研究課題/領域番号 |
21K05397
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38030:応用生物化学関連
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
武藤 裕 武蔵野大学, 薬学部, 教授 (30192769)
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研究分担者 |
桑迫 香奈子 武蔵野大学, 薬学部, 講師 (10568736)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | スプライシング制御因子 / スプライシング病 / 協働性 / 構造生物学 |
研究開始時の研究の概要 |
近年,mRNA前駆体のスプライシング反応の不全で発症する“スプライシング病”の存在が明らかになってきた。これらの多くは,スプライシング反応初期におけるイントロン部位確定の不具合が原因であり,主にスプライシング制御因子が正しく働かないために発症する。脊髄性筋萎縮症についても,SRSF1,Tra2bなどの制御因子の選択的スプライシングの制御不全が原因である。本研究では,これらの制御因子に注目し,NMR法やX線結晶解析を主に用いてその動的な高次構造情報から制御メカニズムを明らかにし,隠されたスプライシングコードの解明を目的とする。
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研究実績の概要 |
申請者は、スプライシング反応の破綻から生じるスプライシング病について構造生物学的な理解を目的としている。本研究では、おもに脊髄性筋萎縮症の発症に関わるSF2などのスプライシング制御因子による選択的スプライシングの制御不全などを取り上げ研究を進めている。SF2蛋白質は一般にRNA結合ドメインとして知られるRRMをタンデムに2つもつ(RRM1およびRRM2)が、RRM1も選択的スプライシングで重要な機能をもつ。そこでSF2 RRM1と標的配列を含むRNA断片の複合体の結晶化を試み、SF2蛋白質の標的配列認識機構を明らかにすることを目標とした。今までSF2 RRM1といくつかのRNA断片との結晶化を行い微結晶が得られたが、再現性がなかった。SF2 RRM1の溶解度や安定性に大きな問題があることから、SF2と相互作用するスプライシング因子による安定化を探るため、無細胞蛋白質合成系を用いた方法、ぁるいは大腸菌による発現系を用いる方法で、この因子の調製を試みた。まず、プロテアーゼ等タンパク質分解酵素を含まない大腸菌抽出液を用いた無細胞合成系でのタンパク質の合成を試みた。この場合、蛋白質の合成を確認はできたが、ほとんどが不溶性であり、CHAPSなど界面活性剤を添加した条件下でも可溶性の向上までにはいたらなかった。そこで、この因子にMBPタグを付加したコンストラクトを作成し大腸菌を用いた発現系を検討したところ、可溶性画分への発現を確認した。この蛋白質の精製は、分解しやすい点、ゲルろ過ではタグとの分離ができない点が問題となったが、プロテアーゼインヒビターの添加量の検討などの結果、タグを切断した試料をイオン交換カラムにより調製することができるようになった。精製度は約6割で、2Lの培養から1.5mgのこの蛋白質を得ており、今後は、培養量を増やし、立体構造解析に十分な量と質の試料調製を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は、2022年度のCOVID19の急拡大の影響から、実験進行にかなりの遅延が生じていた。このため消耗品の消費が遅れ、消耗品については、酵素や培養実験材料など、利用状況によって購入するために、実験の遅延とともに消耗の遅れが生じた。また、試料の不安定性にため、SF2単独での構造解析が難航しており、他因子との複合体生成の可能性も含めて、実験計画を進めるようにしている。このことが予算消化の遅れに繋がっている(とくに無細胞合成系に関する支出について)。そのため、実験計画自身も、当初計画よりも延長の申請を行った。
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今後の研究の推進方策 |
SF2単独での構造解析では試料の安定性や溶解度に大きな問題があった。そのため、本年度はSF2と相互作用する可能性のあるスプライシング因子について、無細胞蛋白質合成系によるタンパク試料また、MBPとの融合蛋白質の形での試料調製を試みた。今年度は、これらの方法により、さらに構造解析に最適な蛋白質試料の調製について検討をすすめ、NMR法などの測定を試みる。また、スプライシング因子は,RRMドメインというRNA結合ドメインを共通にもつが、スプライシング反応が進行する上で、SF2以外のスプライシング因子とのクロストークについて理解することは、SF2によるスプライシング制御を理解する上で重要と考えられる。そこで、われわれが現在まで蓄積してきたRRMドメインの構造情報をもとに、これらの因子の協働性について考察していく。
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