研究課題/領域番号 |
21K05411
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38040:生物有機化学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
岡 夏央 岐阜大学, 工学部, 准教授 (50401229)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ドミノ反応 / Julia-Kocienskiスルホン / シクロペンテン / シクロヘキセン / 炭素環ヌクレオシド / ヌクレオシド / 核酸 / 糖 / 立体選択的 / 不飽和環状炭化水素 / Julia-Kocienski反応 |
研究開始時の研究の概要 |
我々は、ヌクレオシドから短工程で合成したヘテロアリールスルホンと塩基を反応させると、ヌクレオシドのテトラヒドロフラン骨格が不斉点を3つもつシクロペンテン骨格に一挙に組み替わることを見出した。加えて、硫黄求核剤を共存させることで、核酸塩基が求核剤で置換されたシクロペンテンが得られることも見出している。本研究は、この新規ドミノ反応を発展させるべく、5員環糖、6員環糖由来のヘテロアリールスルホンを用い、様々な求核剤の導入を実現する。これによって、より多彩で安価な原料である糖から幅広い光学活性シクロペンテン、シクロヘキセンが得られる有用な合成法を確立する。
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研究実績の概要 |
我々は、ヌクレオシドの5′位水酸基をヘテロアリールスルホニル基で置換したJulia-KocienskiスルホンをDBUなどの塩基で処理すると、ドミノ反応が起こり、核酸塩基が結合した光学活性シクロペンテンが生成することを見出している。加えて、チオールやチオカルボン酸の存在下本反応を行うと、核酸塩基がチオ基で置換されたシクロペンテンが生成することも見出した。本研究は、1)この新規ドミノ反応が5員環糖や6員環糖由来のJulia-Kocienskiスルホンに適用可能か、2) どの様な求核剤が導入可能か、の2点について検証し、幅広い光学活性不飽和環状炭化水素の立体選択的合成法へと発展させることを目的としている。 まず、D-リボースから誘導したJulia-Kocienskiスルホンと核酸塩基との反応の基質適用範囲の拡大を試み、2-チオウラシルなどのピリミジン塩基を用いると良好な収率で目的とするシクロペンテン誘導体が得られることを見出した。また、得られたシクロペンテン誘導体の絶対立体配置を単結晶X線構造解析で決定した。次に、ケトースを出発物質とするJulia-Kocienskiスルホンの合成を達成すると共に、DBUによるドミノ反応が同様に進行し、チオ酢酸などの求核剤が導入されたシクロペンテンが生成することを初めて見出した。加えて、課題の一つであった6員環糖由来のJulia-Kocienskiスルホン合成の短工程化に取り組み、p-ニトロフェニルグリコシドを出発原料とする簡便な合成ルートを確立した。これによって、グルコース、マンノース、ガラクトース由来の光学活性シクロヘキセンの簡便な合成を達成した。最後に、得られたシクロヘキセンの誘導化に取り組み、立体化学的な純度を損なわずにアミノ基が導入されたシクロヘキセンへと誘導できることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り、計画していたケトースへの応用では、Julia-Kocienskiスルホンの合成、及びそのドミノ反応によるチオ酢酸等が導入された光学活性シクロペンテン誘導体の合成に成功した。また、求核剤の基質適用範囲の調査を行い、ピリミジン塩基が効率良くシクロペンテン骨格に導入されることを見出している。加えて、得られたシクロペンテン誘導体の立体構造を単結晶X線構造解析によって決定した。更に、6員環糖を用いるシクロヘキセン合成では、p-ニトロフェニルグリコシドを出発原料とすることで6員環糖由来のJulia-Kocienskiスルホンがより簡便に合成できることを見出し、生成物を光学的に純粋なアミノシクロヘキセンへと誘導するルートも見出した。現在、共同研究者と共に生成物の生物活性評価を進めている。以上より、今年度の研究は、ほぼ当初の計画通り進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、シクロペンテン、シクロヘキセン骨格に導入可能な求核剤の更なる拡張を試みる。特に、炭素-炭素結合の形成を伴う炭素求核剤を用いたドミノ反応の開発を行う。加えて、Julia-Kocienskiスルホンの分子構造がドミノ反応に与える影響の調査や反応中間体の検出などによるドミノ反応の反応機構の解明を試みる。これによって、より効率的にドミノ反応が進行する反応条件や分子構造を見出す。また、核酸塩基が導入されたシクロペンテン誘導体を炭素環ヌクレオシドへと誘導し、抗ウイルス活性などの生物活性を評価する。一方、シクロヘキセン誘導体については、シクロヘキサン誘導体やカルバ糖類縁体への誘導化を試み、得られた化合物の糖転移酵素などに対する阻害活性を評価する。これによって、糖鎖関連酵素を特異的に阻害する化合物の探索を行う。
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