研究課題/領域番号 |
21K05436
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
吉場 一真 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (40375564)
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研究分担者 |
田中 進 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 教授 (70348142)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 多糖 / 秩序ー無秩序転移 / 選択吸着 / 細胞培養 / 転写活性 / β-1,3-グルカン / 秩序-無秩序転移 / 溶媒効果 / リポ多糖 / 免疫細胞 / 統計力学理論 / 機能性食品 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、成人病などの疾患の増加を背景として免疫機能改善の健康食品への関心が高まっており、利用される食品材料が多様化している。β-1,3-グルカンは三重らせん構造を有する天然多糖であり、免疫細胞は三重らせん構造を認識して免疫賦活作用を引き起こす。しかし、β-1,3-グルカンを機能性食品に利用するためには、消化器官内で起こる化学構造変化の影響について知見を得る必要がある。本研究では、β-1,3-グルカンの化学構造を変化させ、水溶液中のβ-1,3-グルカンの構造とアミノ酸残基間の相互作用、免疫細胞のサイトカイン分必量の対応関係を調査し、免疫賦活効果の定量解析方法の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
シゾフィランの自然免疫発現では、免疫細胞の細胞膜表面に存在するレクチンなどの膜たんぱく質との認識が重要であると考えられる。2022年度では、シゾフィランに対して選択的な相互作用をする化合物、特にカルボン酸化合物について秩序―無秩序転移に対する安定化効果について検討を行った。数多くの物質が生体内組織に共存しており、三重らせんに対する相互作用に選択性を持つ物質が存在する。カルボン酸は、グルタミン酸などのアミノ酸のペンダント基であり、レクチンなどの膜たんぱく質のβ-1,3-グルカン認識ドメインの構成アミノ酸である。これらカルボン酸化合物のpH変化による転移に対する安定化効果を詳細に検討した。2021度にイミダゾールを添加することにより秩序‐無秩序転移の安定化効果が観測されることを報告したが、イミダゾールは弱塩基性の添加物であり、pHの増加とともにより顕著に観測される。pHの増加によりイミダゾリウムイオンの溶液中の濃度が減少し、イミダゾリウムイオンよりも相互作用の強い(会合エンタルピーの大きい)イミダゾール濃度の増加により三重らせんへの会合度が増加し、転移の安定化効果はpHの増加ととも強くなる。一方で、酢酸では中性以上のpHで酢酸は完全解離するので、三重らせんへの相互作用はためカルボン酸化合物とは反対の効果を持つと考えられる。上記の物質は特にpH変化に伴いシゾフィランへの相互作用が変化する物質であると位置づけられる。また、多糖の選択吸着性に関連して、エレクトロスピニングを用いた多糖不織布の作製、及び多糖への選択的相互作用を持つフラボノイドの吸着ダイナミクス理論を発表した。加えて、マウスマクロファージ由来RAW264.7細胞において、転写調節因子nuclear factor-kappa B(NF-κB)の転写活性に対する影響を二つの分子量の異なるSPGを使用して検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シゾフィラン水溶液に酢酸、マレイン酸などのカルボン酸化合物を添加すると中性以下の酸性条件下で秩序―無秩序転移の転移温度と転移エンタルピーが増加した。一方で、中性、及び塩基性条件下では安定化効果が観測されなかった。このことは、酢酸イオンなどの電離した化学種は三重らせんに選択的相互作用をしないことを意味する。2022年度では、添加物として化学構造の単純な酢酸を用いて、二つの酸性条件下(pH = 2, 4.7)にて秩序―無秩序転移の安定化効果を検討した。溶液中の酢酸のモル分率を増加させると転移温度と転移エンタルピーが増加した。これは溶液中の酢酸がシゾフィランと選択的相互作用をすることを示しているが、以前に我々が報告した水―DMSO混合溶液の溶媒効果と比べると小さかった。現在はシゾフィランの分子量を変化させた転移の安定化効果についてDSCを用いて検討している。これらの実験により、シゾフィランと酢酸の平衡定数を理論解析により決定し、イミダゾールと比較する。生体内のpHはほぼ中性~弱酸性であるため、現在の所シゾフィランとレクチンの糖鎖認識ドメインへの最も有力な選択的相互作用はイミダゾールをペンダント基に持つヒスチジンを介して起こると考えられる。次にRAW264.7細胞を用いて、分子量の異なるSPG(SB-3-2とB-3)とLPS添加時の転写調節因子NF-κBの転写活性に与える影響についてそれぞれ検討を行った。LPS単体では転写活性が顕著に上昇するが、SPG単体では転写活性の増加は観測されなかった。またLPSとSPGを添加した実験では、LPS単体での転写活性とは有意な差は観測されなかった。
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今後の研究の推進方策 |
シゾフィラン(SPG)の三重らせんに対するカルボン酸化合物との相互作用を秩序―無秩序転移の溶媒効果から決定し、熱力学的な安定化効果を理論解析により行う。今年度は、超音波分解によりシゾフィラン試料の分子量を変化させ、転移の分子量依存性からシゾフィラン三重らせんと酢酸との間の会合平衡定数を決定する。また、Smith分解を用いたシゾフィランの分岐度依存性について検討し、シゾフィラン三重らせんと生体関連物質との相互作用を考察する。免疫細胞に対するSPGの効果については、マウスの細胞を用いて、M0からM1マクロファージへの分化に対する影響を検討する。またヒトM1マクロファージ活性化に対するSPGの影響を検討していく。SPG等の多糖の試料調製、及び多糖の選択吸着性の実験については吉場が担当し、細胞培養実験、及びその活性効果については田中が担当する。全体の計画方針については研究代表者の吉場が調整を行う。
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