研究課題/領域番号 |
21K05455
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大島 健司 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (90391888)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 乳タンパク質 / 乳児栄養 / 腸内細菌 / 食物アレルギー / 離乳 / 分子栄養学 / 小児代謝・栄養 |
研究開始時の研究の概要 |
胎児期から離乳期にかけての栄養状態は、成人後の免疫系や代謝系にまで影響を与える。 その原因として、極端な栄養による初期発生時のストレス応答に加え、乳幼児期で確立する 栄養環境への長期的な適応が影響すると考えられている。乳幼児期で低栄養を経験した後に 高カロリー食を続けるなど栄養環境の適応がミスマッチすると、代謝疾患などの非感染性疾患のリスクとなることが明らかとされているため、この調節が正しく行われることで生涯の疾患リスクを減らすことが期待出来る。本研究では、腸内環境に応じた乳児期から離乳期にかけての生理機能調節に関連した、乳成分や腸内細菌に対する腸管組織の応答を解析する。
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研究実績の概要 |
乳児期から離乳期にかけての腸内細菌叢バランスや栄養状態は、免疫系や代謝系の制御機構に影響し、共生微生物に対する過剰な免疫応答の抑制や、飢餓的な栄養環境への適応といった長期的な個体の免疫・代謝制御に関与することが知られている。乳幼児期の栄養不足または過剰摂取は、代謝疾患などの非感染性疾患のリスクとなることが明らかとされており、乳幼児栄養による適応調節が正しく行われることで生涯の疾患リスクを減らすことが期待出来る。乳児栄養による栄養補給に加え、母乳に含まれる乳タンパク質は様々な生理機能を持ち、腸管組織や免疫系の発達・成熟に重要であることが多くの研究により報告されている。そのため世界保健機関などにより、ヒトでは離乳を開始する生後6ヶ月までは、母乳による乳児哺育が推奨されている。しかしながら、未だ母乳成分が生体に及ぼす作用は完全には明らかとなっていないため、母乳栄養の代わりとなる人工乳の利用について、将来的な非感染性疾患のリスク評価と対策を完全に行うことができていない。また栄養源が母乳から通常食に切り替わる離乳期では、腸内細菌が消化管内で急激に増殖・定着し、菌体成分や代謝産物が宿主の免疫系や代謝系へと影響する。本研究では、腸内環境に応じた乳児期から離乳期にかけての生理機能調節について、母乳成分が乳児腸上皮細胞に作用する機構と、離乳期の食物で形成される腸内細菌叢による長期的な代謝制御や免疫制御について焦点を当てて解析を行う。 2022年度は、母乳成分として機能性乳タンパク質であるラクトフェリン(LF)の乳児期消化管における作用機序の解析を行なった。また離乳期の腸内細菌叢形成が撹乱されると、長期的な腸内細菌叢形成に影響をおよぼす可能性とその機序について解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、母乳成分として機能性乳タンパク質であるラクトフェリン(LF)の消化管における作用機序の解析を行なった。LFは食餌性脂肪の吸収と代謝に影響することが報告されているが、経口摂取したLFが消化管での脂肪吸収にどのような作用を持つか明らかとなっていない。そこでマウスに3日間LFを摂取させたところ、食事性脂肪の血中への吸収量が抑制されていた。腸上皮細胞による脂肪酸の経細胞輸送量を解析するため、培養小腸上皮様細胞株Caco-2を用いた解析系について検討を行った。細胞内への脂肪酸蓄積量と基底側へ放出された脂肪酸量を測定する解析系を用い、LFで処理した腸上皮細胞における脂肪酸の経細胞輸送への影響を解析したところ、LFは脂肪酸輸送速度を抑制的に制御する可能性を見出した。 離乳期は、細菌の栄養源となる難消化性成分が限定的な母乳から難消化性成分に富む通常食へと切り替わる時期であり、これにより乳幼児が初めて出会う腸内細菌が消化管内で急激に増殖・定着し、免疫系の活性化が誘導される。近年、腸内細菌により誘導される離乳期に限定的な長期免疫調節機構が存在することが明らかになりつつある。これまでに離乳期の腸内細菌叢形成を撹乱するため、離乳前後の2週間抗生物質を投与したところ、離乳期での免疫活性化が抑制されていた。これが長期間の腸内細菌叢形成に影響を与えるか解析するため、離乳期に抗生物質処理を行ったマウスが8週齢となった時点で菌叢解析を行ったところ、数種類の腸内細菌の定着量に影響が見られた。以上から、研究課題は計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、標的細胞である腸上皮細胞でのLFの機能解析を行い、脂肪酸の経細胞輸送を抑制する可能性が見出された。2023年度は再現性の確認とより簡便な解析系の検討、分子メカニズムについて解析を行う予定である。またこれまではマウスにウシのLFを投与して解析を行っていたが、マウスLFについても特異抗体を用いて解析する系を立ち上げる予定である。 腸内細菌により誘導される離乳期に限定的な長期免疫調節機構の解析のため、抗生物質を使用して離乳期の腸内細菌定着を撹乱させたところ、長期間腸内細菌叢が変化する可能性が明らかとなった。今後は、長期間腸内細菌叢に影響する宿主側因子について探索を行う予定である。
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