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生体認識配糖体生産のための特異的糖鎖遊離酵素の新規ドメイン解析とその機能開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K05396
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分38030:応用生物化学関連
研究機関大阪公立大学 (2022-2023)
大阪市立大学 (2021)

研究代表者

伊藤 和央  大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (20183171)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
キーワード生体認識配糖体 / エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ / 立体構造 / ドメイン / マルチドメイン構造 / エンド‐β‐N‐アセチルグルコサミニダーゼ / 糖鎖組換え / バイオ医薬品
研究開始時の研究の概要

エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼHS(エンドHS)は、糖タンパク質からコンプレックス型のアスパラギン結合型糖鎖を特異的に遊離し、これを様々な化合物に転移する唯一の酵素である。
エンドHSのX線結晶構造解析で明らかとなった新規ドメイン群の機能解析を通じて、本酵素の触媒部位と糖鎖認識部位を解明する。触媒部位の改変し、糖鎖加水分解型から糖鎖転移合成型酵素へと機能変換し、生体認識配糖体生産への実用化を目指す。
抗体医薬品などのバイオ医薬品の糖鎖構造均一・最適化への利用を目指す。
糖鎖認識部位を改変し、様々な構造のアスパラギン結合型糖鎖を付加した生体認識配糖体合成酵素を創生する。

研究実績の概要

2021~2022年度は、野生型エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(エンド)HS(Wild)とC末端側欠失型エンドHS(DM-1~DM-6)の発現系を構築し、ヒトトランスフェリン(HTF)からの二本鎖コンプレックス型糖鎖遊離活性を調べた。それぞれのアミノ酸領域は、Wild(30~1009)、DM-1(30~966)、DM-2(30~906)、DM-3(30~883)、DM-4(30~861)、DM-5(30~811)、DM-6(30~708)であった。本酵素のドメインI~VのうちドメインVを一部または全欠失したDM-1とDM-2は、野生型酵素と同程度の活性で、ドメインIVを部分欠失したDM-3とDM-4および全欠失したDM-6は活性を示さなかった。野生型と各欠失型酵素は、ウシRNase Bのハイマンノース型糖鎖を遊離しなかった。ドメインVは活性発現に不必要でドメインIVは必須であった。触媒部位はドメインIに存在するため、ドメインIVは糖鎖特異的認識・結合に関与すると考えられた。
本年度は、ドメインIV~VとドメインVおよび触媒能のない二重置換変異エンドHS(E218Q/Y252F)の発現系を構築し、各発現体とHTFとの結合能をゲルシフトアッセイ法で解析した。ドメインIV~VとドメインVはHTFとの結合性を示さなかった。エンドHS(E218Q/Y252F)はHTFと結合し脱糖鎖HTFとは結合せず、糖鎖を介して結合した。エンドHS(E218Q/Y252F)は各種構造のコンプレックス型糖鎖を有するヒトラクトフェリン、ウシフェツイン、ヒトα1-酸性糖タンパク質と結合したが、ハイマンースまたはハイブリッド型糖鎖を有すオボアルブミンとは結合しなかった。遊離のドメインIVは糖鎖結合性がないが、エンドHS構成ドメインとして存在すると糖鎖特異的認識・結合性を示すと考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、コロナ禍のため研究時間が制限され、予定していた研究をすべて行うことができなかった。しかし、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(エンド)HSのドメインIV~VとドメインVおよび触媒能を失った二重置換エンドHS(E218Q/Y252F)の発現系を構築し、発現体を得ることができた。そして、これらの発現体と二本鎖コンプレックス型糖鎖を有するヒトトランスフェリン(HTF)との結合性をゲルシフトアッセイ法で解析することができた。
その結果、ドメインIV~VとドメインVはHTFとの結合性を示さなかった。一方、触媒機能のないエンドHS(E218Q/Y252F)はHTFとの結合性を示し、糖鎖を除去したHTFとは結合せず、糖鎖を介して結合していることを明らかにできた。エンドHS(E218Q/Y252F)は各種構造のコンプレックス型糖鎖を有する他の糖タンパク質と結合し、ハイマンースあるいはハイブリッド型糖鎖を有すオボアルブミンとは結合しないことを明らかにした。そして、ドメインIVは、単独では糖鎖との結合性がないが、エンドHSを構成するドメインとして存在するとコンプレックス型糖鎖との特異的結合に関与することを明らかにできた。

今後の研究の推進方策

野生型エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(エンド)HS、欠失変異型エンドHS、二重置換変異エンドHS(E218Q/Y252F)発現条件をもとに、各変異酵素を大量発現しこれらを精製する。精製した各変異型エンドHSを用いて、変異酵素と糖鎖との分子間相互作用を解析する。さらに、ドメイン間のループ構造部分を特異的プロテアーゼで加水分解し、各ドメイン欠失エンドHSを調製し、同様の解析を行う。こうして各ドメインの機能を明らかにする。
また、得られ欠失変異型エンドHSの結晶を調製し、X線結晶構造解析を行い、欠失変異型エンドHSの立体構造とその糖鎖構造特異性との関係から、エンドHSのドメインの機能を明らかにする。あわせてクライオ電子顕微鏡によって立体構造を解析する。
さらに、基質糖タンパク質と二重置換変異エンドHS(E218Q/Y252F)と複合体を分離・精製し、X線結晶構造解析およびクライオ電子顕微鏡によって複合体の立体構造を明らかにする。また、糖ペプチドと欠失変異型エンドHSとの共結晶を調製し、X線結晶構造解析によってエンドHS・基質複合体の立体構造を明らかにする。そして、触媒および糖鎖認識関与するアミノ酸残基を特定し、各ドメインの機能を解明する。
エンドHSのドメイン解析から特定した加水分解・糖鎖転移に関わるアミノ酸残基を置換し糖鎖転移合成型エンドHSに改変し、ヘスペリジンおよびブレオマイシンに糖鎖を転移導入する。糖鎖結合ヘスペリジンおよびブレオマイシンのマウス肝臓への特異的移行を調べる。また、糖鎖転移合成エンドHSを用いて抗リウマチ抗体医薬品トシリズマブなどのバイオ医薬品の糖鎖を入替えと糖鎖構造最適化を検証する。
さらに、エンドHSの構成ドメインをハイマンノース型糖鎖特異的エンドFV遺伝子に挿入し、ハイブリッドエンドFVの糖鎖構造特異性を調べ、ドメインの機能を検証する。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (24件)

すべて 2024 2023 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] チュラロンコン大学理学部/ラムカンヘン大学理学部/カセサート大学教養学部(タイ)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [国際共同研究] チュラロンコン大学/理学部(タイ)

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [国際共同研究] ラムカンヘン大学/理学部(タイ)

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [国際共同研究] カセサート大学/教養学部(タイ)

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [国際共同研究] チュラロンコン大学理学部/ラムカンヘン大学理学部/カセサート大学教養学部(タイ)

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Structure and function of endo-β-N-acetylglucosaminidase PM responsible for deglycosylation of host glycoproteins in Prevotella melaninogenica2023

    • 著者名/発表者名
      Tomofumi Takeuchi, Shinji Mori, Kazuki Okura, Methus Kuraeokura, Santhana Nakapong, Nobuo Kamiya, Ikuko Miyahara and Kazuo Ito
    • 雑誌名

      Abstract and Proceeding Book of 30th FAOBMB & 8th BMB Conference (https://www.bmbconference.org/faobmb2023/wp-content/uploads/2023/12/FAOBMB_2023_Abstract-Book.pdf)

      巻: - ページ: 402-408

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼHSの立体構造と機能発現機構2024

    • 著者名/発表者名
      倉内郁也 、大倉和貴、森 真司 、米澤健人、清水伸隆、田中里佳、細川千絵、宮原郁子、伊藤和央
    • 学会等名
      2024年日本農芸化学会大会(於東京)(2024年3月25~27日)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼHSの構造と機能発現2023

    • 著者名/発表者名
      倉内郁哉、大倉和貴、森 真司、米澤健人、清水伸隆、田中里佳、細川千絵、宮原郁子、伊藤和央
    • 学会等名
      第23回関西グライコサイエンスフォーラム要旨P-6(於大阪)(2023年5月20日)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼHSの立体構造とその機能発現2023

    • 著者名/発表者名
      倉内郁也、大倉和貴、森 真司、米澤健人、清水伸隆、田中里佳、細川千絵 、宮原郁子 、伊藤和央
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会(於福岡)(2023年10月31日~11月2日)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Structure and function of endo-β-N-acetylglucosaminidase PM responsible for deglycosylation of host glycoproteins in Prevotella melaninogenica2023

    • 著者名/発表者名
      Tomofumi Takeuchi, Shinji Mori, Kazuki Okura, Methus Kuraeokura, Santhana Nakapong, Nobuo Kamiya, Ikuko Miyahara and Kazuo Ito
    • 学会等名
      30th FAOBMB&8thBMB Conference in Bangkok (22~25November, 2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼHSの立体構造と構成ドメイン2023

    • 著者名/発表者名
      倉内郁也 、大倉和貴、森 真司 、米澤健人、清水伸隆、田中里佳、細川千絵、宮原郁子、伊藤和央
    • 学会等名
      2023年日本農芸化学会大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼHSの機能とドメイン構造2022

    • 著者名/発表者名
      倉内郁哉、大倉和貴、森 真司、米澤健人、清水伸隆、田中里佳、細川千絵、宮原郁子、伊藤和央
    • 学会等名
      第22回関西グライコサイエンスフォーラム
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] Prevotella bivia(100)の産生するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ2022

    • 著者名/発表者名
      財津真生、西村優伸、伊藤和央
    • 学会等名
      第68回日本生化学会近畿支部例会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] Prevotella melaninogenica(99.0)の産生するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ2022

    • 著者名/発表者名
      西村優伸、財津真生、伊藤和央
    • 学会等名
      第68回日本生化学会近畿支部例会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] Prevotella bivia(100)の産生するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼの性質2022

    • 著者名/発表者名
      財津真生、西村優伸、伊藤和央
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] Prevotella melaninogenica(100)の産生するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼの性質2022

    • 著者名/発表者名
      西村優伸、財津真生、伊藤和央
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼHSの立体構造とそのドメイン2022

    • 著者名/発表者名
      倉内郁也、大倉和貴、森 真司、米澤健人、清水伸隆、田中里佳、細川千絵 、宮原郁子 、伊藤和央
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼHS におけるドメインIV の役割2022

    • 著者名/発表者名
      倉内郁哉、大倉和貴、田中里佳、米澤健人、清水伸隆、細川千絵、伊藤和央、宮原郁子
    • 学会等名
      2022年度日本結晶学会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ HSのX線結晶構造解析2022

    • 著者名/発表者名
      倉内郁哉、大倉和貴、田中里佳、細川千絵、伊藤和央、宮原郁子
    • 学会等名
      2021年度量子ビームサイエンスフェスタ
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 大倉和貴、森 真司、米澤健人、清水伸隆、神谷信夫、宮原郁子、伊藤和央2022

    • 著者名/発表者名
      Prevotella melaninogenicaの産生するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼPMの立体構造
    • 学会等名
      2022年日本農芸化学会大会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] Prevotella melaninogenicaの産生する宿主糖タンパク質糖鎖遊離酵素の立体構造2021

    • 著者名/発表者名
      大倉和貴、森 真司、米澤健人、清水伸隆、神谷信夫、宮原郁子、伊藤和央
    • 学会等名
      第21回関西グライコサイエンスフォーラム
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 担子菌の産生するアスパラギン結合型糖鎖遊離酵素のプロセシングプロテアーゼ2021

    • 著者名/発表者名
      高橋剛生、海住宜広、伊藤和央
    • 学会等名
      第67回日本生化学会近畿支部例会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] Prevotella melaninogenicaの産生する宿主糖タンパク質糖鎖遊離酵素の立体構造2021

    • 著者名/発表者名
      大倉和貴、森 真司、米澤健人、清水伸隆、神谷信夫、宮原郁子、伊藤和央
    • 学会等名
      第94回日本生化学会大会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ HSのX線結晶構造解析2021

    • 著者名/発表者名
      倉内郁哉、大倉和貴、田中里佳、細川千絵、伊藤和央、宮原郁子
    • 学会等名
      日本結晶学会令和3年度年会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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