研究課題/領域番号 |
21K05439
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山内 聡 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (00243808)
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研究分担者 |
菅原 卓也 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (00263963)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | リグナン / 代謝化合物 / 脱顆粒抑制活性 / 立体異性体 / 立体特異性 / lignan / conidendrin / lariciresinol / secoisolariciresinol / 抗アレルギー作用 / 有機合成化学 / 代謝 / 抗炎症作用 / 抗アレルギー活性 |
研究開始時の研究の概要 |
食品性植物に含まれ、食事により体内に取り込まれるリグナン類の一つであるlariciresinolの生体内での代謝物であるconidendrinの、人の健康に対する影響を、培養細胞、実験動物を用いて明らかにする。lariciresinolは、やはり食品性植物に含まれるsecoisolariciresinolが不飽和脂肪酸の酸化防止のために反応した結果生じる代謝物でもあり、食事の結果、体内で生じる化合物が人の健康に与える影響を調べる研究である。
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研究実績の概要 |
植物性食品中に含まれるリグナンのうち、3置換テトラヒドロフラン型リグナンであるラリシレジノールの体内代謝産物であるコニデンドリンの8個の全ての立体異性体の細胞レベルでの試験を行なった。その結果、(-)-β体が最も高い脱顆粒抑制活性(抗アレルギー活性)を示した。次に、作用メカニズムを調べたところ、細胞内シグナルのSyk及びPI3Kのリン酸化を下方制御することにより細胞内へのCa+の流入を阻害し、脱顆粒が抑制されることが分かった。 次に、動物実験を行うため、(-)-β-コニデンドリンの大量合成を行なった。既に開発した合成ルートのうち、2つの1級水酸基の位置選択的保護について、温度条件、反応時間、塩基の種類、試薬の量について、最適条件の検討を行なった結果、室温、16時間、ジクロロメタン中で4倍量のピリジンと2倍量の塩化ピバロイルを用いると、位置選択制が最も高く、原料であるジオールが回収されることが分かった。また、低収率であったα位の異性化については、エタノール中で炭酸カリウムを用いることにより収率が向上した。これらの改善を適用することによって、(-)-β-コニデンドリンを0.5 g得ることができマウスによる動物実験が可能になった。現在、動物実験を行っている。 立体構造と活性との関係は明らかになったので、ベンゼン環上の構造と活性との関係を調べるため、ベンゼン環上の置換基の異なる誘導体の合成を試みた。さまざまな置換基を持つべンズアルデヒド類、ベンジルハライド類を用いて反応を行い、SN1環化反応を行うための中間体を得て、反応条件を検討した。その結果、この反応の進行のためには、o-及びp-位に酸素が存在している必要があり、この活性化のための酸素を反応後にパラジウム触媒反応によって除去可能であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
食品性植物中のラリシレジノールの摂取後の体内代謝化合物であるコニデンドリンの8つ全ての立体異性体を有機合成的手法により得ることができ、細胞レベルでの試験に供することによって、立体特異的に(-)-β体が脱顆粒抑制活性(抗アレルギー活性)を有することを見出した。さらに、その作用機構がCa+の流入阻害であることも示した。さらに、(-)-β-コニデンドリンの大量合成にも成功し、動物実験を可能にした。ベンゼン環上の置換基が異なる誘導体の合成を目指したが、o,p-位に反応を活性化させるための酸素原子の存在が必要なことがわかり、SN1環化反応後にこの酸素の除去が可能なことは明らかになったが、合成工程数が多くなり現在誘導体は得られていない。しかし、誘導体合成は可能である。
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今後の研究の推進方策 |
立体特異的に(-)-β-コニデンドリンがが脱顆粒抑制活性(抗アレルギー活性)を有することを見出し、その作用機構がCa+の流入を阻害によることが示した。そこで、細胞内シグナル分子にどのように作用するのかについて検討する。また現在、マウスを用いた動物実験を行なっている。動物実験後尿を回収して、ESI-Q-TOFMSと光学活性カラムを用いて、体内に存在する(-)-β-コニデンドリン及びその代謝化合物についての分析を行う。もし、硫酸縫合体が確認された場合は、(-)-β-コニデンドリンの硫酸化を行い、細胞レベルでその活性を確認する。ベンゼン環上の置換基が異なる誘導体の合成については、合成過程の鍵反応であるSN1環化反応が進みやすいと考えらえる誘導体についての合成を検討する。
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