるNPR(neuropeptide receptor)ならびにFRPR(FMRF-related peptide receptor)を対象としたスクリーニングを実施し、生育/休眠制御に関わる受容体遺伝子npr-15, npr-22の解析を進めた。 ①FLP-1は環境因子である休眠誘導フェロモンに応答し、インスリン様分子DAF-28の産生・分泌制御を介して生育に関与することを明らかにした(学術論文発表)。②FLP-2は休眠誘導フェロモンならびに餌に応答し、インスリン様分子INS-35の産生・分泌を介して生育に関与するとを明らかにした(学術論文発表)。③TGF-beta様分子DAF-7を介して生育制御に関与するFLP-11などの解析を進めた。これらの研究成果を令和5年6月開催の国際C. elegans会議で発表する。④受容体NPR-15は休眠制御神経細胞ASIで発現・機能し、Galfa subunit GPA-4を介して生育因子DAF-7を制御することを明らかにした(学術論文受理済み)。⑤受容体NPR-22は生育因子であるインスリン様分子INS-35制御を介して休眠制御に関与するとを明らかにした(学会発表済み)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の令和4年度の計画では、スクリーニングにより抽出したFLP-1, FLP-2等についてエピスタシス解析等の分子遺伝学的解析を行い、その分子機構を明らかにすることを目的としていた。計画通りに研究を進め、2編の学術論文発表を達成することができた。 また、研究計画に沿ってFLP受容体と目されるNPR(neuropeptide receptor)ならびにFRPR(FMRF-related peptide receptor)を対象としたスクリーニングを実施した。さらに令和5年度の研究計画に踏み込むべく研究を進め、生育因子DAF-7を制御するNPR-15の分子機構を解明し、学術論文受理にまで至った。また、NPR-15とは異なる分子機構で生育/休眠を制御する受容体NPR-22は生育因子であるインスリン様分子INS-35制御を介して休眠制御に関与するとを明らかにした(学会発表済み)。 令和4年度までの研究により、個々のFLPが環境因子に応答してそれぞれの受容体を介し、異なる生育/休眠制御ホルモン(ペプチド/タンパク)の産生・分泌を調整して統合的に幼虫生育/休眠を制御することを強く示唆することができた。 当初計画を遂行し、さらに令和5年度の研究計画に踏み込んで学会発表・学術論文受理に至ったことに鑑み、「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を踏まえ、生育/休眠を制御するFLP/受容体GPCRの対応付けを行う。FLP過剰発現株と受容体破壊株を用いたエピスタシス解析等の分子遺伝学的解析に加え、機械学習によるペプチド/GPCR対合プログラム(サントリー生命財団の学術支援)情報を有効活用し、効率的な対応付けを行う。また、未だ同定に至っていないインスリン様分子DAF-28を制御する受容体を明らかにし、FLP/受容体GPCRと生育・休眠制御因子ADF-7/DAF-28/INS-35の対応付けを完成させる予定である。 以上の研究により、これまでブラックボックスであった「環境因子に応答した線虫の生育・休眠制御機構」の全容解明に迫る。FLPならびにその受容体は寄生性線虫にも共通して存在することから、本研究で得られる成果が新たな 寄生性線虫防除法(抗線虫剤)の開発(FLPアゴニスト/アンタゴニストならびに受容体阻害剤等)に繋がることを期待したい。
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