研究課題/領域番号 |
21K05406
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38040:生物有機化学関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
久城 哲夫 明治大学, 農学部, 専任教授 (80373299)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ステロールアミノ酸誘導体 / エルゴステロール / アミノアシルtRNA合成酵素 / 麹菌 / 菌核形成 / 分生子形成 / アミノアシル化ステロール / コムギ赤カビ病菌 |
研究開始時の研究の概要 |
真核生物の細胞膜にはステロールが存在し、生体内で様々な機能を担っている。近年、麹菌を含むいわゆるカビにおいて、ステロールにアミノ酸が結合した新規なアミノアシル化ステロールが発見された。本化合物を合成する遺伝子はカビにおいて広く保存されているため、この新規ステロール誘導体は何らかの重要な生理作用を担っていると考えられる。本研究では、新規アミノアシル化ステロールの生理機能を探るべく、結合タンパク質の探索や、細胞内局在、内生量の変化、合成酵素と分解酵素の発現解析などを調べることにより検証する。本研究により、新規ステロール誘導体を標的とした新規抗真菌剤の開発が期待される。
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研究実績の概要 |
糸状菌由来アミノアシルtRNA合成酵素に付随したドメインとして発見されたAspRS-DUF2156(ErdS)は、新規のステロールアミノ酸誘導体であるエルゴステリルアスパラギン酸(Erg-Asp)をtRNA依存的に生合成することが発見された。麹菌Aspergillus oryzaeにおいて、erdS欠損株では分生子量の減少と菌核形成の促進が観察され、Erg-Aspは糸状菌の生殖に関与することが強く示唆された。菌核形成には、velvet complexと呼ばれるタンパク質複合体が制御に関わっていることが知られているため、erdS欠損株においてvelvet complexに含まれるタンパク質の発現解析を行った。その結果、暗所で5日間培養した菌体においてvelvet complex の遺伝子の発現に野生株との差はなかったものの、分生子形成に関わるbrlA、abaA、wetAの3遺伝子が優位に発現低下していることが観測された。一方、ErdSとは別にDUF2156単独のタンパク質をコードする遺伝子ergSが見出され、ErgSはグリシンが結合したErg-Glyを生成することが発見された。そこで、Erg-Glyの生理作用に関しても調べていくため、ergS欠損株の作製を行ったところ、erdS欠損株と同様に分生子量の減少と菌核形成の促進が観察された。また、ergS欠損株においても分生子形成に関わる上記3遺伝子の発現低下が観察された。以上の結果より、これらステロールアミノ酸誘導体は分生子形成や菌核形成など糸状菌の生殖に関与することが強く示唆された。また、Erg-Asp結合タンパク質の探索に用いるアフィニティーカラムの合成も引き続き進めている。次年度は、生殖過程を調べるのにより適したA. nidulans株を用いて解析を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
麹菌A. oryzaeを用いたerdS破壊株に加え、ergS破壊株の作製にも成功し、両者が同じ表現系を示したことからアミノ酸の種類に関係なくこれらステロールアミノ酸誘導体が分生子形成や菌核形成に深く関わることが示せた。また、分生子形成の抑制は遺伝子の発現低下によるものであることが判明し、ステロールアミノ酸誘導体が何らかの機構で分生子形成関連遺伝子の発現低下を引き起こしていることが示唆された。Erg-AspやErg-Glyの作用機序の解明において大きな成果を得ることができた。また、細胞内のErg-Aspの局在を観察する目的で、蛍光標識されたErg-Aspの合成にも着手した。
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今後の研究の推進方策 |
生殖過程におけるErg-AspやErg-Glyの作用を調べていくため、より適したA. nidulans株を用いてerdSとergS破壊株の作製を行う。これら破壊株を用いて菌核形成に関与する遺伝子の発現解析、光応答性、二次代謝産物の生合成などへの影響を調べていく。さらに、これまでに観察された表現系を確立するため、各々の遺伝子の相補株の作製を行う。また、ケミカルバイオロジー的な手法により、アフィニティーカラムを用いたErg-Asp結合タンパク質の探索や、Erg-Asp蛍光標識体を用いた細胞内の局在を調べていく。
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